精神科Q&A

【2130】統合失調症の息子の不快な眠気


Q: 40代女性です。2ヶ月前に息子(18歳)が統合失調症の疑いありと診断されました。幻覚幻聴の類は認められず、会話も成立することから、一時は誤診ではないかと思っていました。一昨年の秋ころから、人から笑われているような気がする、顔が歪んでいるのではないかと訴えることが複数回あり、ブランドの服、高学歴、端麗な容姿、高身長などにひどくこだわりを持つようになりました。また、ひどく感情的に他者批判をするようになりました。友人はそれなりにいるのですが、高校にうまくなじめず、落ち込みがひどい時は不信感(自分は誰にも好きになってもらえない、気にかけてもらえない)が芽生え、友人たちと距離を置くようになったりと、とても不安定な状態が続きました。大学受験(推薦ではなく)を目指していたのですが、本格的に勉強を始めた昨年春には、根を詰め過ぎたのか(1日10時間はやらないと間に合わないというのが口癖でした。)、眠れない、2〜3時間ですぐ起きてしまうといった状態になりメンタルクリニックを受診しました。その時は、睡眠薬(ユーロジン)を処方してもらい、約2か月通って、リズムが出来たのでやめてしまいました。8カ月前ころから、不安→悲観→絶望→引きこもり(希死念慮)のサイクルが頻繁に出始め、日を追うごとに出現が増えて、とうとう予備校に通うことをやめ、ほとんど引きこもりのような状態になってしまい、大学受験を断念しました。幸い、高校は何とか卒業できました。
現在息子は来年の大学受験を目指し浪人中です。最初のクリニックでは息子があまり先生と意思の疎通を図れなかったことから、今月に入って転院しました。最初のクリニックで処方された薬で副作用がいろいろ出て、本人がとても苦しんでいます。今までにはっきりわかった中では、エビリファイ(量が12rに増えてすぐ、ひどい動悸と不眠)レンドルミン(めまいと吐き気)レキソタン(1日中続く眠気)ルーランは24rに増えてから半月ぐらい経過したころからそわそわ落ち着かない感じがどんどんひどくなり、今は8rを1錠あるいは1.5錠にして様子を見ています。ただ、今までにあった、ひどいこだわりは消えつつあります。好きなように生きればいいんだといった心境に変わりつつあります。これはルーランの効果でしょうか? 睡眠薬は、ユーロジン1rかロヒプノール1rどちらかで調整中です。今息子は突然じわじわと襲ってくる眠気におびえています。眠気に襲われるとひどく不安になり、絶望的になってしまうようです。とにかく「ねむり」に対しに過敏で、眠りに落ちる瞬間が怖い、眠いのに眠れない気がしてが怖いと訴えます。息子が8〜9歳のころ、毎晩布団に入ると「死ぬのが怖い」とおびえて涙ぐんでいました。これは1年近く続いたと記憶しています。その頃特に身近な人の死を経験したとかの特別な出来事無かったと思います。現在の主治医の下でいろいろ薬を調整していますが、この突然やってくるじわじわした不快な眠気はなんなのでしょうか? 私から見ると、逆に、不安や落胆といった負の感情が出現しだすと出てくるような気もするのですが、そのへんは本人もよくわからないみたいです。とにかく今のこの症状がとても辛いらしく、時に自暴自棄にもなります。今後治療していきながらゆっくりとでも受験勉強をしていきたいというのが本人の希望です。何かアドバイスをいただければと思い、投稿しました。よろしくお願いします。


林:
一昨年の秋ころから、人から笑われているような気がする、顔が歪んでいるのではないかと訴えることが複数回あり、ブランドの服、高学歴、端麗な容姿、高身長などにひどくこだわりを持つようになりました。

このころが統合失調症の発症だったと判断できます。
すると治療開始までに一年以上、事実上放置されていたことになりますが、ようやく治療が始められ、

今までにあった、ひどいこだわりは消えつつあります。好きなように生きればいいんだといった心境に変わりつつあります。

とのこと、これは治療薬の効果が現れてきたとみることができます。
そして、

今息子は突然じわじわと襲ってくる眠気におびえています。眠気に襲われるとひどく不安になり、絶望的になってしまうようです。

とのこと、これが副作用であるか、病気の症状であるかは難しいところです。
しかしおそらく確実なのは、

眠気に襲われるとひどく不安になり、絶望的になってしまうようです。

この部分は統合失調症の症状であるということです。

私から見ると、逆に、不安や落胆といった負の感情が出現しだすと出てくるような気もするのですが、

質問者のこの観察は、おそらく正しいと思われますので、眠気そのものも、統合失調症の症状とみるほうが妥当でしょう。けれども、副作用という要因が重なっている可能性も否定できません。

このような場合、ご本人やご家族が陥りやすい誤りは、「眠気さえなければこの強い不安感はなくなるはず。そして、眠気は薬の副作用かもしれない。では薬をやめれば不安感の原因が解消するから、すべて良くなるのではないか」と考え、薬を中断してしまうことです。統合失調症で、せっかく治療を開始したのにもかかわらず、薬を中断したために再発し、悲惨な経過をたどる例は枚挙に暇がなく、統合失調症のQ&Aの中にもそのような実例は多数あります。統合失調症の治療に、薬は必須ですから、決して薬をやめてはいけません。

何かアドバイスをいただければと思い、投稿しました。

薬を続けることです。
しかしこのケースのように、次々と副作用が出る場合、安定までに時間がかかることはしばしばあります。ご本人に合う薬を見つけ、調整することを目的に、入院治療も考えられるケースであるといえます。

(2011.10.5.)


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