精神科Q&A
【0018】うつ病の診断書は、就職に不利になりますか。
Q: 22歳の男子大学生です。あることをきっかけにうつ病になり、大学に診断書を提出して正式な形で休みました。学校のほうはそれで特に問題はないのですが、これから就職にあたって、うつ病の診断書が会社に回って不利になることはありませんか。
林: 学校や会社に出した診断書が、ほかの学校や会社に回されることはありません。もちろん絶対にないかと聞かれると困りますが、私の経験上からは、まず無いと言っていいと思います。
Q: 会社は学校に問い合わせたりしないでしょうか。
林: しないと思いますね。少なくとも就職試験の段階で問い合わせることはないでしょう。ただ、会社で何か病気によると思われる問題が起こってきた場合は、会社の嘱託医から校医に問い合わせるということはあるかもしれません。実際には私はそういう話を聞いたことはありません。会社から会社の問い合わせなら時々聞いたことはありますが。
Q: そういう場合は診断書が回ったりするのですか。
林: 診断書そのものが回ることはないでしょう。
Q: 診断書ではなくて、何かほかの形で情報が回るのですか。
林: 言い忘れましたが、会社から会社への問い合わせ、というのは、会社の嘱託医から嘱託医への問い合わせということです。こういう場合、聞かれた方の医者は、情報を教えるかどうかは悩むところです。ただ、その人の病気のよりよい治療のために、情報を教えることが必要な場合がありますね。その場合は、前に診ていた医師には、情報を教える義務があると言えると思います。たとえば何かの薬にアレルギーがあるとか・・
Q: 病名はどうですか。
林: 病名が治療上とても重要な場合はやはり教える義務があると思います。診断がとても難しかった場合とか。
Q: そういうような事情がなければ教えないわけですか。
林: うーん、そうですね・・。教える義務はないでしょうね。でも、「教えることはできない」と答えれば、相手は当然、何か教えられないまずい情報があるに違いない、と思うでしょうから、何も答えないというわけにもいかないでしょうね。
Q: じゃあ林先生ならどう答えるんですか。
林: 患者さん本人の許可がなければどんな場合でも何も答えられない、と言うのが普通ですね。たださっき言ったように、これからの治療上、情報を教えないと非常にまずいことが予想される時は別ですが・・。
Q: でも結局、患者さん本人は許可なんてしないでしょう
林: 実際には、何とかうまく言っといてほしいと患者さんから頼まれることがほとんどですね。
Q: そうするとどうするんですか。
林: 何とかうまく言っとくんです。確かに病気でちょっと休んでたみたいだけど、自分はよく診てないから病名まではわからないとか。
Q: たとえばうつ病だとわかったら、その相手の会社の嘱託医の先生はどうするんでしょうか。人事部とかに伝えるんですか。
林: 人事部に伝わって、就職とかの扱いが不利になるのか、という意味のご質問ですか。
Q: そうです。世間一般的にも、就職の際にうつ病とわかると不利になりますか。
林: えーと、最初のご質問の方ですが、嘱託医がどうするかとか、人事部がどう扱うかということは、会社によって違いますね。これは本当にすごく違います。こころの病気にとても理解のある会社から全然無い会社まで、あらゆる会社がありますね。
Q: 一般的にはどっちが多いですか。
林: そこまではちょっとわかりません。ただ一般に就職の際にうつ病が不利になるかということへのお答えは、それはやはりイエスですね。不利になると思います。これは、うつ病だから、というよりも、どんな仕事でも「健康」を採用の条件にあげるのが普通ですから、どんな病気でも少なくとも有利にはならないですよね。その会社がうつ病をはじめとするこころの病気に理解があったとしても、それは社員がそういう病気になった場合の対応がいいということで、就職試験の段階ではやはりどんな病気でもある程度はマイナスになるでしょう。これは現実として見つめるべきだと思います。