精神科Q&A

【2202】夫に続いて私もうつ病と診断されましたが・・・‏


Q: 40代女性です。看護師として働き、19年、その間に結婚、出産し3人子どもがおります。 主人はもともと、少し体調が悪い時には欠勤することが多かったのですが、私はというと、仕事を休むことは絶対許されない(子どもの頃からそのように育てられたことや、仕事内容がチームナーシングのため他の人に迷惑がかかることから)、という考えがあり、よほどのことがない限り、仕事を休んだことはありませんでした。 一年前、主人が心療内科でうつ病と診断され、休職するということを告げられました。もともと私のほうが収入が多く、主人にも傷病手当が出るとのことでそんなに大きく心配はしていませんでした。むしろ、今まで激務が続いていたので、ゆっくり休んでほしいという気持ちや、主人をこのような状況に追いやった会社に怒りを感じたりしていました。 一年間、主人も家では穏やかで、子どもたちと、同居している私の母も、主人が家にいることについて何も聞かずに時が流れました。私は、どう話したら良いかわからなかったこと、うつ病について悪いイメージをもたれるのが嫌だったことなどから話すことができませんでした。
私の仕事は、もともと常に忙しく(ICU勤務)、3交代であることもあり、疲労感や不規則な生活はもう何年も日常的なものでした。「仕事に行きたくないな〜」と家で嘆くこともしばしば・・ですが休んだことはありませんでした。でも、主人が家にいるようになってからは、そのような言葉、ちょっとした愚痴もなかなか言えずにいました。 自分ではそんなに強いストレスを感じていなかったつもりなのですがここ3週間、夜勤のみという勤務が続き、休憩時間もろくにとれない時期が続いていました。過去飲んだこともないドリンク剤などに頼り、仕事をしていました。徐々に主人に対しても、「いつまで休むつもりなんだろう」「経済的にやっていけるのだろうか」「家族はいつも家でごろごろしている主人をどう感じているんだろう」「どうして私ばかり働かなくてはいけないのだろう」などと感じることが多くなっていきました。

そしてある日、仕事にどうしても行きたくなくなってしまったのです。どんなに行きたくなくても、19年もの間必ず出勤していたのに、初めて嘘をついて休みました。(嘘・・ではなかったのですが、出勤しようと思えばきっと出勤できる程度の動悸・吐き気がありました)今までなら出勤している程度の体の不調です。 そして、心療内科を受診し、「うつ病」と診断されました。夫婦でうつ病、ということがショックでしたし、自分がうつ病と言われたこともショックでした。常に気分が落ち込むわけではなく、仕事出来ないかな・・と考える日もたくさんあります。趣味についても興味がなくなることはなく、趣味に関しては億劫がらずに外出も遠出もできます。これって、ずる休みではないかと、不安になりますが、現実的に仕事のことを考えると、動悸がしたり、涙が出てきたりします。 仕事を休んでいるのに、趣味を楽しむということにとても罪悪感があります。主人はそれも治療の一環だと言ってくれますが。ふたり、このまま働けなかったらどうなるのかと、とてもとても不安になります。 長くなりましたが、質問は、@私は本当にうつ病なのかということ、A仕事を休むほどの病気なのかということ、B休んでいて良くなるのかということ、C休みながら趣味(スポーツ観戦)を楽しんでいていいのかということ・・などです。どうかご教示お願い致します。


林: 夫がうつ病と診断されて休職、それに続いて妻がうつ病になった。このような展開を取った類似のケースとして、擬態うつ病 / 新型うつ病 実例からみる対応法 のcase 8 「仕事をしない夫に苦悩する妻」があります。このcase8は、解説に「擬態うつ病の連鎖」と題した通りで、夫は「甘えの擬態うつ病」、妻は「適応障害」で、したがって妻も広い意味では擬態うつ病でした。
ではこの【2202】はどうでしょうか。
まず、夫に関しては、うつ病か擬態うつ病かはわかりません。症状の具体的な記載がほとんど何もないからです。
妻に関しては、「休職している夫を見ているうちに、気分が落ち込んできた」という表面的な経緯だけに着目すれば、適応障害ということになります。
適応障害の中には、甘えの範疇に入るものから、うつ病と同等の対応を要するものまで様々な段階のものが含まれています。
また、擬態うつ病 / 新型うつ病 実例からみる対応法 のcase 17のように、当初は適応障害のように見えても、実はうつ病だったということもあります。
この【2202】の妻(質問者)は、経過と症状からみて、
うつ病と同等の対応を要する適応障害
または
うつ病
と思われます。
したがって、ご質問への回答は以下のようになります:

@ 私は本当にうつ病なのかということ、
わかりません

A 仕事を休むほどの病気なのかということ
休養を取る必要がある状態ではあると思います。

B休んでいて良くなるのかということ
わかりません。
うつ病であれば、薬を飲みつつ休むというのが治療の基本です。
適応障害では、うつ病と同等の治療が必要なケースもあれば、むしろ逆に休まずに頑張ったほうがいいケースもあります。この【2202】では休養が必要であるとまでは言えますが、休養と薬だけではたして良くなるかどうかは、診断名がわからない以上、わかりません。

C休みながら趣味(スポーツ観戦)を楽しんでいていいのか
「いけない」と言うだけの根拠はありません。
楽しむことが、回復を促進する方向に作用することも十分にあり得ます。

(2012.2.5.)


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