精神科Q&A

【1992】統合失調症か否か、息子の診断がわかれている


Q: 息子の異変に気がついたのは 今から2年前の高校3年時です。
「皆に嫌われている」と言いだしました。
黒板に悪口を書かれた。 ネットで書き込みされていると。
息子は、温厚で優しくて昔から息子のまわりにたくさんの友人が集まる性格でしたので嫌われているというのは、おかしいと思いました。

それで近くの心療内科を受診しましたら「幸いお子さんは目を見て話ができますので統合失調症とかの心配はないです。受験の疲れです」との診立てでした。
心配なので精神科クリニックにも行ってみましたがやはり性格の問題で統合失調症という診断はありませんでした。

その後 国立大学に進学しました。
ところが、本人の話では、入学後すぐに意欲がなくなり大学に通わなくなり本人自ら心療内科を受診したようでした。私のほうからの連絡にも全く反応しなくなり心配はしていましたが男の子なのでそれなりにやっていると安心しきっていました。

ところが連絡くるのはお金の催促ばかりで(息子は、まじめでお金使いもきちんとしていて無駄使いをしたことがありませんでした)生活費も十分送金していたのですが度重なるお金の無心は、おかしいと思いました。

それから今年の初めに息子の友人から息子の様子がおかしいから見に来てほしいと連絡を受けて 部屋を尋ねると、部屋には鍵はかかっておらず 荒れ放題(息子は几帳面で昔からきれい好きでした)、ゴミの山の中で寝ていました。水道は止められ、本人は何もかも面倒で出来なかったと言います。

そこで実家に連れ戻し病院にかかりました。
当初は抗うつ薬が処方されこのころは攻撃的でそれからまもなく攻撃性は全くなくなり今度は不安がきつくなり夜も一人で眠れなくなるほどでした。
薬の副作用か、徘徊にムズムズ感 動悸がはげしく部屋中を歩き回る日々でした。(副作用止めも効きませんでした)
通院して半年 症状は通院前よりも悪化するばかりの日々でした。

医師に告げるとそれは薬の影響ではなく病気の症状と言われました。
・・・が自己判断で薬を退薬していきました。
するとまず徘徊やムズムズ感すべてなくなりそうのうち不安感もなくなりました。

息子も私も薬をやめて症状が回復したことで医師の言う統合失調症ではなかったと確信したのですが、それも素人判断です。

医師に告げると薬を少しずつ止めて行きましょうとの話でした。
それで抗うつ剤がまた処方されました。

意欲がなく入浴も面倒な症状がありましたので、他の病院を受診したところ、息子は統合失調症でこのままほっておくと人格荒廃になっていくと言われ 診察の途中で息子は真っ青になり診察室を出てトイレで吐くという始末です。

息子は統合失調症という言葉に恐れを抱いていると思います。それは私も同じ気持ちですが。

息子は 幻聴とか幻覚は全くありません。

2か月まえから週に一度受けているカウンセリングのカウンセラーも「息子さんの嫌われているという気持は高校時代の人間関係からくる感情で普通にある感情であり、妄想ではい 思考の停止も見られないし 私は統合失調症でないと思います」とおっしゃいます。

これから先どのように治療していけばいいのか 薬でまたあのような酷い症状になると思うと憂鬱で仕方ありません。


林: 質問者には息子さんが統合失調症であってほしくないという願望があることは明らかです。また、メールの文章は、言葉の使い方も、文章そのものも脈絡が欠けており(掲載にあたっては適宜修正してあります)、質問者の事実認識が適切になされているとは思えません。

息子さんが統合失調症であってほしくないという質問者の願望は、これまで受診した医師やカウンセラーにも当然感じ取られていると思います。その結果、質問者への説明は、統合失調症でないという方向に傾いていると推定されます。すなわち、高校3年時の

心療内科を受診しましたら「幸いお子さんは目を見て話ができますので統合失調症とかの心配はないです。受験の疲れです」との診立てでした。

この説明をそのまま受け入れることはできません。また、同じ時期の

心配なので精神科クリニックにも行ってみましたがやはり性格の問題で統合失調症という診断はありませんでした。

この説明もそのまま受け入れることはできません。
もっとも、この時点では診断は確定できなかった可能性が高いと思います。その場合医師としては、統合失調症に進展するかどうかを慎重に観察しつつフォローアップするというのが正しい姿勢と考えられます。このとき、ご本人やご家族にどのように説明するかは一概にはいえません。必ず通院していただくためには統合失調症の可能性について十分に説明すべきといえる一方、統合失調症の可能性ありと説明することで逆に通院がなされなくなるということも考えられるからです。この【1992】のケースでは、本人・家族ともに統合失調症であってほしくないという強い願望があることは明らかですので、医師が本当は診断をどう考えているかにかかわらず「統合失調症でない」という説明に傾くことは容易に想像されます。

そして大学に入学してからの生活の異変は、高校時代の被害妄想的な言動とあわせれば、統合失調症の発症である可能性が最も高いです。

当初は抗うつ薬が処方され

とのことですが、

薬の副作用か、徘徊にムズムズ感 動悸がはげしく部屋中を歩き回る日々でした。

これはアカシジアと呼ばれる症状で、抗精神病薬の副作用として現れやすいものです。したがってこの時に処方されていたのは抗うつ薬ではなく抗精神病薬であったと思われます。この時点では統合失調症と診断するのが当然ですから、抗精神病薬が処方されるのもまた当然です。(ただし、抗うつ薬でアカシジアが出現することも皆無ではありません)

その後、薬を減らした結果、

息子も私も薬をやめて症状が回復したことで医師の言う統合失調症ではなかったと確信したのですが、それも素人判断です。

とのことですが、質問者はこのときの症状を薬の副作用であると判断しておきながら(アカシジアに関してはその判断は正しいです)、薬をやめて回復したから統合失調症でなかったと確信したというのは、素人判断という以前に、全く非論理的です。

息子は 幻聴とか幻覚は全くありません。

幻聴等があるかないか、それが質問者にわかるはずがありません。

2か月まえから週に一度受けているカウンセリングのカウンセラーも「息子さんの嫌われているという気持は高校時代の人間関係からくる感情で普通にある感情であり、妄想ではい 思考の停止も見られないし 私は統合失調症でないと思います」とおっしゃいます。

この説明がなされた理由は、
・質問者が統合失調症という診断名を過剰におそれているために、あえて統合失調症でないと言っている
または
・このカウンセラーが無能
のどちらかです。これまでの経過からみて、この【1992】で最も考えられる診断名は統合失調症です。

これから先どのように治療していけばいいのか 薬でまたあのような酷い症状になると思うと憂鬱で仕方ありません。

精神科を受診し、抗精神病薬で治療を受ける以外に方法はありません。
アカシジアに関しては、処方を適切に調整することで避けられるものです。

(2011.5.5.)


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