精神科Q&A

【2252】双極性障害の娘が、「解決は死ぬことだけ」と言っている


Q: 双極性障害(躁うつ病)、うつ状態が続き、ひたすら自殺したいと訴える娘について、アドヴァイスお願いできませんでしょうか。本当に治らないうつ病なのでしょうか。 28歳、今まで受験、就職、結婚、すべて順風満帆だった娘が半年前、突然躁状態になりました。双極性障害T型と診断されましたが、妊娠初期のため、安全といわれるジブレキサのみ一日20mg投薬され、仕事を休み、自宅で休養しました。薬が順調に減り、良くなったように思ったころ(今から2ヶ月前です)、突然うつ状態に変わりました。本人は鬱の原因は、出勤してみたら躁の時の失敗が取り返しのつかないものになっていたことを実感したと申します。その後状態は悪くなる一方でした。何度も自殺を口にするため、精神科医の紹介で有名な病院に緊急入院、現在に至ります。入院直後に自殺を試み、拘束状態となりました。電気けいれん療法を4週間試みましたが、一時少し上向きになったものの、再び落ち込み、現在は入院当初より、時間が経過しても治らないということで、ひたすら死にたいと言います。通電後はジブレキサ20mgに加えリスパダールという薬が加わりました。頓服と睡眠薬も飲んでおります。リスパダールは少しずつふやしていくそうです。又、今後は抗うつ剤の投与も考えていると医者に言われています。リチウムは出産後まで使用しないようです。自殺したい理由は、この鬱状態は決して治るはずなく、自分はもう元の精神状態には絶対に戻れない確信がある、子育てもできない、夫にも昔の気持ちを持つことができない、仕事も大きな穴をあけ、取り戻すことは不可能、解決は死ぬことだけ、と言います。特に仕事に対する責任放棄が辛いようです。医者は微小妄想と診断しておられます。これから胎児の影響と躁転に気をつけながら様々な薬を試みてくださるそうです。本人は、2ヶ月以上、投薬も電気けいれん療法も気分に改善がないことから絶対に治らないという確信を持つに至っているようです。一方、もし万一気分が改善していけば、少しずつ、穴をあけた仕事に誠意をもって対処する気持ちだけはあるようです。自信のなさから中絶を希望する娘に対し、夫は出産を希望しており、そのようになりました。出産後は双方の親が面倒をみる約束です。先生のHPその他のネットや本でも、双極性障害では最初の発病は一度寛解すると元の精神状態に戻り、その後は投薬などによる再発防止が大切、と沢山の情報があります。今は一度はきれいに治るという情報のみが私のよりどころです。主治医のおっしゃる通り、治療が長くかかるのは覚悟しておりますが、毎日死ぬことのみ話題にしている娘が不憫でなりません。寛解まで非常に長くかかる鬱もあるのでしょうか。苦痛を訴え続ける娘に対して、面会に行った家族はどうしたらよいのでしょうか。頑張れ、とは決して言わないようにしております。2ヶ月続くうつはまだ短いのでは、と励ますのが精いっぱいです。発病前に娘は、頭脳明晰は周囲の折り紙つきで、周囲に気を配ることもできる信頼されている人間でした。目標を持った時の集中力は少し異常なほどだった記憶はあります。又、私の弟は24歳の時、双極性障害の鬱状態と思われる時に自殺しております。 どうかよろしくお願い申し上げます。

林: まず、診断は躁うつ病(双極性障害)で間違いないでしょう。

自殺したい理由は、この鬱状態は決して治るはずなく、自分はもう元の精神状態には絶対に戻れない確信がある、子育てもできない、夫にも昔の気持ちを持つことができない、仕事も大きな穴をあけ、取り戻すことは不可能、解決は死ぬことだけ、と言います。

とのことですが、これは躁うつ病のうつ状態(うつ病相)や、うつ病に特有の思考です。ということはすなわち、治療すればこうした病的な思考は消えていきます。家族である質問者が、

本当に治らないうつ病なのでしょうか。

というような気持ちに傾くことは、病的な思考に取り込まれているということにほかならず、本人にとってもマイナスになります。

毎日死ぬことのみ話題にしている娘が不憫でなりません。

というお気持ちになることは十分に理解できますが、ご家族が不安にかられていると、それがご本人にも伝わるものです。

双極性障害では最初の発病は一度寛解すると元の精神状態に戻り、

そうです、それは事実ですから、気を確かに持って、ご本人の回復の支えになってあげてください。

(2012.6.5.)

その後の経過(2012.7.5.)


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