精神科Q&A

【1963】精神病と診断された小学1年生の娘


Q: 7歳、小学1年生の娘のことです。私は40歳の母親です。
娘は幼い頃からとてもしっかりした子供でした。 私はフルタイムで仕事をしており、4年生の長男の事でいろいろ悩み 毎日イライラしていました。時には怒鳴ったりする私を娘はいつも気遣ってくれていました。 
 一年生になり、がんばり屋の娘は毎日一生懸命でした。私は人事異動により新しい職場となり、自分自身が精一杯で娘が無理して頑張っていることに気付いてあげられませんでした。それどころか自分が疲れているときにはヒステリックになることもありました。
それから2ヶ月たち、娘は些細なことでよく泣くようになりました。日に日にその泣き方はひどくなり、だんだん暴れるようになりました。学校で無理しているんだろうと話を聞いてみると、「休み時間に遊ぶ約束をしていたのに放って行かれた」「運動場へ遊びに出ようと思ったのに○○君に邪魔されて行けなかった」「○○君はいつも私にだけ蹴ったりしてくる」「宿題のプリントのお直し、△△君はしてないのに先生見つからへんかったこと、私にだけ何回も自慢してくる」という話がよく聞かれました。先生に聞いてみましたが、「私が見る限りでは友達関係も辛そうにはみえませんし、どちらかというと楽しくやり取りしているように見えますけど…」との事。私も、活発で気の強い娘がそんなことで凹むとは思えませんでした。 
夏休みになれば落ち着いてくれるだろうと思う期待も虚しく、その暴れ様はますますひどくなり、些細なことで泣き叫びながら壁を蹴り、とうとう壁が割れてしまう程になりました。また手当たり次第に物を投げ散らかし家中がムチャクチャになりました。“私のせいだ”と思い、泣きながら抱きしめました。でも、押しても引いても 何をしても娘の乱暴は治まりませんでした。 何故かおばあちゃんの家で昼間預かってもらっている間は普通なのに、私が仕事から帰ってきた途端 ひどくなると長男から聞きました。その割りには仕事から帰るのを待ちわび、帰宅するとガレージに車のドアを開けて出迎えてくれる程でした。仕事中もストーカーのごとく何度も電話がかかって来ました。 

 次は“2学期が始まれば…”と期待しましたが遂には「学校行きたくない」と言い出し、よろず相談をしている精神科の先生に出会う事になりました。お医者様は「精神病です。すぐに治療が必要です。治療すれば元に戻ります」と即答されフルメジン0.25mgを処方されました。ヒドイ暴れ様に藁にもすがる思いでした。薬を飲み始め2日後、「あたし、お薬飲んだから大丈夫!」と安心したように言っていたと姑から聞きました。 
それから少しずつ暴力は治まりましたが、ある日、通っていたスイミングスクールでプールサイドまで行きながら「今日の先生イヤや〜 何か寂しくてイヤや〜」と泣きながら出てきたこと、その日の夜、「お母さん、寝てる間に地震がきたら 寝たまま潰れて死んでしまうの?寝るのイヤや〜 起きてたら逃げられるのに」と言った事を先生に告げると翌日から登校が禁止されました。その時は運動会の練習などがそれなりに楽しかったのか、禁止された途端「学校に行きたい」と言いましたが、私も5日間休暇を取り「朝も昼も夜も寝かせなさい」の指導どおり寝かせました。 随分落ち着いたと思い、私が仕事に復帰した途端また元の暴力が復活。薬はフルメジン0.5mgとピレチア5mgに増えました。 

 今、更に長期の休暇を取り娘と一緒に過ごしています。 学校へは結局2学期は登校禁止になる前に6日行っただけでした。三学期が始まりましたが 学校にいこうという気配はありません。お医者様からは「学校、友達という言葉は禁句です。病気が治ってくれば自分から学校へ行くと言い出します」と言われました。 
 全く無知だったこの病気についてこの休暇の間 いろいろ調べ 通院の度に分からないことを指導頂き、お医者様は「まだ小さいですから統合失調症と言うよりはその一歩手前、小さい分エネルギーは余っているから消耗期までは必要ないんでしょう」とのお答えを頂きました。

 そんな中、林先生の本にも出会いました。今かかっているお医者様の指導を仰いでいこうとは思っていますが、勉強しようにも幼い子供の症例等が紹介されているものは少なく、林先生の見解をお聞かせいただければと思い、メールしました。 先生の本(統合失調症 患者・家族を支えた実例集)のケース27を読み、何も知識のないまま、藁をも掴む思いで乱暴を抑えるために飲ませた薬について、“本当によかったのだろうか”と不安です。また娘のストレスの原因は学校ではなく、私であると思っています。でも今は学校に行けなくなってしまいました。“学校に行きたいと言っていたときに行かせておけば 今も学校に通えていたのではなかったのか?”ということです。先日も「二年生にはなりたくない。勉強 難しそうやからイヤやし ◇◇先生(担任)じゃなくなってしまうもん」と言っていました。本当に登校できる日が来るのか不安です。 娘には 大好きなお友達が一人、学校を休んでいる今でも時々一緒に遊んでもらっています。 また、毎日必ず夜8時に就寝するようにしていますが、寝付けないのか 寝ようとせず、眠そうな時ほど眠りにつくまでの時間がかかる状態です。 精神科Q&Aに回答が上がることを期待しています。


林: これはかなり難しいケースです。現在の主治医の先生のお話をよく聴きつつ、お子様の様子もよく観察しながら、慎重に今の治療を続けるのが最善だと思います。以下、この結論に至る過程をご説明します。

まず最初の時点、小学校に入学してから二ヶ月たったころ、

娘は些細なことでよく泣くようになりました。日に日にその泣き方はひどくなり、だんだん暴れるようになりました。

これがそもそもの始まりであると読むことができます。そしてこのころ質問者である母親が仕事で多忙で、かつ、ヒステリックになることもあったこと、そして、

何故かおばあちゃんの家で昼間預かってもらっている間は普通なのに、私が仕事から帰ってきた途端 ひどくなると長男から聞きました。その割りには仕事から帰るのを待ちわび、帰宅するとガレージに車のドアを開けて出迎えてくれる程でした。仕事中もストーカーのごとく何度も電話がかかって来ました。

このことをあわせますと、母親の愛情を求める気持ちが、不安定な精神状態を生んだのではないかと推定するのが自然でしょう。
その推定は正しいかもしれません。けれども、一見すると自然にみえるこのような心理的解釈をすぐに採用するのは危険で、自然に見える解釈が実は表面的なものにすぎず、実は精神病の発症であったということもしばしばあります(その場合、母親との関係は、きっかけではあったかもしれませんが、直接の原因ではありません)。
 また、このころ学校で、

「休み時間に遊ぶ約束をしていたのに放って行かれた」「運動場へ遊びに出ようと思ったのに○○君に邪魔されて行けなかった」「○○君はいつも私にだけ蹴ったりしてくる」「宿題のプリントのお直し、△△君はしてないのに先生見つからへんかったこと、私にだけ何回も自慢してくる」

このような被害妄想的なことがいくつもあったことも気になるところで、これらは精神病(統合失調症)発症のニュアンスがあるエピソードといえます。

しかしもちろんこれは「発症のニュアンスがある」というレベルにとどまるのであって、この時点でたとえ直接診察したとしても、薬物療法をすぐにでも開始すべき病気なのか、そうでないのかは、とても難しかったと思います。私の本統合失調症 患者・家族を支えた実例集 をお読みになっていただけたのこと、同書ケース27の解説にお書きしたように、まだ言葉による表現が十分できないこの年齢の子どもでは、精神症状の把握が容易でないことがその大きな理由です。

お医者様は「精神病です。すぐに治療が必要です。治療すれば元に戻ります」と即答され

この「即答」の具体的な意味が不明で、長い時間診察された結果、説明の段階では明快にこのように話されたとも解釈できますし、短時間の診察だけで即このように話されたとも解釈できます。前者であれば、それはこの医師の説明方針ということで、他から口を出すようなことではないでしょう。(子どもが精神病であると診断した場合、それを本人や親に、はっきり伝えるか、それともショックの緩衝という意味もあってソフトに伝えるかは、病気の状態や、医師個人の方針によります)。他方、後者、すなわち、診察が短時間しか行われなかったとすれば、それでは診断はできないのではないかと私なら考えるところです。けれどもこの医師が私などよりはるかに経験も技術も上であって、子どもの統合失調症を短時間で見抜けるということも考えられますので、何とも言えません。

先生の本(統合失調症 患者・家族を支えた実例集)のケース27を読み、何も知識のないまま、藁をも掴む思いで乱暴を抑えるために飲ませた薬について、“本当によかったのだろうか”と不安です。

成長期にある子どもに抗精神病薬を飲ませることについての功罪は、その本にお書きした通りです。処方された先生はその本に書かれている程度のことはもちろん承知のうえで薬を出されたはずですから、質問者が不安を持ち続ける必要はないと思います。どうしても不安であれば、その先生に直接お聞きすることでしょう。

また娘のストレスの原因は学校ではなく、私であると思っています。

ストレスの原因が何であるかはともかく、娘さんが仮に統合失調症だとすれば、その原因はストレスではありませんので、質問者が原因ではありません。

でも今は学校に行けなくなってしまいました。“学校に行きたいと言っていたときに行かせておけば 今も学校に通えていたのではなかったのか?”ということです。

そんなことは今となってはわかりませんし、仮にそうだったとしても、いま後悔することに何の意味もありません。

というわけで冒頭に述べた通り、現在の主治医の先生のお話をよく聴きつつ、お子様の様子もよく観察しながら、慎重に今の治療を続けるのが最善だと思います。


(2011.3.5.)


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