精神科Q&A

【2173】58歳頃から、様々な単語の意味がわからなくなった母


Q: 現在60歳の母は、58歳頃から、様々な単語の意味がわからない…と言うようになりました。 例えば「えんぴつって何?」「玉子って何?」「年賀状ってどうするものやったっ け…?」等です。
また、母は昔から自営で喫茶店をやっているのですが、こんな状態でも普通に営業しています。(当然 注文についての失敗は増えるばかりです)
後、見た目の変化として、明らかに娘の私が見ても何て言っていいかわかりませんが…目がうつろというか…きょとんっ?とした目というか…。そんな感じなので当然 近所の人や常連のお客さんをはじめ 初対面の人が見ても「なんかちょっとおかしい…?」と思われる程です。
これらすべての症状は母自信もよくわかっていて よく「言葉の意味がわからんわー」
ってつぶやいています。食欲の方ですが、作ってまではいらないが、目の前にあれば食べるという程度で以前から考えたら 全く欲がなくなってしまいました。
買い物などの外出は普通にしますし、笑って会話もしますが ただ言葉の意味がわからない事もあってスムーズにキャッチボールはできません。母は「うん、うん」うなずいているだけです。
言葉の意味がわからなくなるのは、アルツハイマー病とは違う特殊な認知症だと聞いたことがありますので、CTスキャンなど検査したのですが、異常はありませんでした。すると母のこの症状は何なのでしょうか? ストレスなどによる一時的なものなのでしょうか?

      

林: この【2173】のお母様のように、徐々に言葉の意味がわからなくなってくるという症状は、緩徐進行性失語 Slowly Progressive Aphasia と呼ばれる病態で、言語にかかわる脳の部位が徐々に萎縮してくることが原因です。文献もご参照ください。

言葉の意味がわからなくなるのは、アルツハイマー病とは違う特殊な認知症だと聞いたことがあります

その知識は基本的には正しいです。緩徐進行性失語は、前頭側頭型認知症で出やすい症状です。但し、アルツハイマー病でも緩徐進行性失語になることは十分にあり得ることです。

CTスキャンなど検査したのですが、異常はありませんでした。

とのことですが、アルツハイマー病でも前頭側頭型認知症でも、初期にはCTスキャンで認められるほどの脳萎縮はありませんので、CTスキャンが正常だったからといって、認知症でないとはいえません。この段階で行なうべき検査としては SPECT (脳血流の検査) が勧められます。また、失語症などについての神経心理学的検査を行なえば、脳画像(CTやMRIやSPECT)に異常がなくても、認知症の始まりであることが明らかになることもあります。この【2173】のケースは、症状からみて、神経心理学的検査だけでも認知症の確定診断がほぼできると思われます。

(2012.1.5.)


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