精神科Q&A

【2205】入院して良くなった妄想性障害の母が、薬をやめたら元に戻ってしまいました(【2094】のその後‏)


Q: 【2094】妄想性障害の母を医療保護入院させました で相談させていただきました40代会社員です。母はその後、精神病院へ医療保護入院をしてから、無事に退院できました。 今日は、さらにその後のお話として、またご相談させていただきます。 
母が退院したのは半年前です。それからはエビリファイ一日12ミリグラムを投与され平穏無事な生活を送り、家族も安堵していました。 しかし、通院していた医師(入院時から担当していた医師です)が、「お母さんは大変安定しているので、2か月毎の通院でいいでしょう」というお話をしたところから、おかしくなります。 母は、「大変安定しているなら、投薬の必要性はない」と勝手に解釈し、医師からそう言われた翌日から断薬をしてしまい、結局、それから1ヶ月とたたないうちに元の妄想性障害の症状が復活してしまいました。 一緒に暮らしていた父も、母が非常に穏やかであったために、断薬に気がつかず、その間に温泉旅行等に行っても症状がなかったので、気がつかなかったそうです。 以前は、隣家への妄想から父への嫉妬妄想が出て、医療保護入院をさせることになったのですが、今度は退院後、様子を見るために毎日電話をしていた息子の私へ妄想が出てしまいました。医療保護入院をさせたのも、お前のせいだと言い出すようになり、私との接触を極端に避けるようになりました。このままではいけないと思い、実家にいる母を無理やり病院へ連れてゆこうとしたのですが、激しい抵抗を受けて、結果的に殴り合いの状態になり、見かねた父が、もうやめてくれと、間に入り、連れてゆくことに失敗をしてしまいました。 林先生が言うように、母の妄想性障害には、医療を受ける必要があると認識しているのですが、通院で安易に2か月で大丈夫という楽観的なインプットを母にしてしまった、担当医師に対する不信があります。父は、もうお互いに長くない夫婦最後の時間を、精神病院の行ったり来たりに費やしてしまうことを、躊躇しているように見えます。 林先生の「サイコバブル社会」の中の「障害個性論」で書いてありましたが、母の様子を見ていると「自分は精神病ではない」「自分は精神障害ではない」という障害を受け入れられない状態に見え、やっていることは、妄想性障害ではないということを証明するために、薬を断つことに挑戦し、その度に調子を崩しているようにも見えます。 早く入院による治療を受けさせることの必要性ありという強い認識が私にはあるのですが、妄想性障害の妄想のターゲットに私がなってしまったことで、打つ手が限られてしまいました。つい先日も夜中に窓を開けて、隣家の悪口を1時間近く叫んでいたという苦情が、地元の保健所に入り、私の元に病院に連れてゆくように電話がありました。 その保健所の職員に、現在の状況を説明し支援してもらうことにしました。今は、地元の保健所の職員の支援を得て、母と父の元を訪問してもらい、様子を見てもらうようにしています。 保健所の職員からも入院の説得を続けていますが、妄想性障害で病識がないため、同意を得ることは困難だという連絡をもらっています。 病院も家族相談室へ相談をしていますが、病院に連れてきてもらわない限りは治療が出来ませんと。当然ですが、そう言われています。 折角、入院をして穏やかな生活を取り戻したかに見えましたが、結局、薬なしの状況に戻ってしましました。今の母の病状は以前に医療保護入院をした時ほどひどい状況ではありませんが、妄想がまた父に向かう危険も避けられず、予断を許しません。 保健所や病院の家族相談室と連携を取りながら、介入の機会を探っていますが、以前、強制的に医療保護入院をさせたために、母と私が絆が切れてしまった状況に家族として辛い状況です。妄想性障害のために、正常な判断が出来ていないと分かってはいても、母と息子の絆が切れてしまっている状況に、父は心を砕いているようです。 でも、泣き言は言っていられません、いざというときは民間救急等の支援も得ながら、入院治療へつなげられるように、諦めず、粘り強く、見守りを続けてゆきたいと思います。 家族だからこそ、病院に連れて医療を受けさせるのだと、思って頑張っています。 このホームページの情報や、林先生の「統合失調症 家族を支えた事例集」には、勇気をもらっています。 これからも、相談いたします。有難うございました。


林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。
治療を受けてせっかく症状がよくなったのに、薬を中断したために再発し、ご本人も周囲も大変に苦しい状態になってしまった。こういうケースは非常にたくさん存在します。今回ご報告いただいたことで、多くの読者の方々に、薬物療法継続の必要性を実感として知っていただくことができたことに感謝申し上げます。
質問者に対しては、「一日も早く治療の再開を」という平凡な回答しかできず申し訳ありませんが、薬物療法を再開すればまた症状が良くなることは確実ですので、ぜひ再受診へのご努力を続けてください。そしてまた良くなられたというご報告をお待ちしております。


(2012.3.5.)


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