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 ジョーン・ナッシュ(John F. Nash, Jr, 1928-)。1994年のノーベル経済学賞受賞者です。若くて優秀な数学者であったナッシュは、31歳の時に統合失調症(精神分裂病)になりました。結婚して1年後で、妻の妊娠中のことでした。妄想症状が激しかったため、ナッシュは数ヶ月単位で何回も精神科に入院しました。ナッシュ本人は、本当は入院したくなかったと当時のことをふりかえっています。

 しかし入院の甲斐あって、ナッシュの症状は回復しました。ナッシュは再び数学の研究の仕事に戻りました。その後妄想が再発したこともありましたが、入院を必要とするほどの状態までには至らず、病気と闘いながら研究を続け、60歳代になってついにノーベル賞を受賞したのです。

 ナッシュは現在も活発に研究を続けています。「私は約25年間妄想症状があって、研究が思うようにできなかった。いま私は66歳で、普通なら研究を続けられない年齢かもしれないが、まだまだこれからもやるつもりだ」と彼はノーベル賞受賞後も意欲十分なところを見せています。

 統合失調症(精神分裂病)の有名人は、必ずしも多くありません。ただしその理由のひとつは、普通は自分が統合失調症だということをあえて公表しないということもあります。実際には精神分裂病で優秀な業績を残している人はたくさんいます。統合失調症の人は、対人関係が苦手な人が多いので、ナッシュのように学究的な仕事はわりと向いているかもしれません。もちろん他の分野でも活躍している人はたくさんいます。ナッシュのように、高齢になっても能力も意欲も衰えない人もいます。統合失調症という病気は、一般的なイメージと実際がかなり違うのです。

 

(2002.6.5. 追記)

ナッシュの半生は、「ビューティフルマインド」という題名で映画化されました。分裂病の苦悩はほとんどが内面的なものなので、どうやって映像にするのだろうと私は思っていたのですが、視覚的にも非常に美しい映画に仕上がっていました。もちろん医学的に矛盾した点はありますが、全体から見ればその矛盾は些細なことで、優れた作品だと思いました。なおこの映画については、ダカーポ493号に「エスカレーターの奇妙な均衡」と題してエッセイを書きました。

 


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