精神科Q&A
【0246】トレドミンの副作用で死亡した人がいると聞いたのですが
Q: 29歳の女性です。これまでレキソタンという薬を飲んでいましたが、それでは対応不可とのことで、今日、精神科でトレドミンを処方されました。副作用のことや、今後のことを聞かずにかえってしまいましたが、ネットでトレドミンを検索すると、なんと、副作用により赤血球の数が減り、肺炎を引き起こし死亡した例があるという文章を発見し、飲むことをためらっています。是非Q&Aのページで教えてください。
林: どんな薬にも過敏症というものがあり、対応が遅れた場合などには命にかかわります。「死亡した例がある」と聞けば誰でも驚き怖くなりますが、そういうことはどの薬でも起こり得ることです。ただ確率が非常に低いために、効用の方が圧倒的に高いと判断されて使用されているのです。どんな薬でも、またどんな治療法でもそれは同じことです。
ネットでトレドミンを検索すると、なんと、副作用により赤血球の数が減り、肺炎を引き起こし死亡した例がある
とのことですが、これはおそらく赤血球ではなく白血球の誤りでしょう。白血球の中で特に顆粒球という種類の物が減少すると、感染に対する抵抗力が弱くなり、風邪などをきっかけに肺炎になりやすくなります。急激に顆粒球が減少してしまった場合や、その他の要因(衰弱など)があれば、死亡することもあり得ます。
精神科の薬でこの副作用の確率が高いことが知られているのはクロザピンという抗精神病薬で、このためもあって日本では認可されていません。(しかしそれが正当かどうかはわかりません。クロザピンはアメリカなどではかなりよく使われている薬です。リスクがあっても、他に方法がなければオプションとしてそういう薬もあった方がいいともいえます)
ご質問のトレドミンには特に白血球減少の副作用の確率が高いという事実はありませんので、特にトレドミンを恐れる理由は全くありません。(ただしもし極めて低い確率でもいかなるリスクも拒否されたいということであれば、いかなる治療も受けないという方法しかありません)
それからもっと重要なことは、副作用についてはまず第一に処方してくれた先生に聞くべきだということです。ネットで検索することはお勧めできません。ネットには信頼できない情報が溢れているからです。(自分でHPを開設していてこういうことを言うのもおかしいですが、事実は事実です)
もしネットなどで薬に関する情報を得たいと考えた場合は、薬についている添付文書を入手してお読みになるのが一番確実です。(ただし添付文書にはほぼ例外なく恐ろしい副作用が書かれています。すべて確率の問題です)
それが難しい場合には、本の方がネットよりは信頼できると思います。