精神科Q&A

【2060】声、妄想、目、涙、頭痛、疲れ、そして過去 


Q: 20歳、女です。お忙しい先生に私の話を書いて良いのかどうか、だいぶ悩みました。でも、精神科Q&Aに書かれているいくつかのメールを読ませていただいて、『書いただけで気分が良くなった』というような事が書かれていて、心打たれ、私も少しでも気分が良くなるのならばと思い、今から私の悩みをここに全て書きたいと思います。 

私の悩みはいくつかあります。『変な声、妄想』『目を開いていられなくなる』『涙が出やすい』『頭痛、喉の違和感、便秘か下痢、疲れやすい』『過去の忘れたい事』。どれも私、真剣に悩んでいます。 

まず、変な声と妄想についてですが、これは【0350】変な声と、あり得ない妄想が、10年近く続いています を書かれた女性と、失礼かもしれませんが似たような事なのでとてもビックリしました。私の場合はいつこのような事が始まったのかあまりよく覚えていません。もう物心付いた時にはこの変な声と妄想がありました。なので小さい時は特別変だとは思っていなかったので誰にも話ませんでしたし、今の今まで、誰にも話した事はありません。変な声というのは、私の場合いつも同じです。「アー、アー」と大勢の人が低い声で言っています。それは男性の声と女性の声が混ざっているようで、寝る前に、毎日ではありませんが聞こえます。初めは遠くの方から。意識すればするほど耳もとでその声は聞こえて、うるさくて、恐くて寝れません。その声が聞こえた時は布団を頭からすっぽりかぶって耳を指でふさいだり抜いたりを出来るだけ早く繰り返して、その声が聞こえないようにしていました。それでもその行動を止めると声は相変わらず聞こえたのですが...小学校中学年にもなると、その声をなるべく無視するようになりました。意識しなければ聞こえないのではと考えたからです。結果は、聞こえなくなるわけではありませんが、声が聞こえる夜は少なくなりました。
変な妄想とは、目を開けたら目の前に見知らぬ人の顔があるのではないか?布団 から手足、顔を出したら何かに引っ張られるのでは無いか?息をしたら何かが体の中に入ってくるのではないか?時には、目をつぶると目の前に自分の家の前が現れ、そこに立っている人が家に放火をする映像が出たり、その人のような無気味なモノが私の方をみて無気味にニンマリと笑ったりとイロイロな事が目の前で繰り広げられ、心配になって夜中に家の周りを見にいったりしたこともありました。そんな時にはなるべく楽しい事を考えてその妄想を消していました。しかし前は寝る前だけだったのに、最近では気が付いたら変な妄想をしています。つまりどこでも、どんな時でも、気を抜くとなにかを想像というべきか妄想というべきか、とにかくその世界に入り込んで現実に起こっている事、聞いていたはずの人の話、全てが曖昧にしか又は全く覚えていない事があります。そして相手を傷つけてしまう事もあります。でも、自分で意識して妄想する事を止めようとしても、どうやって止めようか、頭に板をはめ込み情報伝達を止めればよいかなど、その時点からすでに何か変な事を妄想したりと、もうどうしてよいか分かりません。 

次に、私の目について書かせてください。といっても私の両目は幸運にも1.0以上。時には2.0と診断されたことがある、全く問題の無い目です。しかし、デパートなどで釣り道具コーナーやキッチン用品コーナー、他はあまり覚えていませんがこのような場所を見ると、目の間というか目の奥というか、そのへんがキューっと引き締まってしまい、目を開けるのがしばらく困難になります。この状態は寝る前にもよく起こります。何かとがっている物なのか光っている物なのか、この状態になる原因がなんなのかよく分かりませんが、その物体を想像してしまうだけで目のあたりがキューっとなって、それだけでは足りず、両手で目を覆ったり、それでも足りない時は目をグリグリ押してます。でも、そうしないとどうにも頭が痛くなって、おまけに寝れません。よく聞く『先端恐怖症』というものかとも思いましたが、鉛筆の先を見ても包丁の先を見ても特に何も起こりません。ただ、それをする事を想像してしまうと、もうそれだけで目が開けられなくなる事があります。これは一体、何なのでしょうか?

また、私は最近、涙に悩まされています。泣く事が悪い事だとは思いませんが、私は本当にちょっとした事で泣いてしまいます。泣きたくないのに。少しでも『悲しい』『イヤ』などと思うだけで頭が痛くなり涙が止まらなくなり、話も出来なくなります。何か話さなくてはいけない時でも何も考えられなくなり、落ち着くまではただ泣くことしか出来なくなります。それは、怒られたり注意された時はもちろん、自分の課題の発表をしてる最中でも、授業中に先生に質問され分からなかったり間違えたりするだけで、まるで小学生のように涙が止まらなくなります。しかし決して泣きたい訳ではなく、自分でも感情を押さえているつもりでも我慢ができなくなってしまいます。周りには頭痛が原因で涙が止まらなくなると言っていますが、本当に頭痛のせいなのか、分かりません.それが原因で半年前に通っていた語学学校を中退しました。実は私は1年半前からフランスに語学留学をしていて来年からこちらの大学に通うことになりました。ですからもう同じような事で失敗したくありません。でも、どうしても自分が何をすれば泣かないで言いたい事が言えるのか、分からないんです。こちらの日本人のお医者様にも見ていただき、CTスキャンで頭に異常がないかも調べていただき、又、血液検査もしていただきましたが結局悪い所は何も見つかりませんでした。

頭痛の他にも喉に違和感があり話をするにも食べるにも息をするにも困難なことが最近では毎日起きています.そして下痢や便秘が続き、体がとにかく疲れやすくなり、少し動くだけで息切れし、そして、人の話を理解した気になり間違えた情報を覚えてしまったりと、なんだか自分でも信じられないような事がここ最近起こり始めました。それとも前々から起こっていた事で最近気付き始めた事なのか...そう考えると自分は元々変なのか、このままの状態で残りの人生も過ごしていくのか、不安になります。 

最後に、私が寝れなくなる1番多い悩みを書きます。それは私の忘れたい過去を思い出してしまった時です。その内容を全部書くととても長くなるので一部だけ書く事にしますが、内容は高校生の時に所属していた吹奏楽部での事が主です。先輩に気を使い、後輩に気を使い、同級生にまで気を使い、何もしない先輩部長に白い目で見られながらも無名な吹奏楽部の影で一生懸命に働いて、有名になった土台を作るきっかけを作ったつもりです。ただ上手になりたかったから行動しただけで、褒めて欲しかったとか、そういう物では無かったつもりですが、そのように感じるかもしれませんね。私も今では「褒めて欲しい」というか「認めて欲しい」といつの間にか思うようになっていました。今この文章を書いていてそう思いました。とにかく私の頑張りとは裏腹に、練習中に漫画本読みに熱中したり、お喋りで盛り上がったりといった行動を毎日のように繰り返し、先生の足音が聞こえると共にあたかも練習に励んでいたかのような、そんな友達の幼稚な行動が私は気に入らず、その行動を真似する後輩が出始めた事に焦りを感じ、責任を感じ、注意をしても一時しか治まらないその状況に苛立ち、夏休みに入り毎日部活のみの日々が続き、それがストレスとなり、いつしか夜中に寝れなくなり、インターネットチャットでストレスを発散させていたと言うべきでしょうか.そんな状態で元々朝起きるのが苦手なのに、寝不足で部活への数分の遅刻を繰り返し、信用を失い、夏の大会の後に先輩が引退し、私は部長になったものの仲間何名かに反対され、新幹部会議とでも言うんでしょうか。そこでは沢山侮辱をうけ、私は前にも書いたように泣き、何も発言できず、考えられず、結局部長を辞退。あれだけ頑張って働いたのに。遅刻は許されなくて、練習中に漫画本を読み、お喋りにふけり、それで1日すごしてる彼らが偉そうにイロイロと私の事を言うのがどうしても納得いかなかった。そのことをその時に言いたかった.おまけに前の彼が入部し、みんなにからかわれ、後輩には笑われ、違う付き合っていた彼はイタズラで告白メールを送っただけだった事を知り、ショックを受け、学校の授業では先生の授業のしかたに納得が行かず、特定の生徒へのヒイキも納得が行かず、いつしか学校に行かなくなり、その事で両親は怒り、母は授業料返せだのと金の事ばかり。その後家出をし、結局見つかって家に連れ戻され、最後の吹奏楽部夏の大会では当たり前のように良い演奏は出来ず、大会での結果は前年よりも悪く、オマケに出席日数足らずで高校の卒業も危うく、看護受験なんて到底無理で、未来に希望をなくし、死に急いでいた。そんな過去は私が寝る寸前に目の前に現れ、私をまた泣かせ、頭痛を引き起こします。そしてその時に事件が起こらなければ、私が遅刻をしなければ、私は今頃日本で音楽、特にクラシックを愛し、何も迷わず看護学校に行き、看護婦になる事を夢見て勉強に励んでいただろうという後悔の思いでいっぱいになります。その出来事でその後の私の人生が狂いました。そして今、その出来事を忘れて(忘れたつもりと言った方が正確でしょう。)フランスで勉強をしています。その出来事から最近まで、私はまともにブラス、クラシック音楽を聴く事を避けて来ました。なぜならば、涙が止まらなくなるから、辛くなるから.今では心の支えになってくれる大切な人のおかげでまた音楽が好きになり、フルートを演奏する事さえ最近では可能になりました。でもやはり寝る前になるとどうしても辛くなる事があります。たった今もその事を思い出しベッドからはい出て来たところです。私は早くその出来事がただの思い出としてたまに思い出し苦笑いをするだけですむようにしたいです。 

長い文章になってしまいました.すみません。これでも短く書く事を心掛けたつもりです.他の方が書いていらしたように少しスッキリした気がします.自分が今までに気付かなかった事までいくつか気付く事が出来ました。ありがとうございました。 


林:
もう物心付いた時にはこの変な声と妄想がありました。なので小さい時は特別変だとは思っていなかったので誰にも話ませんでしたし、今の今まで、誰にも話した事はありません。

このように、かなり以前から幻聴(や妄想のような考え)があり、しかしそれは誰にでもあることだと思っていたので誰にも話さなかった、という経過は、解離性障害の特徴の一つです。

変な声というのは、私の場合いつも同じです。「アー、アー」と大勢の人が低い声で言っています。

これは統合失調症らしい幻聴とはいえません。解離の症状とみるほうが妥当です。

変な妄想とは、目を開けたら目の前に見知らぬ人の顔があるのではないか?布団 から手足、顔を出したら何かに引っ張られるのでは無いか?息をしたら何かが体の中に入ってくるのではないか?時には、目をつぶると目の前に自分の家の前が現れ、そこに立っている人が家に放火をする映像が出たり、その人のような無気味なモノが私の方をみて無気味にニンマリと笑ったりとイロイロな事が目の前で繰り広げられ、・・・

これは幻視とまではいえませんが、かなり生き生きとした視覚的イメージで、解離に特徴的な症状です。

しかし、デパートなどで釣り道具コーナーやキッチン用品コーナー、他はあまり覚えていませんがこのような場所を見ると、目の間というか目の奥というか、そのへんがキューっと引き締まってしまい、目を開けるのがしばらく困難になります。

これは何ともいえませんが、他の症状とあわせると、解離の症状として説明するのが妥当と考えられ、すると、ご自分では意識していない部分で何かどうしても見たくない物があり(それを見ると、思い出したくないものを思い出しそうになる)、その心理状態が目の症状として現れたとみることも可能です。これは解離と密接に関連した転換と呼ばれる症状にあたります。いずれもかつてはヒステリーという用語で呼ばれていたものです。

この【2060】のそのほかの症状も、解離に関連したものと考えるのが妥当でしょう。

また、

私が寝れなくなる1番多い悩みを書きます。それは私の忘れたい過去を思い出してしまった時です。その内容を全部書くととても長くなるので一部だけ書く事にしますが、内容は高校生の時に所属していた吹奏楽部での事が主です。

この「忘れたい過去」をめぐる一連のことは、PTSDとまではいえないものの、PTSDに類似した心理メカニズムがあると判断できます。
質問者の幻聴や妄想のような考えは、「物心ついたときから」あったわけですから、この高校自体の出来事が原因ということはあり得ません。が、関連はあるといえます。

すなわち、解離性障害には素因というものがあるのと同様に、PTSDに類似した症状を呈しやすい素因というものもあります。おそらくこれら素因には共通したものがあって、この【2060】のケースは、その素因を基礎として、両方の症状が現れていると考えられます。


◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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