精神科Q&A

【1993】56歳、管理職をしておりますが、若い頃に統合失調症を発症し、あまり悪化せずに慢性的に推移しているのではないでしょうか


Q: 自分の症状、状況が統合失調症によるものではないかということと、このままの状態で安定しているのか、ということをお聞きしたく、メールいたしました。56歳男性。大学卒業と同時に就職したメーカーを30年勤めあげ、現在関係子会社に退職出向。管理職(監査役)です。世間一般に言う完了の出世コースからは脱落?していますが、そういうコースには適応できないと自覚して、以下に述べる精神的不安定さの件をのぞいて特に不満もなく現在の職務に就いています。なお、いちおう職務は平均以上の評価を得てこなせています。開発途上国海外勤務時(47歳)にマラリアに罹患、現地入院治療で回復後、一時帰国しましたが、原因不明の微熱と体力消耗が1ヶ月以上続き国内で入院治療。その際に抑鬱状態に陥り、寛解退院後、会社が契約している精神科医の診療を受け、一日3回ドグマチール50mgデパス0.5mgの処方を受けて、平安状態を保ちました。その後、同精神科医から勧められて微熱で入院した医療機関で薬を処方してもらうこととなりました。しかし、疲れやすいこと、好きなこと(趣味関係)に興味が持てず、集中力の低下が自分ではっきりわかり、情けなく思う状態が続いています。薬の量としては最低限だから、継続服用していても特に問題はない、そのうち飲むのを忘れるようになって必要なくなることもある、と聞かされ、たしかに何度かそのような状態に近づいたこともありましたが、なぜかわけもなく不安焦燥状態に陥ることがあって、そのたびに服用を再開して平衡状態を保ち、現在に至っています。現在の服用はドグマチール50mgデパス0.5mg朝晩2回ですが、ほんのたまにですが必要に応じてデパスを服用することもあります。

以下、参考になりそうな因子を羅列します。
もともと、内向的な性格で酒煙草もたしなまず、ギャンブルその他いわゆる大人の遊びに関することにも興味なく、人付き合いもうまくありませんが、職務上のつきあいその他はそれなりにこなしていると思いますし、周りの評価も悪くはないようです。ただ、よく見られるような親愛の情とか腹を割ったつきあいの状況には、こちらが望まないこともあるのでしょうが、縁がありません。小中学生の頃のことは、余りよく覚えていません。勉強ができる部類に入っていたこと、少々変わり者であったと思われていたこと、ある種の虐めに遭った記憶があること、悪夢にうなされたこと、不安感が強かったこと等は記憶にありますが、おかしなことに、級友の名前や顔をほとんど記憶していません。高校大学時代の記憶となるともっとあやふやになり、就職後、しばらくの間、記憶の欠如と簡単な帳票の正確な計算がどうしてもうまくできなくて、自分の能力がおかしくなったのかと悩んだことがありました。その一方で、当時はじめて導入されたパソコンでシミュレーションプログラムの開発を担当しそれなりの評価を得ていました。なお、プログラミング、電子工作、模型工作は現在の唯一の趣味となっていますが、発病?以前のように没頭しそのことに快感を覚えるような状態には到底なっておらず、ようやっと精神安定剤として身近にその趣味が行える環境を持ち続けているというような状況です。
20歳後半、単独事務所で勤務中に失恋(と言っていいのかどうかわかりません)を経験し、かなりの精神不安定状態になったことを記憶しています。このときの記憶はいままで引きずっていると感じています。また、30歳で見合い結婚後、長時間労働遠距離通勤で肉体的に健康を害し半年間ほど残業免除の配慮をしてもらった経験があります。具体的には夜間の酷い発汗、不眠、極度の体力消耗で、診察を受けた医師からは結核の痕跡を指摘され、数ヶ月間の投薬(なんだったのか覚えておりません)を受けました。その後、転勤し管理職(所長職)となりましたが、やや特殊な職場でストレスと人間不信の傾向を高めざるを得なかったように思います。もちろんもともとの人付き合いが苦手だったことが影響していると思いますが。結局そこでも健康を害し、任期を終えた際にスタッフ職を希望して出向人事となり、なんとか肉体的精神的に安定状態を取り戻した後、開発途上国技術協力赴任(家族同伴)約3年後帰国、胃がん発病、手術、4年後にどうせこの先、命があるかわからないのなら、と再度開発途上国技術協力赴任を希望、そこでのマラリア罹患を境に、冒頭のような状況となった次第です。ただし、このときの勤務では、初めての言語による語学能力の問題もあり思うように現地の環境や職場になじめず、まともな仕事ができなかったことが相当のストレスを生んでいたと思います。

以上のような経緯で、現状に至っているわけですが、振り返ってみて、若い頃から、統合失調症を発症しており、幸いにもその症状が発展せず慢性的な状況で推移していたものが、マラリア罹患をきっかけとして顕在化し、薬品のおかげでそれ以上の悪化を見ないで推移しているという状態なのではないかと思っているところです。問題は、このままでよいのか?これ以上の改善、快活な状態を望めるのか、または望むべきなのか、ということ、そしてそれは可能なのか、ということです。アドバイスを頂ければ幸いです。ちなみに、抑鬱状態が酷いときは、ほんとうに文章を書くことも難しかったのを記憶しています。病院やネットなどでうつ病といわれている人達の情報発信、文章能力を見るにつけ、なぜこの人達は自分がうつ病であるというのに、このように精力的な情報発信ができているんだろうと非常に不思議に感じていたことを、付け加えさせていただきます。以上、支離滅裂な文章で失礼いたしました。この文章の書き方、展開の仕方自体が、病的である証拠なのかも知れない、と書き終えて感じているところです。


林: 質問者が統合失調症である可能性はほぼゼロです。うつ病の可能性はわずかに残りますが、いずれにせよ今の状態では精神科を受診して治療を受ける必要はないと思います。

この文章の書き方、展開の仕方自体が、病的である証拠なのかも知れない、と書き終えて感じているところです。

そんなことはありません。【1954】のように、文章の内容はもちろんですが、文章の展開の仕方だけからも、統合失調症が強く疑われるというケースが確かにあることはありません。ここでいう「展開の仕方」は、なかなか具体的に説明が難しいのですが、「連合弛緩」と呼ばれる、統合失調症にかなり特有な論理のつながりの悪さを指しています。
この【1993】においては、その連合弛緩も見られません。

(2011.5.5.)


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る