精神科Q&A
【0279】何に対してもやる気を失って酒ばかり飲んでいる父の状態はアルコール依存? それともうつ病?
Q: 61歳の父は、長年勤めた会社を定年で辞めてから、別の仕事に就いているのですが、最近様子が変だということを母からの電話で知りました。(現在、父と母は実家で二人暮らしです)
仕事はとりあえず行っているようなのですが、休みの日は朝から酒を飲み、1日中寝てばかり。以前は酒は飲んでも庭の手入れや家の掃除などまめにしていた人で、男にしてはおしゃべりなところもあった人なのですが、会話も全くしないとの事。時々手のひらや腕などに内出血のような斑点がいくつも出来たり消えたりもしているようです。一番心配なのはお酒の量です。以前から酒豪でどちらかというと酒乱でした。今は朝から焼酎1000mlのボトルを、約1日〜2日で空けてしまうとの事。「俺は死ぬ、俺は死ぬ」ばかり言っているようで母も困っています。
久しぶりに聞いた母の様子も少し疲れたようで母の体も心配です。父は以前の会社ではとても真面目に良く働く社員だったようです。しかし短気な為、よく他の従業員とぶつかり合った事もしばしばというタイプです。何に対してもやる気を失って酒ばかり飲んでいる父の状態はアルコール依存なのでしょうか? それともうつ病なのでしょうか? こんな状態の父を病院に連れて行くとしたら何科にかかればよいのでしょうか。
林: お父様の今の状態はアルコール依存症です。会社で真面目に働いていた人が、退職をきっかけにアルコール依存症になることは比較的よくあることです。退職に伴う生活習慣の変化や、長年勤めていた仕事から離れることによる思いなど、背景としてはいろいろと考えられます。また、同時にうつ病になっていることも否定はできません。しかしいずれにせよ、いま必要なことはアルコールを止めることです。原因をいかに追究しても、それによって飲酒が止まることは全く期待できません。また、仮にうつ病になっていたとしても、うつ病とアルコール依存症が合併している場合には、アルコールを止めないとうつ病もよくならないものです。出血斑が見られるというのも気になる症状です。「病院に連れていくとしたら」ではなく、病院に連れていかなければなりません。このままでは命にかかわります。精神科が最善ですが、ご本人が拒否されるようなら、まずは内科で診てもらうのがいいでしょう。
続きを読む