精神科Q&A

【2197】子どもの私に筆舌につくしがたい暴力を振るった統合失調症の継母


Q: 私は28才、男です。 
私が6才から15才まで同居していた継母(当時40代)の行動について 先生に質問したくメールさせていただきます。 
長文になってしまい申し訳ございませんがよろしくお願い致します。 

■ 前置き 
私にとって彼女は世界で一番嫌いな人物です。 同居していたころ私は彼女から肉体的にも精神的にも筆舌につくしがたい壮絶な暴力を受け続けました。 

彼女に最後に会ったのは2年ほど前で唐突に借金の申し込みに押しかけてきました。 
そのときの彼女は素人目に見ても精神的に明らかにおかしくなっていました。 
私はいわゆる老人ボケ(アルツハイマー?)かなと思っていましたが、林先生のHPを見ると統合失調症のようです。 (このとき私は彼女に100%返ってこないであろう30万円を貸しました。 このことには後悔も自身の気持ちの矛盾もないのですがうまく説明できません。) 

その後何度か彼女から追加の借金の申し込みがありましたがそのうち連絡がなくなりました。 現在の彼女の病状や生死は不明ですしそのことにまったく興味はありません。 

■ 本題 
さてここからが本題です。 
2年前には完全に統合失調症になっていた彼女ですが 実は私と同居していた20年くらい前から その兆候があったのではないかという疑念がわいてきました。 
今思い出すといくつかおかしな発言がありました。 以下箇条書きで挙げます。 

・私(当時小3〜4)が彼女(当時40代)のパンティを触ったと因縁を付け私に対して尋常でない暴力をふるい自白を強要しました。完全な拷問でした。 
(このときの暴力は児童虐待というレベルでなく刑法上"殺人未遂"といえるものだったと思います。 少なくとも私は死を覚悟していました) 
もちろん私には一切見に覚えがありませんが最後には仕方なくそれを認めました。 

当時の彼女は何の理由もなく私に暴力を振るう、 あるいは無理やり何らかの理由を作って暴力を振るうことがありましたが このときの彼女は私がパンティを触ったことをなぜか確信していたみたいです。 

・当時住んでいたマンションでは2年に1回くらい 外装工事などを行っていたのですがそのときよく 
「職人さん(<--差別的な呼び方をしていたと思います)が うちの中の様子を見て笑っていた。見られないようにカーテンを閉めろ」 
「窓の鍵はちゃんと閉めろ。そうしないと職人さんが勝手に入ってくる」 
「実際に職人さんが家に勝手に入ってきて金品を盗んでいった」 
などと言っていました。 
他にも水道工事の方などに対しても似たようなことを言っていました。 

・「隣の家の人が壁に耳を当ててうちでの会話を盗み聞きしている。」 

・「私は小さい子供や動物に非常に好かれる。泣いている赤ちゃんが私の顔を見ると泣き止んでにっこり笑う」 

・「私はもてた。今でももてる。 有名な政治家(<-具体名が出ていました)が私と結婚したがっている」 

最後の2例は統合失調症に典型的という"被害"妄想ではないですし 誇張や嘘をまじえた自慢は誰でもするでしょうが 彼女の場合はなんというか自身の自慢話の内容を確信していました。 つまり肯定的な妄想です。 

ここで挙げた例は15〜20年前の出来事なのですが 最初の事例のような自分にとって強烈な事件以外についても割と具体的に覚えています。 

こんな些細なことをわざわざ覚えているのは 当時小学生だった自分にとっても 話の内容の矛盾、嘘っぽさ、気持ちの悪さなどを感じていたからかなとも思います。 
(彼女が何回も同じ発言を繰り返していたこともその理由でしょうが) 

今となってはどうにもならないですし、もはやどうでもよいことなのですが 彼女はこのとき既に統合失調症の兆候があったのでしょうか? 先生の所見をお聞かせ願えればと存じます。 


林: ご指摘の通り、この方は統合失調症であると思います。


・「私は小さい子供や動物に非常に好かれる。泣いている赤ちゃんが私の顔を見ると泣き止んでにっこり笑う」 

・「私はもてた。今でももてる。 有名な政治家(<-具体名が出ていました)が私と結婚したがっている」 


これらはご指摘のように被害妄想ではないですが、どちらも統合失調症によく見られる色彩のある妄想です。後者は、たとえば【1194】プロ野球選手と恋愛関係にあると言い張る友人【1193】芸能人と恋愛関係にあると言い張る友人 などをご参照ください。

そのほか、このメールに書かれている言動は、すべて統合失調症の症状と判断できます。

私にとって彼女は世界で一番嫌いな人物です。 

と質問者は正直に言っておられますが、質問者が受けた虐待などの被害は、すべて病気の症状ですから、お継母様ご本人の罪とまでは言えないことをご理解いただきたいと思います。・・・というのがある意味模範回答ですが、当時の質問者は6歳から15歳とのこと、この多感な時期に

私は彼女から肉体的にも精神的にも筆舌につくしがたい壮絶な暴力を受け続けました。 

という事実がある以上、「病気だから理解を」という回答は虚しく響くばかりでしょう。

このような実例を目の当たりにする度に、統合失調症という病気の実態を広く知っていただくことの重要性を痛感せざるを得ません。この【2197】の質問者の方には、今からお継母様への嫌悪感を解消していただきたいとまではあえて申しません。しかしその嫌悪感を、統合失調症の人一般にまで拡大しないよう強くお願いしたいと思います。


(2012.2.5.)


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