精神科Q&A

【0145】神経性食欲不振症と身体表現性障害の違い


Q: 39歳の内科医です。神経性食欲不振症と食欲不振を主訴とする身体表現性障害(ICD10のF45)とは区別すべきなのでしょうか。(摂食障害を呈する境界型人格障害といった症例等あるでしょうが) 神経性食欲不振症が広義の身体表現性障害として分類可能,といったことはあるのでしょうか。



: 神経性食欲不振症身体表現性障害ははっきり区別するべきです。
 ただし、ご指摘のように、神経性食欲不振症(拒食症、摂食障害)は身体表現性障害の代表のように言われることもしばしばあります。私はそれは間違いだと思います。確かに、神経性食欲不振症では、表面に出ているのは身体症状で、その背景には何らかの精神的因子が大きな要因となっているという意味では、似ていると思われることもあるかもしれません。しかしながら、そもそも身体表現性障害とは、身体的基盤がないという医師の保証にもかかわらず、身体症状を訴え続け、身体的検索を求めるというのが主病像で、これは神経性食欲不振症とは相容れないものです。神経性食欲不振症の身体症状であるるいそう(痩せ)は、食事の拒否という行動の結果生じたもので、身体表現性障害に見られる心気傾向は通常は認められないというのが大きな相違点です。病因論的にもはっきり区別されると思います。(その肝心な病因の本態は現在のところ不明ですが・・)
 もっとも、ご承知のようにICD-10のような操作的診断基準は、病因論よりも記述論的立場を取っておりますので、診断基準の解釈によっては両者のcomorbidityを主張することも可能かもしれません。けれどもそれは操作的診断基準に内在する一種のartifactのようなものであると思います。

(医学の専門家の方へご回答ということで、どこからご説明を始めるべきか迷いに迷いましたが、あえて基本的なところから回答させて頂きました。失礼の段はお許しください。)


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