精神科Q&A

【2107】うつ病の母の妄想


Q: 母(61歳)がうつ病を発症して7年になります。私は30代女性で結婚して他県に嫁いでおります。7年前はうつ病の症状がひどく、実際に自殺未遂をはかりました。けがの治療を含めて9か月の入院で退院しました。自殺などの願望やひどい抑うつ状態から回復し、その後は家事を父と分担しながら生活しております。ずっと通院して服薬しております。実家で父(66歳)と二人暮らしです。会話はしますが、無口、複雑なことは判断できない、動作が遅い、頭痛を訴えるなどの症状は続いていましたが、毎日父と散歩をしたりと穏やかに過ごしておりました。3ヶ月前に一度高熱で倒れ、それ以降ずっと熱や微熱が続いており調子もあまりよくありません。倒れて以降、急に話し方が丁寧語「です」「ます」になり、おかしいと思っていましたが、一ヶ月前ころ急に不安が強くなると「XXさんが亡くなった」や「泥棒が入った」や「腰の骨が折れた」などの妄想が始まりました。亡くなった人の妄想の際には原因が自分にあると責めたりしているようです。ほかの妄想はありません。また喪服を着て実際に出かけてしまうこともありました。その時には非常に緊張していて力が強く、連れて帰るのに大変でした。また、倒れた際に腰の骨を折ったと信じていて、整形外科で異常なしといわれても折れていると思い込んでいて、整形外科に通いたがります。私は毎月帰省しておりましたが、直近の帰省時には病院に父と一緒に行って経過を細かく報告したりして、妄想の症状が落ち着くまで精神科に入院することになりました。主治医の先生に「統合失調症」になったのではないのかと聞くと、「病名はわからない」と言われ、家族として混乱しております。ただ、主治医の先生(医者になって3年だそうです)にとってはこのような症状が初めてで鬱の薬と妄想を抑える薬を調整をするとのことです。総合病院なので、MRIや髄液などの検査をしてもらいましたが、アルツハイマーや脳炎などの異常はないとのことでした。適切な治療を受ければ、妄想は回復するのでしょうか? 主治医の先生が「軽い妄想なので大丈夫ですよ」ととても軽く受け止めていらっしゃるので、とても心配になります。


林: 
「XXさんが亡くなった」や「泥棒が入った」や「腰の骨が折れた」などの妄想

これらはうつ病の妄想としてはかなり典型的なものです。治療としては、抗うつ薬か抗精神病薬、あるいは両者の併用です。薬の効果が不十分であれば、電気けいれん療法の適応になります。

主治医の先生が「軽い妄想なので大丈夫ですよ」ととても軽く受け止めていらっしゃるので、

主治医が軽く受け止めているのか、家族を安心させるために軽く言っているのか、わかりません。
いずれにせよ、この時点で過剰に心配する必要はありません。うつ病として、よくある症状です。
(したがって、「このような症状は初めて」と、主治医の先生が本当におっしゃったのであれば、精神科医としてはあまりに未熟と言わざるを得ませんが)

ただ一つ気になる点は、

3ヶ月前に一度高熱で倒れ、それ以降ずっと熱や微熱が続いており

という経過で、これは3ヶ月前にうつ病以外の病気が発症し、それがうつ病の症状に重なった可能性があるという見方ができます。それに関しては、

MRIや髄液などの検査をしてもらいましたが、アルツハイマーや脳炎などの異常はないとのことでした。

と書かれていますので、他の病気はなさそうですが、熱が続いているのであれば(「熱や微熱」という表現は意味不明ですが)、うつ病以外の病気が隠れている可能性を考え、慎重に経過を見るべきといえます。

(2011.9.5.)


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