精神科Q&A

【2015】いじめで不登校になった息子が、嘲笑や悪口を怖がっている


Q: 中学3年生の息子のことです。1年ほど前より学校でいじめがあり、半年ほど前より登校していません。不登校になった当初「ハッキリ聞きとれないが自分を嘲笑ったり悪口を言うような声がしてとても怖い」と訴えリスパダール1mgを処方されました。その後、登校しないまでも精神状態が良い状態が続き薬も通院もやめてしまいました。イヤなことさえなければ機嫌良く普通に過ごしていましたので少し自宅で勉強をさせようとしたところ、激しくカンシャクを起してしまいました。学校でのイヤなことを思い出し、またいじめられるのではないかという恐怖に耐え切れなかったそうです。また道で学生と行きあった場合などにも同じように強い恐怖を感じると言います。「自分をいじめた生徒ではないから大丈夫」と頭ではわかっていても、いじめられるに違いないとの恐怖をこらえ切れず走って逃げてしまいます。以前より小さな刺激で過剰に反応するようになってしまっているようにも見受けられます。本人はこんな事があるたびに自己嫌悪に陥り「もう治らない」「死にたい」「自分はダメ人間だ」などということを興奮してわめきます。「変な声」は精神状態の悪い時だけ聞こえてくるようで、聞こえてくると「いじめられる」という恐怖を強く感じるそうです。幻聴だということは本人も理解しています。また自分が病気(異常な状態)だという認識も持っております。自己嫌悪・自己否定感は強く抱いておるようですが、突拍子もない被害妄想はありません(いじめの事実は学校の先生・いじめ加害者も認めています)。主治医はハッキリ言いませんが処方された薬より統合失調症を疑っていることは間違いないと思います。私から見ると「いじめのトラウマ」による「学校恐怖」や「うつ」の治療が必要なのではないかと感じます。とりあえず今はリスパダールを飲んでいますが本当にこれで良いのか焦っています。ご意見お聞かせ下さい。


林: 統合失調症の初期だと思います。

不登校になった当初「ハッキリ聞きとれないが自分を嘲笑ったり悪口を言うような声がしてとても怖い」と訴え

被害妄想的な過敏さです。

リスパダール1mgを処方されました。

抗精神病薬であるリスパダールが処方されていることから、この時点で医師もこの訴えを被害妄想(または被害妄想的な過敏さ)であると判断したことがわかります。

その後、登校しないまでも精神状態が良い状態が続き薬も通院もやめてしまいました。

それは実にまずい対応でした。薬を続けていれば、より良い経過が予想されたところです。このように、せっかく治療を始めたのに、少し良くなかったからといって治療を中断した結果、統合失調症が悪化するのは、残念ながらとてもよくあることです。

「変な声」は精神状態の悪い時だけ聞こえてくるようで、聞こえてくると「いじめられる」という恐怖を強く感じるそうです。幻聴だということは本人も理解しています。また自分が病気(異常な状態)だという認識も持っております。自己嫌悪・自己否定感は強く抱いておるようですが、突拍子もない被害妄想はありません(いじめの事実は学校の先生・いじめ加害者も認めています)。

この文章から、質問者に、息子さんの精神症状を軽いものであると信じたいという強い願望があることが読み取れます。その願望をお持ちになることは理解できますが、願望は願望であって事実ではありません。事実を受け入れなければ、息子さんの今後の経過はとても暗いものになります。
なお、いじめが事実であることは、息子さんが統合失調症でないと判断する根拠にはなりません。【2009】でも説明した通りです。

主治医はハッキリ言いませんが処方された薬より統合失調症を疑っていることは間違いないと思います。

その通りです。

私から見ると「いじめのトラウマ」による「学校恐怖」や「うつ」の治療が必要なのではないかと感じます。

その治療が不要とはいいませんが、何より必要なのは統合失調症の治療です。願望は願望にすぎないことを認識し、事実を受け入れてください。親である質問者が事実を受け入れなければ、息子さんの今後の経過に光はありません。そのような実例は精神科Q&Aの中にもたくさんありますのでご確認ください。


◇ ◇ ◇

【2000】から【2078】までの回答は一連の流れになっています。【2000】、【2001】、・・・【2078】の順にお読みください。


(2011.6.5.)


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