精神科Q&A

【2249】うつ病の義母の訴えが甘えに思えてならない


Q: 私は30代の女性です。日中は会社勤めをしております。 同じ敷地内でひとり暮らしをしている主人の母(70才代)がうつ病になりました。この義母への対応について相談をさせてください。 義母は、約3か月前から便秘、食欲不振が始まり本人の希望で検査をしましたが異常はありませんでした。かかりつけの内科から整腸剤や下剤を処方していただき、様子をみたのですが症状は改善せず、便が出ない日とゆるくなりすぎた日は精神的にとても不安定になりました。 同じ時期から、不眠、気力の衰え、寂しがる、体重減少(2ヶ月に7kg減)も見られたため、心療内科を受診したところ「老人性うつ」と診断されました。 現在の処方薬は、以下のとおりです。マイスリー錠5mg 寝る前レンドルミンD錠0.25mg 寝る前リフレックス錠15mg 寝る前ツムラ麻子仁丸エキス顆粒 夕コロネル細粒83.3% 朝、昼、夕 しばらくして便通は改善しましたが、不眠はなかなか治らず、内服薬の調整をしていただき現在は上記の処方内容でしばらくたっています。
今回ご相談させていただきたいのは、家族としてどのように対応したら良いのかということです。 排泄、食欲、睡眠等の症状は波はあるものの少しずつ良くなっているのですが、精神的な症状(発する言葉等)は少しずつ悪くなっており、家族が振り回されている状態なのです。 行動範囲がせまくなったものの、日中は洗濯物を干したり庭の草取りや近所にでかけたりしていますが、夜になると不眠に対する不安からか、「眠れない、辛い、殺してくれ」と、2時、3時頃に私達の寝室に入ってきて訴えたこともあります。その都度優しく接しましたが、家族中が寝不足になってしまうので主人の他のきょうだいも交代で泊まったりしています。 時々、昼間でも寂しくて仕方ないとか死んだほうが楽だとか訴えて、仕事を休まざるをえない時もあります。 主治医に、うつ病の人への対応の仕方を相談した折に、励ましたり正論でお説教をしても本人を苦しめるだけだと言われ、「そうだよね、つらいよね。」というスタイルで聞くようにアドバイスを受けたのですが、こちらの日常生活にまで影響がきてしまい、困らせるためにわざと言っているのかと思える程です。 また、入院の必要をきいたところ、入院したければしても良い、という程度のレベルだそうです。先日は「何にも出来なくてみんなに迷惑をかけるから入院する」というので、「じゃあ先生に相談しよう」といったところ、「嫌だなあ」と黙ってしまい本当に治したいのか疑問に思えてきました。主治医からディサービスも勧められましたが、これは違う世界の人間が行くところという言い方をし、かなり偏見を持っています。 うつ病で精神的に辛いのは確かでしょうが、最近では甘えすぎではないかと思えてきました。うつの症状と甘えているだけというのはどこか違う点があるのですか。とても似ている気がして対応の仕方がわかりません。 他のきょうだいも協力はしてくれますが、ほとんどの時を私と主人がみています。 義母は、こちらが何をしている時でも自分の辛さを訴えますので、ひどいときは家事をしている私につきっきりで脇に張り付くようにして話しかけてきます。家族で食卓を囲んでいても話題の中心は「なんでこんなに辛いのだろう」ということばかりです。相手の状況には関係ないですので、子供達も我慢を強いています。「ちょっと待ってて。あとで聞くから」ということを言うと、すぐに「自分は邪魔だ、迷惑をかけている」と受け取ってしまい、死ぬ方向に話がいってしまいます。言ったことや言われたことも、とてもよく覚えています。 我慢をしながら対応している自分に気づきましたが、本当に自殺をされては困りますので言葉は選んでしまいます。 こんな状況がいつまで続くのかわかりませんし、このままではこちらも具合が悪くなりそうです。 背景も違うので、ひとりひとり対応の仕方は異なると思いますがアドバイスを頂けましたら幸いです。


林: うつ病でも周囲に依存的になるケースはあり、その場合は、

うつの症状と甘えているだけというのはどこか違う点があるのですか。

という疑問がご家族から発せられるのは理解できるところです。
 ひとつのポイントは、この方が元々はどういう性格の方であったかということです。元々が依存的でないのに、ある時期から依存的になり、同じ頃からうつの症状が出ているとすれば、うつ病の一症状という判断に傾くことになります。
 とはいえ、「元々が依存的」とは曖昧な言い方で、どの程度を依存的というのか、なかなか難しい場合もありますので、決め手にはなりえません。

ただ、このメールの中ではっきりと指摘できるのは、

先日は「何にも出来なくてみんなに迷惑をかけるから入院する」というので、「じゃあ先生に相談しよう」といったところ、「嫌だなあ」と黙ってしまい

ご本人のこの反応で、質問者はこれに対し、

本当に治したいのか疑問に思えてきました。

と感じておられますが、うつ病では判断力の低下、特に決断力が低下することが非常によくありますので、これはその表れとみることが十分可能です。決断力の低下が、受診や入院への躊躇という形に表れることは実際のうつ病の方ではごく普通に見られることです。

このことを含め、この【2249】の描写からは、どちらかというとうつ病の可能性が高いように読み取れます。現在とるべき方法としては、入院が最善でしょう。診断を確定することが入院の目的の一つでもあります。また、

 こんな状況がいつまで続くのかわかりませんし、このままではこちらも具合が悪くなりそうです。

という状況では、家庭が治療に適切な環境とはなりにくいことも、入院が勧められる理由です。(これは決して質問者の姿勢を批判しているのではなく、ご家族が対応に疲弊するのはありがちなことで、その場合は入院という選択肢が適切になります)
 さらに、この年齢でうつ病の症状が出てきたケースは、認知症の始まりという可能性も考えなければなりません。入院し診断を確定というのは、認知症か否かの診断という意味も含んでいます。入院治療を選択すべきです。

(2012.5.5.)


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