精神科Q&A

【2017】おならで悩んで中学3年からひきこもっている


Q: 私は現在33歳で、2年程前から統合失調症を患っております。 
 実は、中学3年から不登校になってしまいまして、原因は、おならなのですが。緊張するとおならが出る症状に、小学生の頃から悩んでいました。中学2年生までは、何とかその症状とも付き合い続けていけたのですが、中学3年生になると、周りにも知れ渡り、笑われるようになりました。そして、そのまま、高校へ進学せずに家に引きこもりがちになるようになりました。  
中学を卒業してしばらくは、おならの症状は少し安定してきたのですが、すると精神面に変化が出てき始めました。私の家は小学校の前なので、よく子供の笑い声などが聞こえてくるのですが、だんだんとそれが私のことを笑っているような気がしてきて、自分のおならのことで笑っているんだ、などと思うようになって、押入れに隠れたり、一日中布団をかぶっていたりしました。「精神科へ通いたい」とも思ったのですが、病院の待合室も怖くて行けず、結局何年間は妄想に取り付かれ、辛い日々を過ごしてきました。 その後、少しずつ外へ出られるようになってき始めてから、図書館などでメンタル本などを読み漁り、いろいろ知識を得るようになってから、疑問が出てきました。私は確かにおならの症状で悩んでいましたが、社会生活は普通に送れていました。でも、それすら出来なくなって引きこもるようになったのには何が原因だったのだろうか?という疑問です。社会不安障害という病気でも、おならを気にする症状というのがあるようなのですが、こちらのサイトで、引きこもりの原因に統合失調症が隠れていることもあると知ってから、もしかして、中学時代に統合失調症に罹っていたのかな?と思うことがあります。そして、統合失調症はうつることはあるのか?というのを知りたいです。 私の兄も統合失調症なのですが、親は私からうつったと思っているようなのです。もしそうなら、取り返しはつかないと思うのですが。


林: 
こちらのサイトで、引きこもりの原因に統合失調症が隠れていることもあると知ってから、もしかして、中学時代に統合失調症に罹っていたのかな?と思うことがあります。

「中学時代に統合失調症に罹っていた」とまでは言えませんが、当時、統合失調症の前駆症状が出ていたか、ごく初期であったとは言えるでしょう。その一つは、

緊張するとおならが出る症状に、小学生の頃から悩んでいました。

この症状です。
このように、自分の臭いが、また、時には外見が、周りの人に迷惑をかけていると確信するという症状は、統合失調症の前駆症状として少なからずあります。これは広い意味では自我障害に属するもので、自分の内界と外界の境界が崩れてきていることの兆しとみることができます。
 おそらくこの【2017】の質問者の方は、当時、おならが出ていたことは事実だから、それ自体は妄想でもないし、統合失調症とは関係ない、と主張されると思います(【0498】実際におならが出ていても自己臭症ですかの方のように)。もちろんそれが絶対に事実でないとは言い切れませんが、少なくとも過剰に気にしていたことは間違いないと思います。統合失調症の前駆期や初期にこのような症状を呈する例としては、【1285】【2016】などがあります。
そして、

中学2年生までは、何とかその症状とも付き合い続けていけたのですが、中学3年生になると、周りにも知れ渡り、笑われるようになりました。

このように、それまでの症状に関連した、被害妄想的な過敏さが出てくるのは、統合失調症の発症の典型的な経過です。【2002】のケースは、臭いではなく、「自分が髪を抜いているところが見られて笑われている」ですが、本質的には同様の症状といえます。そしてこのような経過は、表面的に見れば、
臭いを気にする → それが知られて笑われている
という因果関係があるように見えますが、実際には、「自分のことが知られて笑われている」という症状は、必ずしも臭いを気にすることから発生したとは限らず、「笑われている」だからその原因は臭いに違いない、というような考えに至った可能性もあります。【2007】でも説明したとおりです。
さらに、このような被害妄想的な過敏さの結果として、

そして、そのまま、高校へ進学せずに家に引きこもりがちになるようになりました。  

このように引きこもり = 生活レベル低下 が見られるようになることで、統合失調症という診断の確度は増すことになります。
その後の経過を見ますと、

中学を卒業してしばらくは、おならの症状は少し安定してきたのですが、すると精神面に変化が出てき始めました。私の家は小学校の前なので、よく子供の笑い声などが聞こえてくるのですが、だんだんとそれが私のことを笑っているような気がしてきて、自分のおならのことで笑っているんだ、などと思うようになって、押入れに隠れたり、一日中布団をかぶっていたりしました。

このようにさらに進んでいますから、

「精神科へ通いたい」とも思ったのですが、

とお考えになった時点で、精神科を受診することが望まれるところでした。
この【2017】の質問者には今さらそれを申し上げても仕方ないかもしれませんが、統合失調症はこのような経過で発症することがあるということを読者に再認識していただくことは大いに意義があるかと思います。

統合失調症はうつることはあるのか?というのを知りたいです。

うつることはあり得ません。

私の兄も統合失調症なのですが、親は私からうつったと思っているようなのです。

そうではなく、遺伝的な素因があるということです。【2007】の回答にもご紹介した通り、遺伝的素因があることは、生活レベル低下と合わせ、統合失調症の前駆状態を疑う根拠になります。

もしそうなら、取り返しはつかないと思うのですが。

なぜ「取り返しがつかない」と思われるのか、その根拠が不明ですし、そもそもそのように思われる根拠は存在しません。繰り返しますが、統合失調症が人にうつることはありません。また、遺伝的素因があって発症したからといって、取り返しがつかないということはありません。

◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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