精神科Q&A

【2327】てんかんの発作は止まっていますが、人間関係のトラブルに悩んでいます


Q: 20代女性です。先生の本を読み、このホームページを見つけました。私は、子供のころからてんかんの病気を持っており、中学生までは頻繁に薬を変えて、今飲んでいる薬にたどり着きました。(デパケンRとかいうやつです。)中学までは、しょっちゅう学校で倒れていたのですが、高校から大学時代までは全く発作らしきものは起こらず、そのため一人暮らしもしていました。そのため、発作が起こらないので、安心していたせいか、薬を飲み忘れることがたびたびありました。そうすると、ある時突然発作が起こり、救急車で運ばれて入院するということが2回ほど起こりました。それからは、反省して薬を飲み忘れることもなくなったため、今までも発作らしきものは起こらなくなり、仕事も普通にしています。医者にも、「脳波の異常はないから、もう大丈夫だね。でも一応用心のために、薬は飲み続けよう。」という感じで言われています。

しかし、気になることがあります。私は、会社で人間関係のトラブルがあり、それ以来仕事に集中できなくなってしまいました。これくらいなら、誰でもあることなのかもしれないのですが、私はなぜか最近、「仕事中に声をかけても返事をしない。手は動いているのに…。」とよく言われます。でも、私自身、そんな自覚は全くありません。寝たりしているわけでもないので…。しかし、このようなことを言われて怖くなってしまいました。確かに、自分自身でも仕事をしながらへんだなーと思う時が何回かあります。例えば、会社の中で、何かしようと思ってどこかに行くのですが、「あれ?私、何でこんな所にいるんだろう…。」と、会社の中で迷子になることもよくあります。物忘れも激しくて、人の名前もすぐ忘れてしまうので、嫌がられています。大事なものをどこに置いたのかわからないということが会社の中だけではなく、家にいてもよくあります。正直、集中できないので(周りに人がいるとこわい。目の前に、かなり昔にあった出来事がふーっと浮かんできたりする。)、仕事にもならなくて、ただ会社に行っているだけという感じで周りの人を困らせている感じがして申し訳なくてたまりません…。しかも、トラブルがあった人をずっと恨んでいて、殺してやると思って刃物を持っていたりすることもあるので、そんな自分にふと気づくことがあり非常に怖いです。なんとかしたいのですが、自分でもどうすればいいのかわからないのです。長くなってしまい申し訳ありませんが、これってただの性格でしょうか?それとも、てんかんとも関係があるのですか?今の医者に行っても、「会社に行っているんだから、何も問題はない。」と言われてしまいます。そういうもんなのでしょうか?


林: 
これってただの性格でしょうか?それとも、てんかんとも関係があるのですか?

てんかんの発作が起きている可能性は高いと思います。

私はなぜか最近、「仕事中に声をかけても返事をしない。手は動いているのに…。」とよく言われます。でも、私自身、そんな自覚は全くありません。

例えば、会社の中で、何かしようと思ってどこかに行くのですが、「あれ?私、何でこんな所にいるんだろう…。」と、会社の中で迷子になることもよくあります。

目の前に、かなり昔にあった出来事がふーっと浮かんできたりする。


これらは、てんかん発作である可能性は濃厚ですし、質問文に書かれているその他の症状も、すべてがてんかん発作によるものかもしれません。

てんかんの診断の決め手となるのは脳波ですが、通常の脳波検査に異常が認められなくても、だからといっててんかん発作が完全におさまっているとは言えません。通常の脳波検査は30分程度ですから、その時間内には脳波に発作波(異常)が出ないということはあり得るからです。
この【2327】に書かれている症状は、一つ一つを取り出してみれば、必ずしもてんかんによるとは言えません。けれどもこの方が過去に確実にてんかん発作があり、治療中であることと考えあわせれば、てんかん発作が起きていると考えるのが合理的です。ですから、

今の医者に行っても、「会社に行っているんだから、何も問題はない。」と言われてしまいます。

という、この医師の判断は大いに疑問です。

今の症状がてんかん発作であることを確実に診断するためには、入院して半日あるいは一日を通しての脳波検査をするという方法があります。けれどもこの方法が行なわれるのはてんかんの専門病院に限られているというのが現状です。そうなりますと現実的には、今の症状がてんかん発作であると仮定し、いま飲んでおられる抗てんかん薬を増やすか他の薬にかえることで、症状がおさまるかどうかを確かめるのが対応法ということになります。今の主治医の先生が、この症状はてんかんではないと言い張るのであれば、別の医師におかかりになることをお勧めします。

(2012.12.5.)


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