精神科Q&A
【0166】 リストラにあってから変なことを言うようになった母
Q: 私の母(52歳)は一年程前にリストラにあってから変な事を言うようになりました。 電話が盗聴されている、飛行機が墜落して沢山の人が死んだのは自分のせいだ、喫茶店で誰かが自分のコーヒーに毒を入れた、等です。また、テレビに出て来る人物の名前は全て彼女の知り合いにつながっている、背景の模様がうちの家の壁紙の模様に似ている、テレビはこうして自分に脅しのメッセージを送っている等、と、とても怖がるようになりそのうち見ないようになりました。病院に行こうと言っても「私は絶対にどこもおかしくない」の一点張りで結局連れて行けませんでした。 それが10ヶ月程続いたのですが最近それらの妄想はどんどん消えてゆきもうあまり怖くなくなったというのです。 (「そんな事も言ってたわね、そう言えば」というような返事でした。)しかしこの3ヶ月程で新しい仕事を3度も変えており(理由はハッキリ言わない)まだやはり不安定なのは確かだと思います。
こういう私の母は分裂病でしょうか? それともあれは一時的な事でこのまま彼女は元通り正常に戻ってゆくのでしょうか?
林: いちばん考えられる病名は統合失調症(精神分裂病)だと思います。ただし、確かに一時的に統合失調症(精神分裂病)そっくりの症状が出て、そのまま薬も飲まずに良くなってしまう方が、まれにはいらっしゃることも確かです。そういうことを聞くと誰でも、自分や自分の身内は、「良い方の例外」と考えたくなるものですが、あくまでも例外なので、あまり楽観的になることは危険です。
お母様は、ご自分の妄想を振り返って、「そんなこともあったわね」とおっしゃっているとのことですが、そういうふうに曖昧に肯定されることは、ある程度よくなった統合失調症(精神分裂病)の人ではよくあることです。
私としては、いま受診されることをお勧めします。このまま自然に良くなっていくことを期待される気持ちは良くわかりますが、そういう確率は低いです。だとすれば、ある程度いい状態の時に受診しておいた方がいいと思います。というのは、妄想がひどくなると、受診を頑強に拒否されて、ご家族の方がとてもお困りになることが多いからです。