精神科Q&A

【0250】半年前から妻が奇声を発したり暴れたりしています


Q: 妻(32歳)の病気で家族全員で頑張ってきましたが、もうどうすればよいのかわかりません。妻はもともと健康で、性格的にもこれといって問題はなかったと思います。そんな妻が半年前の未明に突然、「お父さん、大変なことになった。助けて。頭が変になった。助けて。」と言って私を起こしました。最初は、いったい何がおきたのかまったく理解できずとにかく寝かしつけ妻の実家の母をよびその朝、実家につれて帰ってもらいました。
実家での妻は、明らかにあり得ないことを言い出しました。たとえば、
・まわりの知人が実はすべてつながっていて私をはめた。
・私が妊娠しているのにスポーツクラブでエアロビクスをしたから赤ちゃんが だめになったってことで病院がつぶれる。大好きなインスラクターも大変なことになる。(赤ちゃんがダメになったのは事実ですが卵が育たなかったためで流産ではなく。産婦人科で処置をしてもらいました。昨年のことです)
 この他にもさまざまなことを口にしはじめ、奇声を発したり暴れたりしはじめました。
 その夜は、実家でも完全に取り乱し、救急車を呼びましたが、なんとかおさまり、翌日、神経科に行き診察を受け薬(寝る前にジプレキサを飲むだけ)を処方されました。それを毎日欠かさず飲みつづけ、薬が効いたのか、1月末には何事もなかったかのように、家事も問題なくでき、ほとんど通常の生活ができるようになり、実家から戻ってきて通院間隔も2週間おきまでひろがっていたのですが、3月に様子が急転しました。
 異常に「不安」がるようになったのです。
・3月末の娘の卒園式、4月の入学式に出ることができないかもしれない。からはじまり、些細なことをものすごく不安がり、飛び跳ねる。それも100回くらい続けてです。それだけでなく、首を振る、歩き回る等、とにかく、じっとしてられない時間が増えました。薬も、デパス・ルーランが追加されました。
 先生曰く「急激に普通の生活に戻りすぎたかもしれない。」確かに、以前通っていたスポーツジムに通い始めるなど、まったく12月末以前と同様に近い生活をしていました。(先生の了解のもとでした)
◆服用は、デパス・ルーランを1日3回と寝る前のジプレキサ
その後も状態は好転はせず。4月には
◆服用は、デパス・ルーランが1日4回に増え、寝る前のジプレキサはそのまま。また、昼間、1人でいることができなくなり、私の母や妻の母に交代で泊り込んでもらったり、私が会社を休んだりしてなんとか誰かが傍についているようにしています。
その後も、まったく好転せず、むしろ不安な時間が長くなり体を動かす時間も増え、薬の
処方も変わりました。(ストブランを追加 5月)
◆服用は、デパス・ルーラン・ストブランを1日4回、寝る前はジプレキサとストブラン。
しかし、毎日、早朝(早いときは4時半とか。だいたい5時前後。)に目覚め、不安にかられ飛び跳ねる。日中も同様。むしろ日々悪くなっていくようです。
その後また処方がかわりました。寝る前のジプレキサをはずし。ルーラン2錠に変更
◆服用は、デパス・ルーラン・ストブランを1日4回、寝る前はルーラン2錠とストブラン。
さらに、今週の火曜日に処方がかわりました。
◆服用は、クロフェクトン錠25mg(Y-CF25)・デパス錠1mg(Y-DP1)・ストブラン錠2mg(105)
 を1日3回と
 就寝前に、セロクエル25mg錠を2錠・ハルラック錠0.25mg・ロヒプノール錠1mg
 今日も、22時半ころまで飛び跳ねたりしていましたが、22時に飲んだ薬がきいてきたのかやっと寝付きました。この薬に変えて2日目ですが、今度は異常に「イライラ」するようで娘のちょっとした行動を怒鳴りつけたりし始めました。
 かかりつけの先生には、火曜に薬を変えた際に2、3日様子をみて金曜にまた来て下さいと言われています。
 私たちは、先生の言うことを信じて協力しあい半年以上頑張っていますが、2月末以降は逆に少しずつ悪くなっていっているようにしか思えません。妻の母も体をこわし、もう、このままではどうしようもないと思っています。正直なところ今の病院で大丈夫なのか、薬はあっているのか、何も検査しなでいいのか(血液検査等もしたことがありません)不安でしょうがありません。妻のためになることなら何でもするようにして家族みんなで頑張ってきましたが、もう限界になりつつあります。本当に良くなるのでしょうか。


: はじめに結論を申し上げますと、十分に良くなる症状だと思います。
 ポイントは二つあります。第一に、病気そのものの診断は何かということです。第二は、「飛び跳ねる」という症状はいったい何かということです。この2点がはっきりすれば、対策が自然に見えてきます。順に解説します。
 まず第一の診断についてですが、妄想型あるいは緊張型の統合失調症(精神分裂病)だと思います。(妄想型と緊張型の統合失調症には本質的な違いはないと考えられますので、どちらの型かということはあまり重要ではありません。)
 もうひとつ考えられるのが、脳炎などの疾患(脳器質性精神障害)です。急に奥様の場合のような激しい症状が出た場合には脳炎の可能性を考えて血液検査、MRIまたはCTスキャン、脳波、髄液検査などをするのが普通でしょう。(ただし、そうとは言い切れない場合もあります)
 しかしこれまでの経過を見ますと、統合失調症にほぼ間違いはないと思います。そうだとすれば、抗精神病薬によるこれまでの治療は基本的に正しいと言えます。
 ただし何ヶ月も治療しても良くなっておられないわけですから、治療法についてあらためて検討したいところですが、その前に第二の点、「飛び跳ねる」という症状がいったい何なのかについて考えてみたいと思います。

些細なことをものすごく不安がり、飛び跳ねる。それも100回くらい続けてです。

という文章からは、この「飛び跳ねる」というのも統合失調症の症状のひとつであるように感じられます。極度に不安が強い状態か、または緊張型の統合失調症の症状としての興奮(緊張病性の興奮といいます)が最もあてはまると思います。
 ただしもう一つの可能性として、抗精神病薬の副作用があります。アカシジアという副作用です。アカシジアは日本語では「静坐不能」と訳されており、典型的には「足がムズムズする、足が落ち着かない」という体験のため、じっとしていられず、足踏みをしたり歩き回ったりする症状です。不安も同時に感じられることがほとんどです。奥様の場合、「飛び跳ねる」という症状を見てストブランが処方されていますので、主治医の先生はこのアカシジアが出ていると判断されたのだと思います。アカシジアの治療には抗パーキンソン薬が普通に使われます(ストブランは正式名トリヘキシフェニジルという抗パーキンソン薬です)。
 しかし、「百回も飛び跳ねる」というのは、むしろ緊張病性の興奮のように思えます。(もっとも、「飛び跳ねる」という言葉で、実際はどのような状態を表現されているかが問題ではあります。落ち着き無く脚を小刻みに動かし、それが小さく跳んでいるようなら、アカシジアでしょう。しかし文字通りぴょんぴょん飛び跳ねているのであれば、アカシジアの可能性は低いと思います)
 アカシジアでないとすれば、ストブランなどの抗パーキンソン薬は効果がありません。

 以上をまとめますと、奥様のこれまでの症状は、すべて統合失調症によるもので、しかし今のところ薬物療法の効果が出ていないと要約することができます。

 ここからが対策です。結論を先に申し上げますと、入院するべきだと思います。というより、なぜこれまで入院治療が行われなかったのか、私には不可解に思えます。入院できない何か特別な理由があったのでしょうか。
 入院したら、奥様の場合、まず最初に行うべき治療は、電気けいれん療法か強力な薬物療法でしょう。
 この半年で飲まれた薬物の量が不明(メールに書かれているのは錠剤の数だけで、1錠あたりのミリグラム数の情報がありませんので、量は不明です)ですので、これまでの薬物療法が十分かどうかはわかりません。不十分だった場合には、入院して十分な量を使うか、または飲むのではなく注射に変更することで効果が見られることもあります。(なお、これは私見ですが、私ならメールに記載されているような処方は致しません。ただしこれは医師の裁量の範囲内でしょう)
 けれども、ここ何ヶ月は全くといっていいほど薬が効いていない様子ですので、むしろ電気けいれん療法の適応だと思います。電気けいれん療法で嘘のように症状が消えることは十分考えられます。(特に緊張型の色彩がある統合失調症には、薬物が無効でも、電気けいれん療法が非常に良く効くことがよくあります。)
 また、入院すれば検査も可能になるでしょう。
いずれにせよ、これだけご家族が頑張ってきたのに改善の傾向が見られず、限界に達しているという状況では、まず入院というのが第一でしょう。改善は十分に期待できます。入院治療を受けさせてあげてください。

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