精神科Q&A
【0020】 心の病気の治療の場所に求められる配慮はどんなことでしょうか
Q. 私は建築学科の学生ですが、今度、卒業研究で精神科の病院を設計することになりました。心の病気の治療の場所に求められる、空間的配慮はどんなことでしょうか。たとえば、ストレスが原因の心身症の方には、ストレスの開放を考えた開放的な空間とすることが良いのではと思っています。精神分裂病、神経症、うつ病など、それぞれの病気の人にとって、病気の特徴を考えた上で、専門的な立場から見た具体的に考えられる配慮などありましたら、アドバイスをよろしくお願い致します。
林. 建築のことについては私はまったくの素人ですが、病棟で入院患者さんをみていた経験からお答えしたいと思います。
実際に治療にあたる立場から言いますと、ご指摘のような点はもっともではあるとは思いますが、実際には、特定の疾患の患者さんを治療の対象とすることは難しく、ひとたび病棟を始めたら、あらゆる種類の患者さんが入院されることを想定することが必要になります。病棟の環境に合わないからといって、患者さんの入院を拒否するようなことがあっては本末転倒になります。
医療者のよくやる間違いは、自分の理想とする医療をやろうとするあまり、実際の患者さんのニーズとずれてしまうことです。たとえば病棟の構造からいうと、明るく開放的な環境 (これが当然理想なわけですが) を作ることによって、確かによりよい治療を受けられる患者さんがいらっしゃる反面、非常に病状が重く、閉鎖的な環境を必要とする患者さんを排除してしまうという事態が生じるわけです。病院や医療というものは、治療を必要としてそこにいらっしゃる人のためのものであって、医療者がやりたいことをやるためのものではないということを、常に忘れないことが大切だと思います。