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PTSD

(心的外傷後ストレス障害)

Posttraumatic Stress Disorder


トラウマによって起こります

こころの傷のことをトラウマといいます。PTSDの原因となるトラウマは、死に直面するかまたは重傷を負うような出来事や、自分や他人の身体の存在にかかわる危険な出来事です。阪神・淡路大震災や、地下鉄サリン事件などがその実例です。そういう出来事の体験や目撃を原因として、いろいろな症状が続くのがPTSDです。思い出したくないのにそのトラウマを何回も思い出してしまったり、それどころか白昼夢のようにまた同じ体験をしているように感じたりします。逆にトラウマの一部をどうしても思い出せないということもあります。不眠やイライラもよく見られます。

  
ベトナム戦争が作った病名です

昔はPTSDという病名はありませんでした。PTSDという病名が作られたそもそもの始まりは、ベトナム戦争で極限を超える悲惨な体験をした兵隊の精神的後遺症が、1970年代にアメリカで大きな問題になったことでした。ですから元々はトラウマというのは戦場体験のことを指していました。ところが同じような症状がレイプの被害者や自然災害の被災者にも現れることがだんだんわかってきて、PTSDという病名が正式に作られたのです。最近では心の傷やストレスをなんでもトラウマと呼ぶ傾向があり、それにしたがってPTSDと診断されるものが増えていますが、その結果病気の概念が曖昧になっていることも確かなので、これには賛否両論があるところです。


診断はとてもむずかしいです

こころの病の原因を明らかにすることはとてもむずかしいものです。それはなにもPTSDに限ったことではありません。本人が原因だと信じていることが全く見当違いだったり、極端な場合はそんな出来事はなかったということもあります。逆に、本人がなんでもないと思っていたことや、忘れてしまっていたことが原因だったりすることもあります。特にPTSDではトラウマとなる出来事とのつながりが診断の中心になるので、医師が診断する場合にも自己診断の場合にも、ほかの病気に比べて誤診の可能性はかなり高いといえるでしょう。いったんPTSDと診断すると、トラウマの原因に関わっていたとされる人に少なくとも一部は責任があるということになりますので、誤診の影響はいろいろな人に波及することになります。実際、PTSDに関係した訴訟はたくさんの議論を生んでいます。


こころと脳を結ぶ病気です

PTSDの原因は間違いなくこころの領域、精神的な領域の出来事ですが、その結果として脳にはっきりした変化が現れることがわかっています。脳のMRIで海馬が小さくなっていることが見られたり、ノルアドレナリンやセロトニンの異常、コルチゾールなどのホルモンの変化が現れたりします。PTSDに見られる記憶の症状は海馬に関係している可能性があります。抑うつはノルアドレナリンやセロトニンに、自律神経症状はコルチゾールに関係しているのかもしれません。PTSDでの脳の変化はまだ研究段階なので、診断に使うことはできませんが、PTSDの研究によって、こころと脳の密接な関係が目に見える形で現れていると言えます。また、脳の変化を明らかにすることが有効な治療法の開発にもつながっています。

PTSDの正式な日本語病名は「外傷後ストレス障害」ですが、この病名は誤解を招きやすいので、「心的外傷後ストレス障害」としました。


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