精神科Q&A

【2303】アルツハイマー型認知症の妄想について


Q: 80歳になる母のことで質問いたします。2年ほど前からもの忘れのひどさが目立ち始めたため、一年前に神経内科のSPECT検査を受け「アルツハイマーでしょう」という診断でアリセプト5mgを飲み始めました。一人暮らしのため薬を飲み忘れることも多いのですが、物忘れや見当識がだんだん悪くなっています。 現在一番困っていることは、「(30年程前に亡くなっている)実母が自分の家に遊びに来ては何処かへいなくなってしまう」という妄想です。母の話によると「祖母(私にとって)はほかの女の人を連れてきたり女の子を連れていたり養母といたりで、その人たちの食事を用意しなくてはならない」ということで、毎日大量にごはんを炊いては捨てています。一度は「帰ってこない」ということで近所の交番に「探してほしい」と頼みに行き、警察から私の方へ事実確認の電話が来ました。母はその後「交番になんか行っていない」と言っていますが・・・。母は小学生のころ、父親を病気で亡くし、その後親戚の家へ養女にきました。そんな生い立ちが歳を取って病気になった今「母親がどこかへ行って帰ってこない」という妄想につながるのかなあとも考えます。   質問ですが認知症によるであろうこのような妄想を軽くする薬はありますか?また、なにか他に治療法はあるのでしょうか?


林: 認知症の中心症状はもの忘れなど認知機能の低下ですが、それに伴う二次症状は多数あり、BPSD (Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれています。むしろこのBPSDのほうが悩ましい場合も多々あります。妄想も通常BPSD一つとみなされる症状です。【1224】もその例ですのでご参照ください。

認知症によるであろうこのような妄想を軽くする薬はありますか?

あります。抗精神病薬を使うのが普通です。但し高齢者では副作用が強く出てしまう場合が多いので、少量から慎重に投与することになります。効果は十二分に期待できます。

(2012.9.5.)


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