精神科Q&A

【0318】同じことを繰り返す60歳の父


Q:  60歳の父は、1年ほど前から奇行が目立つようになってきました。色々ありますがまとめると次のようなものです。
1、ティッシュペーパーに意味の通じない文字を書いている。メモをとったというものではなく私から見ると全く意味をなさない言葉を書いています。一日に何枚も書かないと落ち着かないようで入浴中でも出てきて書いています。
2、一つの行動を繰り返す。
 たとえばパソコンのふたの開閉を何度も繰り返したり、階段の登り降りを何度も繰り返すなどです。
 また少し違うのですが以前一度行った行為は次回からは必ずしなくてはならないと思っているようで、例えばマットにあやまって水をかけてしまったら次の日も同じように水をかけるなどです。
実は30年ほど前に母が病院に連れていったことがあり、その時は本能でやっていることなので直らないと言われたようです。ただ私としてはほんのここ1年くらいから急になので本当に病気なのか信じられません。ボケているということはないです。受け答えはしっかりしています。これは病気なのでしょうか? 

: お父様の症状は、強迫行為と呼ばれるものだと思います。ただし重要な点は、お父様ご本人がこの行為についてどう思っておられるかということです。強迫行為とは、「自分では不合理だとわかっているのにどうしてもやってしまう、繰り返してしまう」ことをいいます。まずこのことを確認してください。
 それから、30年前に病院を受診した時はどのような症状だったのでしょうか。今と同じような症状でしょうか。それとも何か他の症状もありましたか。それから、「直らない」と言われたけれど実際には直ったわけですね? どのくらいの期間続いて直ったのでしょうか。何か治療をしたのでしょうか。自然に治ったのでしょうか。
 というように色々確かめたい点がありますが、「30年前と同じ症状がまた出てきた」と仮定し、ご本人も不合理だと感じていらっしゃると仮定すると、お父様は強迫性障害(強迫神経症という場合もあります)の可能性が高いと思います。強迫性障害は、かつては心理的な原因によるもので、薬はほとんど効かないと考えられていましたが、最近では症状の背景にはセロトニンの問題があるという理論が認められつつあり、事実、クロミプラミンやフルボキサミンといった、セロトニンに作用する薬が有効なことが多いことがわかっています。病院を受診するべきだと思います。
 また、強迫行為は、脳の基底核と呼ばれる部位の障害(小さな脳血管障害など)でも起こり得ます。お父様の場合は30年前にもあったとのことですので、脳血管障害の可能性は低いとは思いますが、一度はCTやMRIなどの検査を受けた方がいいと思います。


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