精神科Q&A

【2035】高校を休みがち、遅刻しがちになってきた。部活も辞めた。


Q: 17歳(高校3年生)の女の子です。小さいときから、自分は人と違うのではないかという特別意識みたいなものがあって、それを肯定する自分と、自意識過剰だと否定する自分がいます。昔は、自分だけが人間で、他の人は全員宇宙人か何かで自分のことを試しているんだとか考えていたこともあります。今はそうは思っていませんが、必要以上に自分の存在はなんなのかと考え込んでしまい、少し非難されたり迷惑をかけたりするだけで死にたいと思ったり、急に落ち込んだりしてしまいます。それが今、自分は病気かもしれないという考えにつながってしまっています。先ほど書いたように、特別意識を肯定する自分と否定する自分がいます。これは、ひどく気分が落ち込むときと普通のときの差です。今は普通のときです。こういうときは、病気だなんて馬鹿馬鹿しいとか、自分は人より頑張ってないただの怠け者だから病気になんかなる資格はないんだとか、そういう風に考えます。擬態うつ病には絶対になりたくないし、病気になるほどのストレスや何かがあるわけではないので、特別意識を否定します。ひどく落ち込むときは、親にほんの少し小言を言われたときとか、学校で誰かが笑っているのを聞いたりするときです。2人ぐらいの人がくすくす笑っているのを聞くと、自分が笑われているのだとなぜか思い込んでしまい、トイレにこもって、落ち着くまで冷静なときの自分がなだめます。次の授業をそのままさぼってしまうこともよくあります。それから、人より必要な睡眠時間がやけに多いような気がします。少し前まで部活をやっていて、朝5時に起き、夜10時に帰る生活を続けていました。他のみんなは、少し眠そうだったけど、授業は頑張って起きていたし、遅刻をする人もあまりいませんでした。家に帰ってからもちゃんとやるべきこと(宿題とかお風呂とか)はやっているようでした。私だけが、家に帰るとつかれきっていてやることが山積みなのにひとつも手をつけられなくて学校で宿題を出さなくて怒られたり、朝寝坊しても、遅刻は絶対に許されないからと3分ぐらいでお風呂に入ってむりやり間に合わせたりしていました。あるとき、寝坊して、いきなり何もかもどうでもよくなって、仮病をつかって遅刻しました。朝の練習に遅刻しただけで、学校には遅刻しませんでした。だんだん遅刻の回数は増えて、ある日とうとう学校にも遅刻してしまいました。それが高校2年生の3学期の初めぐらいのことです。それからというもの、学校自体の遅刻がどんどん増え、部活はつらくて4月ぐらいから全く行かなくなりました。そして最近、部活をやめました。そのことでみんなが私の悪口を言っているような気もします。遅刻は減っていません。1週間に2、3回は遅刻します。ときどき休むこともあります。授業をさぼることも2日に1回ぐらいです。実は、このことは親にばれていません。遅刻をする時間に家を出ても、親には「間に合うよ」と言っているし、休むときも、間に合う時間に出ているのにわざわざどこかで時間をつぶします。先生と親と生徒で行う面談などでばれるのがとても怖いです。遅刻するときは、その前の日に11時以降に寝るときです。遅刻しない朝起きる時間は6時半です。9時か10時ぐらいに寝ないと、6時半に起きるのは難しいです。部活をやっていたときいかに無理をしていたかがわかります。遅刻のときはだいたい寝不足なので(といっても7時間くらいは寝ています)授業のほとんどで寝てしまいます。部活をやっていたときは、遅刻じゃなくても授業はほぼ毎時間寝ていました。また、おきていても、遅刻をしたこととよく眠れなかったことでいつもより気分が落ち込んでしまって、授業に集中できず絵や文を書いたり爪や皮をむいて時間をつぶしています。完璧主義っぽいところもすごくあります。ちいさいころから、ちょっとでもうまくいかないことがあると泣いたりあきらめたり今までどんなに頑張って積み上げてきたことも崩れてしまった感じになります。それで部活もやめてしまいました。遅刻の日に落ち込むのもそのせいでもあります。今は普通ですが、1時間後には落ち込んでいるかもしれません。落ち込むと、うまく説明できないのですが漠然と将来が不安になったり死にたいと思ったり、世界中の悪いことは全部自分のせいだとか考えてしまいます。アームカットをすることもあります。でも深くは切りません。痛いことが怖い気持ちと跡が残ることを心配する気持ちがあり、冷静なときの自分がそれは馬鹿っぽいと言うからです。この辺が、なんだか擬態うつ病みたいで嫌です。おかしくみられたいみたいな感じです。落ち込んでいるときは、何もしないで泣いたり、ノートに今の気持ちを書いてみたり、枕に口をつけて叫んだりします。昔は感情がもっと激しくて(冷静なときの自分が出てきて抑えるようになったのは最近のことなので)物をよく壊していました。親と話すと、よく小言とか非難(といっても普通に勉強しなさいとかそのぐらいのことです)を言われるので感情が高ぶってしまい、すぐ泣いてしまってセーブできません。涙を止めるために手の甲をかんだりしますが親に気持ち悪いからやめなさいといわれてからはしていません。何が言いたいのかよくわからなくなってしまいました。冷静なときの自分は、深い思考力に欠けているような気がします。なので文章がまとまりません、すいません。わたしはどこかおかしいのでしょうか。ただ甘えているだけでしょうか。病気だといわれてもそんなはずはないと思ってしまいそうです。でも病気であってほしいと思ってしまう自分もいます。若いひとにはよくあることなのかもしれないし、よくわかりません。いろんな精神的な病気を調べてみましたが、どれもしっくりきません。専門家の方に「あなたは病気ではない」とはっきり言ってもらえれば、何か変わるかもしれないような気がします。長くなってしまってすみません。もしよろしければ、回答をいただきたいです。


林:
2人ぐらいの人がくすくす笑っているのを聞くと、自分が笑われているのだとなぜか思い込んでしまい、

これは被害妄想的な過敏さですので、統合失調症のごく初期または前駆症状に見られるものです。けれども、これだけを根拠に統合失調症のごく初期または前駆症状であるということはできません。そこで他の症状に目を向けてみますと、

そして最近、部活をやめました。そのことでみんなが私の悪口を言っているような気もします。

これは、定義上は生活レベルの低下ですので、被害妄想的な過敏さとあわせると、統合失調症のごく初期または前駆症状の疑いは強まってきます。
さらにいえば、

昔は、自分だけが人間で、他の人は全員宇宙人か何かで自分のことを試しているんだとか考えていたこともあります。

これを超自然的・神秘的思考とみるという解釈も不可能ではありません。
 けれども、子どもの頃にこのような考え方に一時的にとらわれる、または、一時的でなくても漠然と考え続けることは、健康な人でも十分あり得ることですし、そもそも子どもの頃の思考傾向を大人になってからの診断の根拠に取り入れることには無理があります。

ここまで、症状の項目だけを取り上げれば、
被害妄想的な過敏さ
生活レベルの低下
超自然的・神秘的思考

が認められるといえないこともありませんが、この【2035】のケースは、統合失調症のごく初期または前駆症状の疑いはあまりないと思います。
 その理由は、これら三つの項目が、この【2035】のケースでは、あるといえばいえないこともないという程度のレベルにとどまっていることが一つです。もう一つは、こちらのほうが重要ですが、全体像として、統合失調症のごく初期または前駆症状らしくないということです。
 アームカットやムードスイングが見られること、そして、症状の訴え方(文章からの判断です)からは、【2035】はむしろパーソナリティ障害の傾向があると感じられます。
 しかしそれも「傾向があると感じられる」というレベルにとどまりますので、パーソナリティ障害の疑いが強いと言う事もできかねます。
そうしますと、

専門家の方に「あなたは病気ではない」とはっきり言ってもらえれば、何か変わるかもしれないような気がします。

という、ご本人の考え方も一理あるところです。結果的に何の病気でもないかもしれないのですから、病気ではないかとあれこれ悩むよりも、「病気ではない」と明快に結論づけて、自信を持って生きていくほうが、ご本人のためであるといえるかもしれません。

しかしその場合、今度は、偽陽性ではなく偽陰性(病気でないと考えていたが、実際は病気だった)のおそれが発生します。
これはきりがない議論になってしまいますが、少なくともこの【2035】のケースのメール内容からは、病気であるともないともいえないというのが回答になります。



◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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