精神科Q&A

【2227】統合失調症と診断され十年間薬を飲みました。でも私は解離だったのではないでしょうか。


Q: 私は40代女性です。私は統合失調症と診断され、十年間薬を飲み、今は普通に働き生活していますが、もしかしたら統合失調症ではなく解離ではなかったのかと疑問がわいてきましたので、よろしくお願いします。私が生まれたのは、躾の厳しい家でした。父親による体罰は過酷を極め、その泣き叫ぶ私の様子を、母はテープレコーダーに吹き込み、後で再生しては笑っていました。勉強はかなり出来、体育以外は、よい点をとっていました。ピアノも習っていました。でも幼稚園では友達が少なかったです。柔軟性もありませんでした。八歳のとき、祖父と母が死にました。悲しくはありませんでした。私は人体に興味があったので、本物の骨が見られると、喜んでいました。その母のお葬式の日に、母が立ってこちらを見ているのを見ました。それからは、父と姉と私の生活になりました。父の体罰は相変わらずで、「出て行け」と言われると、何日も家に入れてもらえませんでした。「馬鹿、死ね、早く死ね、キチガイ、出て行け。」父の発した言葉の多数です。大概は、近所の同級生の親が気がついて、父をなだめてくれました。家には虫のわいたお米があればまだマシのほうで、食べ物は、近くの山の草をとってきて、煮たりして食べていました。父はよく「俺の言っている事は正しいんだけれど、世間体があるから、皆そうは言わないんだ。」「近所の人間が悪口を言っている」と叫んでは、家の中で暴れ、ガラスを割り、食器を割っていました。そのころから、私は何もやる気を失いました。理数系と芸術科目の成績だけはトップでしたが、あとは散々でした。着替えもせず、お風呂にも入らなくなりました。着替えるにも、着替えの服がありませんでした。不潔なので苛めに遭いました。毎日のように、自殺を考え、想像していました。私が「幽霊が見える」と言うのを父が聞きつけ、親戚の家に連れて行き『ムー』を貰ってきました。そのころから超常現象に興味を持ち、「人類は、おごり高ぶり穢れている。やがて大異変が来て、ほとんどが滅んでしまうだろう」と思うようになりました。高校を出ても、家に籠っていました。働いても長続きしませんでした。家にいるストレスは膨大で、私の考えていることが、まるで風船のように広がり、その中にいる人全てに知られているような体験をしました。時には、自分の年は覚えているのに、十年ほどの記憶が全く無いという状態にもなりました。ある日、私のストレスも限界に達し、初めて父に反撃しました。父は嫁いだ姉に連絡を取り、私が家を出ること、精神科に行くことで、収まりました。精神科に行って、「私は正常で、父がおかしいと言うことを証明してくれ」と言ったら、先生は、「あなたの父親がおかしい。あなたは大丈夫です」とおっしゃいました。でも、私が幽霊が見えるというと、「あなたもおかしいのかもしれませんね」と、セレネースとアキネトンを処方されました。セレネースを飲むと、肌が黄色くなるし、精神科へ行くのも面倒くさかったので、行くのをやめてしまいました。一人暮らしをし、働いても、考え方がおかしかったため、先輩たちに苛められ、長続きはしませんでした。姉は、また一人籠っている私を、今度は別の精神科へ連れて行きました。診察室で先生に「なぜ働かないんだ」と、散々怒られました。私は一言も発しませんでした。先生は姉に「重いうつ病。入院するなら紹介します」とおっしゃったそうです。そして、リスパダールとアキネトンを処方されました。精神科に行く度に「働け」と言われました。私はそれが辛くて、姉が持ってきた求人広告に載っていた警備会社に電話を入れました。当時は警備会社は精神障害者は働けなかったのと事前に健康診断があるという事で、ドキドキしていたら、すんなりと入れてしまいました。その警備会社で今まで十年続いています。精神科で先生に「私の病気は何ですか?」と聞いたら、「神経症でよいでしょう」と言われていたのですが、32条から自立支援に変わる際、診断書が見えてしまったのですが、統合失調症と書かれていました。私が先生に「私は統合失調症なんですか?」と尋ねたら、「統合失調症とまではいかないかな?昔でいうところの非定型精神病。今で言えば統合失調感情障害かな」と言われました。 今の処方は、リスパダール4mg、ルジオミール20mg、デパス1.5mg、頓服でデパス1mg、ハルシオン0.25mgです。通院は、二週間に一度です。 実際、今の処方で生活が送れるようになっているので、病名は何でもよいような気がしますが、解離だったら、薬なしでもいけるのではないかと思いまして、相談させていただいたしだいです。 よろしくお願いします。


林: 統合失調症は、他の病気と同様、早期に発見し早期に治療を始めることが重要です。けれども、発症早期の時点では診断が難しいこともしばしばあります。そして、もし統合失調症という診断が誤診だった場合、ご本人には、不要な薬を飲み続けることになるなどの不利益が発生します。これは統合失調症の早期発見・早期介入に宿命的に伴う問題で、偽陽性問題として【2007】【2072】などでご説明した通りです。

この【2227】の質問者は

統合失調症と診断され十年間薬を飲みました。でも私は解離だったのではないでしょうか。

という疑問を持っておられ、これはまさに偽陽性問題にかかわる事項です。
 質問者が育った家庭は健全な環境であったとは到底いえません。このような環境は解離の症状やパーソナリティ障害に関連する可能性は大きいといえます。けれどもこの【2227】では、お父様に統合失調症の疑いありといえますので、話は複雑になります。親が統合失調症であれば、子に統合失調症が発症する確率は一般より高いといえるからです。

こうしたことを背景として、【2227】の内容をみてみますと、解離を思わせる症状と、統合失調症を思わせる症状がいずれも認められることがわかります。
たとえば
自分の年は覚えているのに、十年ほどの記憶が全く無いという状態にもなりました。

これは解離を思わせるものですし、他方、

私の考えていることが、まるで風船のように広がり、その中にいる人全てに知られているような体験をしました。時には、

これは統合失調症を思わせるものです。(但し、解離の症状と解釈できないこともありません)

そうしますと、このメールに書かれている症状や背景からは、解離・統合失調症のどちらも考えられ、決め手はないと言わざるを得ません。けれども、主治医の先生が統合失調症と診断書に書かれている以上、この診断を尊重すべきだと思います。メールの内容は、いかに正確に書かれていたとしても、主観的に重要と思われる症状だけが抽出されているわけですから、質問者の全体像を反映しているとは限らず、したがってこれらの症状を把握し、かつ客観的にも診察している主治医の先生の診断が正しいとみるのが合理的だからです。
なお、仮に診断が解離であったとしても、これだけの症状がある以上、薬が不要とはいえません。

したがって、

通院は、二週間に一度です。 実際、今の処方で生活が送れるようになっているので、病名は何でもよいような気がしますが、

これに対する回答は、質問者自身がおっしゃる通りで、病名にはあまりこだわる必要はありません、というものになります。
また、

解離だったら、薬なしでもいけるのではないかと思いまして、

それもその通りなのですが、仮に解離だとしても、現在の状態には薬が必要だと思います。将来においては薬をやめることができるという期待は持っていいでしょう。

(2012.4.5.)


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