精神科Q&A

【2216】友人から支離滅裂な内容の手紙やメールが来るようになった


Q: 私の友人A子(30歳の女性)の症状について、相談があります。 
一年半前ごろから、A子からA子の友達(私と共通の知り合いである学生時代のサークルの同級生、および下級生)に急に手紙やEメールが届くようになったそうです。その手紙の内容は支離滅裂で、最初のうちは月に一度だったものが、頻度が増え、最終的には1日に3通届いたそうです。また、それと同時期に、A子は真夜中に友達に電話して「カラスが頭の上を飛んでいて眠れない」と訴えてきたこともあったそうです。さすがに、手紙を頻繁に送られた友人Bは少々迷惑に感じた(Bの奥様が手紙のせいで精神的に参ってきた)ことと、A子のことが心配になり、A子の実家に電話をしてA子のお母さんにこういった手紙が頻繁に届いていること、ひょっとしたら、A子は精神的に不安定になっているんじゃないかと心配していること、また、彼女のためにも病院につれていった方がいいのではないかということを話しました。お母さんは、うつ病であったりということではないと思う(認めたくない様子であったそうですが)が、とにかく迷惑をかけて大変申しわけないと話されたそうです。その電話の後、お母さんはBから電話があったこと、A子にそういった行動を止めるように話したようで、A子からBに「母に電話するなんて最低だ」と電話してきたきり、Bやそれ以外の友人への手紙などは止まったそうです。 
私にはそのとき、一切、そのような支離滅裂な手紙がとどかなかったのと、その友人達とは離れて暮らしていたので、A子にそのようなことがあったということは、あとになって知らされました。 

ところが、最近になって私のところに突然Eメールが送られてきて、その内容は私に「死んでくれたまえ」(ちなみに、A子は普段「〜したまえ」というような言い回しは使いません。)という内容でした。そして、同じ時期、前回手紙の被害にあった友人達にもEメールが送られてきたり、C子には電話をかけてきたりしたそうです。その内容はあまりに酷すぎて、電話で直接A子と話したC子は電話で話を聞きながら、泣いてしまいショックを数日引きずっています。(C子が聞いた話は診断の材料になるかもしれないですが、とにかくC子はショックを受けているため、これ以上蒸し返したりしないほうがいいと思い、詳しい話は聞いてないですし、C子自身も話したがりません。) 

私はこれまで、精神を病む方は自分自身に矛先が向いて、自傷したり、命を絶ったりするものだと思っていたんですが、そうではなくて、矛先が第三者に向いていることに戸惑っています。 

まず、私が気になるのは、なぜ、私に死ねと言ってきたのかということです(友人として今まで上手く付き合ってきたつもりですが、私の気付かないところで彼女を傷つけていたことがあるかもしれないですし、それが元で私を心の中で恨んでいたかもしれません。死んでほしいほど、もしくは殺したいほど憎んでいるかもしれません。)。そして、あたかも自分が何か司令官になったような文体で書かれていることです。何か、恐いものなしの攻撃的な印象を感じるのです。 

私は海外にいて、A子とは簡単に会えないので安全は保たれているのですが、ひょっとして、A子は私の代わりに私の両親(A子の近県に住んでいます)に攻撃性を向けたり(要するに、暴力を振るったり、極端にいえば命をねらったり)するんじゃないかと気になって仕方がありません。 

どう考えても、A子の言動は正気ではないと考えるのですが、今後、彼女が書いてくるメールの攻撃的な面が実際の行動に移ることはありえるでしょうか。もし、ありえるならば、両親や友人の安全の確保を早急にしなくてはなりません。 

また、A子からくるメールや電話の処理をどうしたらよいものか悩んでいます。内容はおいといて、最近またメールを送り始めたのは、彼女の深層で彼女に注目してもらいたい、心配してもらいたいと思っているからではないかと考えたりしてしまいます。なので、ひょっとしてそれらを無視したことで(返事をしなかった。電話を取らなかったなど)、もっと自分に注目してもらおうと、逆上して危険な行動にでないか心配です。また、逆にうかつに返事をして、彼女の症状を悪い方向へ向かわせるのではないかと心配にもなります。 

もちろん、A子を病院に連れていくように家族の方を説得するのが先決でしょうが、前述の通り、そんなに簡単にA子を病院につれていってくれるとも思えません。なので、とりあえず、友人としてご家族を説得する以外のこと、私達の適切な対応の仕方を教えていただきたいと思います。 

以下、A子からのメールの引用です。

↓私宛に届いたメールです 

『○○!頼むから死んでくれたまえ!もう二度と会いたくはない!』 
(注:○○には私の名前が入ります) 

↓私の夫宛に届いたメールです(私と私の夫とA子は、学生時代のサークル仲間で 
す) 
<省略・・・林の判断による>


林: A子さんは統合失調症を発症されたのだと思います。このように、昔の知り合いに対して、意味不明の連絡を突然するということは、統合失調症を発症した場合に時おり見られることで、たとえば【2195】が似たケースといえます。
(この【2216】では、A子さんからの支離滅裂なメールの文面が、統合失調症という診断を強く裏づけています。が、メールは私信であり、A子さん自身から承諾がない以上、サイトに掲載することはできませんので削除いたしました)

 統合失調症は病気ですから、

A子を病院に連れていくように家族の方を説得するのが先決でしょうが、

その通りで、A子さんに病院を受診していただく以外に方法はありません。

このような場合、質問者のように、メールなどで連絡を受けた方は、

まず、私が気になるのは、なぜ、私に死ねと言ってきたのかということです(友人として今まで上手く付き合ってきたつもりですが、私の気付かないところで彼女を傷つけていたことがあるかもしれないですし、それが元で私を心の中で恨んでいたかもしれません。死んでほしいほど、もしくは殺したいほど憎んでいるかもしれません。)。

というふうに考えがちですが、妄想の発生について、このように心理的にあれこれ推定することには現実にはほとんど意味はありません。心理的な解釈というものは、しようと思えばいくらでもできるものですが、いかなる心理的解釈も結局はそれが正しいとも正しくないともいえず、そもそも妄想の対応には何の役にも立たないからです。

最近またメールを送り始めたのは、彼女の深層で彼女に注目してもらいたい、心配してもらいたいと思っているからではないかと考えたりしてしまいます。

この解釈についても同様で、彼女の深層心理は、もしかすると質問者の推定の通りかもしれませんが、やはりこれも正しいとも正しくないともいえず、そもそも現実の役に立たない解釈です。

どう考えても、A子の言動は正気ではないと考えるのですが、今後、彼女が書いてくるメールの攻撃的な面が実際の行動に移ることはありえるでしょうか。

そういうことはあり得ます。率としては低いですが、あり得るということは否定できません。
そして、対策としては、A子さんに治療を受けていただく以外にありません。


(2012.3.5.)


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