精神科Q&A

【0119】電気痙攣療法の後、状態が悪化しました


Q: 65歳の母が、数ヶ月前からうつ病で入院しているのですが、どんどん悪化してきたため一ヶ月前に電気痙攣療法をして頂きました。ところがその後さらに悪化してしまいました。言葉が全く話せず、コミュニケーションを取ることが出来ません。また、全身の筋肉が硬直状態になり、食事も排泄も自力では全く出来ない状態です。私としては、@うつ病の昏迷状態、A電気痙攣療法による意識障害、B認知症(痴呆)の始まり、C悪性症候群、のどれかだと思うのですが、一体なにが起きたのでしょうか。また、どうしたらいいのでしょうか。



: 思い切って電気痙攣療法を受けたのにかえって悪化してしまい、失望とともにやり切れないお気持ちのことと思います。お察し申し上げます。
 今の状態を脱するためには、言うまでもないことですが、これまでの経過を把握している主治医の先生におまかせすることだと思います。細かい経過の情報なしに色々可能性を考えても、的外れになりがちなものです。
 ここでは、それを承知の上で、可能性について私の考えを申し上げることといたします。(「可能性」ですので、確率の低いものも含まれています)

@ うつ病の昏迷
十分考えられます。すなわち、電気痙攣療法以前からのうつ病の悪化が続いているということです。ただしこれは、その他の可能性がないことをまず確認した上で判断するということになります。その結果、うつ病の昏迷だということになれば、もう一度電気痙攣療法を行うという治療も考慮すべきということになります。

A  電気痙攣療法による意識障害
電気痙攣療法では一時的に意識障害が起きますので、それが長引くということはあり得ることです。ただ、一ヶ月も続く可能性はほとんどゼロと言えます。それでも脳波をとっておく必要はあると思います。

B 認知症(痴呆)の始まり
ほとんど考えられません。認知症(痴呆)がこのような急速な経過を取ることはまずありません。

C  悪性症候群
考えるべきです。意識障害と筋肉の硬直は、悪性症候群に特徴的な症状です。ただし、電気痙攣療法の前にかなり薬を減らしているのであれば、可能性は小さくなります。それから、チェックすべき症状としては、発熱の有無と血液検査(血中のCPKの値)があります。もし熱も出ていてCPKも高ければ、悪性症候群の可能性は高まります。その場合は、点滴による十分な補液と、ダントロレンという薬による治療が適切です。また、もし今でも何かの薬を飲むなり注射するなりしているなら、それは中止するべきです。

D 全く別の脳疾患
元々うつ病ではない何か別の脳の病気であったとか、またはうつ病の治療中に別の脳の病気が発症したということも、可能性としては考えておくべきでしょう。これはCTやMRIで診断できるはずです。


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