精神科Q&A
【0160】拘束して今度は電気ショックなんて、乱暴な気がするのですが
Q: 24歳になる妹のことなのですが、「おじいちゃんの霊がついてる」などと口走ったり、窓から飛び降りようとしたり、家にある食器を割ったりしてしまうので、救急車をよんだところ対処できないと言うことで、警察を呼ばれました。
警察が来ると、さらにおかしな事をするようになり、自分で服を脱ぎ全裸で寝転がってしまったそうです。しばらく留置所で母親とすごし、夜中に精神科に入院しました。暴れたりしてしまうので、手足を拘束して点滴をしているということで、家族も会うことが出来ません。入院して3日目になりますが、話し掛けても目をつぶったままだそうです。診断書には急性精神病のため入院となっていました。
家族が会ってもおそらくわからないだろうと先生はおっしゃっていますが不安でしかたありません。明日からは電気ショックの治療をすると言っていました。
留置所にいれられた挙句、手足を縛った上に電気ショックなんて、なんだかひどく乱暴な気がするのですが大丈夫なのでしょうか?
こんな形で入院させてしまったことでかえって病気が悪くなったという可能性はありますか?
それから、入院している患者に家族が会えないのはよくあることなんでしょうか?
林: 妹さんは、緊張型の統合失調症(精神分裂病)だと思います。一見症状は激しいですが、治る時はきれいに治ってしまうのも緊張型統合失調症の特徴です。今は危険な状態のようですから、一刻も早く治療を受けるべきです。
ご家族から見て、無理に入院させたり、縛られたり、電気ショックをかけたりということを急に目のあたりにしたら、なかなか納得できず、乱暴と感じられる気持ちはよくわかります。それはわかりますが、現実の対応策として何があるかということを冷静にお考えになる必要があります。今の妹さんのように興奮が激しい場合には、自分を傷つけたり、また自殺したりする可能性が大です。時には物を壊したり他人を傷つける可能性さえあります。今すぐ治療をしなければ、事態はどんどん悪くなるでしょう。こんな形で入院させてしまったことでかえって病気が悪くなったという可能性はありますか?
このご質問に対しては、あえて「あります」とお答えしましょう。しかし、入院させなければもっと悪くなった可能性の方がはるかに大きいと思います。十分な説得をして納得して入院していただく、というのは理想ではありますが、妹さんの症状ではそれが可能であったとは考えにくいです。緊張型の統合失調症は重大な病気です。何もかも問題なくうまくいく、というわけにはなかなかいきません。メールからは細かい状況まではわかりかねますが、基本的には今回のやり方しかなかった(おそらく最善だった)と思います。
それから、入院の初期に面会が禁止になることは、病状によっては十分あり得ることです。いかに大変な症状であるかをご家族にも理解して頂くためには、どんな病状でも面会を許可する、という考え方もありますが、病状を見てご家族があまりに強いショックを受けてしまう、ということもあり得ますので、面会をどうするのがいいかは一概には言えません。実際の病状と主治医の考え方次第だと思います。
また、診断書が「急性精神病」となっていた、というのも、自然だと思います。緊張型の統合失調症の可能性がいちばん高いとは思いますが、興奮が激しい状態では確定診断はしにくいので、入院時には「急性精神病」とか「急性錯乱」と診断しておくことはよくあります。