精神科Q&A

【1968】71歳母の被害妄想がきれいに治った


Q: 71歳になる実母の事です。ある時期を境に突然妄想が激しくなりました。現在は弟夫婦一家、実母、実父と同居しています。もともと母は自由人で社交的、自由のきかない同居に大反対(孫の面倒が嫌)でしたが、結局みんなが押し切り同居になりました。同居して5年、嫁の文句を言いながら平和には暮らしていました。ある日、お嫁さんが実家に帰省中、事故で骨折し、孫と共に1ヶ月戻りませんでした。実父は実母が子供の面倒を見れれば、嫁は帰ってこれるのに・・と言うオーラが出ていました。みんながそんなオーラを出していましたが。それからです! 通帳がなくなった。盗聴器がしかけられてる。ある資産家が大勢雇い、尾行されている。尾行してるのは隣人の○○さんで、顔確認した。そして対向車も後ろの車もすべて追跡車だと。歩いている人も全てです。お嫁さんがいない間のターゲットは実父でした。物忘れの部分を全て父が隠して嫌がらせをしていると言う感じでしたが、お嫁さんが帰ってきてからは、全てお嫁さんのせいになりました。冷蔵庫に買った覚えのないものが入っている。自分の部屋を荒されている。シャンプーの中身を入れ替えている。洋服のボタンがちぎられたり、家具を傷つけられたり(人力でしか出来ないので、自分でやっているのか)と泣き暮らしていました。そして、家の中で、全員がしめしあわせて私を追い出そうとしていると。お父さんにとって私は必要ない人間で、嫁さえいればいいと言ってます。とりあえず、結婚して別居している私たち夫婦にはかなり信頼している様子です。この突然の発症は昨年です。社交面や計算能力、料理のレパートリーなどは変わらないです。むしろ歳の割りにすごいです。そしてこの被害妄想のストレスから、突発性難聴で1週間入院しました。そのときは家族全員、一生懸命努力して母に接しました。特に実父は(嫁の料理はお母さんと違い、くどくて吐きそう)と吐いてみたり、お母さんがいないと洗濯も気はひけて下着が変えられないとか、必死で母の存在意義をアピール。入院中はおだやかで、のんびりできたと本人も満足そうでした。そしていよいよ退院。なぜか退院してから尾行が0になったらしく、なにより嫁の態度が良くなり申し分なくなったと言い出しました。顔色は見違えるように良くなりました。退院して2週間経ちますが、まだいい状態です。間違いなく認知症と思っていますが、一時良くなる事はあるのでしょうか。物忘れは多少ありますが、いまでも計算などすばらしいです。それとも精神疾患なのでしょうか。CTでは異常ありませんでした。アルツハイマーの診断の為にMRIも撮らせる予定です。あと、嫁にやられたといっていた、家具に傷つけ、洋服に針が刺さってる、刺繍をむしりとられているなど、自分でやって他人のせいにする事はあるのでしょうか。(自覚はないと思います)どうぞ教えてください。


林: この方の被害妄想の内容はアルツハイマー病によく見られるものです。71歳という年齢からみても、最初に考えるべき病気はアルツハイマー病ということになります。但し、アルツハイマー病であれば、記憶障害など、他の認知機能障害が存在するはずです。したがって、それらの存在の確認と、MRIなど脳画像検査を行なう必要があります。入院により妄想がほぼ完全に消失したようですが、どのような治療を行なったのでしょうか。ご家族の接し方もプラスには作用しますが、薬なしでこのような妄想をきれいに取り去ることは通常は不可能です。
これらの確認をすることなしに、

間違いなく認知症と思っていますが、

と断定することはできません。他のデータが必要です。すでに入院されているわけですから、検査をしたはずですし、アルツハイマー病などの認知症か、他の精神疾患か、検査所見を把握している主治医の先生の説明に優るものはありません。私に聞くのは間違いです。

(2011.3.5.)


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