精神科Q&A

【2333】うつ病で治療中ですが、このまま眠り続ける生活をしていてよいものでしょうか。‏


Q: 先生のホームページを毎月拝読させていただいております。23歳、女性、大学4年生です。 私は、大学付属の精神科の先生からうつ病と診断され、現在も治療を続けています。服用している薬は、パキシル10mg×1錠エビリファイ3mg×1錠です。 うつ病の治療を開始したのは、アメリカに1年間交換留学していたX年の冬のことです。新しい生活、授業になじむことができず、ストレスに耐えられなくなって発症したのだと思います。留学期間前半はなんとかのりきり、単位もすべて取得できたものの、留学期間の後半には完全にエネルギー切れのような状態になってしまい、強い疲労感やすべてに対して億劫な感覚から、トイレ以外はベッドから起き上がることもままならない、寝たきりのような状態になってしまいました。何日もシャワーも浴びず寝ているだけの生活で、アメリカまで来させてもらっているのに自分は何をしているんだろうと自責感でいっぱいでした。その反面、食べること、眠ることはでき、10キロ近く体重は増加し、現実に向き合う気力もなくただただ食べて眠る生活でした。好きだった音楽を聴くことも、文字を読むこともとにかく億劫でできませんでした。いくら寝ても食べても疲労感は抜けず、穴の開いた風船に空気を送り込んでいるような感覚で、何かするとすぐ疲れてベッドにもぐりこんでいました。友達との付き合いも億劫で、食事は一人でベッドの中でとっていました。 教授のすすめで留学先の大学の精神科を受診した際、治療が必要なうつ病と診断され、セレクサというSSRIの薬を10mgから服用し始めました。始めは特に効果は感じられませんでしたが、30mgに服用量を増やしたところ、ぱっと浮かび上がるような、元気だったころの感覚を感じ、そこから徐々に外に散歩に出たり、授業に参加できるようになったりしました。現地の医師からは「日本に帰ってからも精神科にかかりなさい」という言葉を頂いたのですが、薬が効いても、医師に病気だと診断されても、自分はただ甘えているだけなんだという気持ちがありました。病気ではなく甘えだと思った理由としては、食べられること、眠れること、留学という自分のやりたいことをさせてもらいながら逆境に負けてしまったこと、人間は皆、ストレスを感じながらも頑張っているのに自分だけ病気という免罪符をもらって逃げている気がする・・・などと感じたことがあります。しかし、現地の医師から掛けられた言葉が心に引っかかっていたので、X+1年に帰国してから、2,3ヶ月間隔は空いてしまったものの、大学付属の精神科に再び通院するようになりました。そこで冒頭に記載した薬が処方され、現在(帰国後10ヶ月)も月1、2回のペースで通院しています。 現在の主な悩みは、寝てばかりいるということです。大学4年生ということもあり、授業があまりなく、前期は卒論の準備も本格化していなかったため、暇さえあれば自宅に帰ってベッドにもぐりこんで眠っていました。何もない日は1日15,6時間は寝てしまいます。寝ても寝ても眠いです。でも、1日中寝ているのはだめだという気持ちがあって、週3,4日アルバイトをして外に出るようにしています。アルバイトといえども仕事という意識があるので、アルバイトにはなんとか通えていて、行ってしまえば仕事もできています。ただ、仕事が終わるとぐったりしてしまって帰るとすぐベッドにもぐりこみます。発症前好きだった自炊は全然しなくなってしまい、1日2回程度、不規則にコンビ二で食べ物を買っています。薬のおかげか異常な食欲はなくなり、体重は発症前とほぼ同じに戻りました。空腹は感じるし、味覚も感じます。汚い話ですが、シャワーはいまだにおっくうで、発症前は毎日欠かさず浴びていたのに今は2,3日に1回ということも多いです。すぐ疲れてベッドに戻ってしまうため、おっくうで運動もほとんどしていません。こんな生活だめだなと思いながら、ただただ現実逃避するかのように眠り続けています。気持ちが乗るとき、眠気が少ないときは、友達との食事や買い物などを楽しめます。眠れるし食べれるし、友達とも交流できる気楽な学生の私は、一般のうつ病の方と比べたらどれだけ楽なことでしょう。私は必要な勉強や規則的な生活を怠っている、ただのどうしようもない人間なのだと思えてきます。 現在診ていただいている病院の先生の説明では、楽しめる時は楽しんだほうがいいとのこと、また、うつ病を発症すると、その後も3年くらい鬱の状態が残るので、現在の眠気や億劫感も仕方がないことで、現段階では大学の勉強が最低限できていればいいとのことです。先生の優しさに励まされながらも、自分としては本当はもっときちんと生活・勉強したいし、そうすべきだという気持ちがあります。ただ、眠気・億劫感で体がついてこないのが現状です。これから卒論執筆も本格化しますし、来年からは社会人になります。こんな状態でまともにがんばっていけるのか不安が残ります。
長々と書いてしまいましたがご質問としましては、このまま眠ってばかりの生活をしていていいのかということです。なんとかがんばって、活動的・規則的な生活をしながら回復を待つべきか、それともこのまま最低限をこなしながら、眠りながら回復を待つべきか、どのようにお考えになりますでしょうか? 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。留学中は先生のホームページに本当に励まされました。とても感謝しています!


林: うつ病の症状としての睡眠障害は、不眠がよく知られていますが、この【2333】のケースのように過眠も稀ではありません。過眠の場合は、この方のように、

眠れるし食べれるし、友達とも交流できる気楽な学生の私は、一般のうつ病の方と比べたらどれだけ楽なことでしょう。私は必要な勉強や規則的な生活を怠っている、ただのどうしようもない人間なのだと思えてきます。

と本人が感じておられることもよくあるものです。
けれども、この過眠は、間違いなくうつ病の一症状です。決して怠けではありません。そして、治療を続けていれば回復する症状です。
とは言うものの、過眠は、不眠に比べると治療が奏功しにくいことは否定できません。平均的なうつ病よりも、少々回復には時間がかかると思ったほうがいいでしょう。回復までの期間、どのように過ごすのがいいかは難しいところです。基本的な考え方としては、「眠いときは眠っていたほうがいい」と言えます。一方、この【2333】の方がご自分でお考えになっているように、

1日中寝ているのはだめだという気持ちがあって、週3,4日アルバイトをして外に出るようにしています。アルバイトといえども仕事という意識があるので、アルバイトにはなんとか通えていて、行ってしまえば仕事もできています。

という過ごし方も一理あります。このようにするうちに、回復の兆しが実感できることもあるでしょう。
いずれにせよ、

現在診ていただいている病院の先生の説明では、楽しめる時は楽しんだほうがいいとのこと、

これはその通りですので、今は、

現在の眠気や億劫感も仕方がないことで、現段階では大学の勉強が最低限できていればいい

という気持ちで、決してご自分を責めることなく治療を続けることをお勧めします。

(2012.12.5.)


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る