精神科Q&A

【1961】うつ病で休職中の同僚が、口を開けば他人の批判ばかり


Q: うつ病で休職中の同僚(38歳・女性)について相談します。彼女とは最初は親しかったのですが、5ヶ月前から避けられるようになり今は連絡も途絶えています。彼女からは睡眠障害と生理不順を訴えられており、持病として甲状腺の病気(バセドウ氏病)もあることを聞いていました。また、職場の同僚の悪口が絶えず、常に誰かに対し不満を抱えている状況で、それをトップの上司に直訴することも度々あったようです。  話を聞くとなるほどと納得することもありますが、大半が「どうしてそんなことを気にするのか?」「なぜその言葉をそんな風にとらえるのか?」といったことばかりです。そして、そのことを私だけでなくいろいろな人に言ってまわり、自分の正義感を振りかざし、被害者であることを強調します。が、実際は自分からいろいろなことに首をつっこみ情報収集をし、苦笑混じりに愚痴られた内容を「涙をためてため息をつき、つらそうに打ち明けられた。何とかしなくては。」といように解釈をし上司に訴えます。そもそも、自分とまったく関わりのないことに怒りをあらわにし「このままでは組織がダメになる」と言いふらします。職場内だけならまだしも、美容院や他の場所でも同じようにしゃべるので、その方がよっぽど信頼を損ねるのにとヒヤヒヤしたので、見かねてついに注意したところ、その後から、私のことは露骨に無視をし始めました。私を誹謗中傷する長々としたメールを何人かに送っていたこともわかりました。もう立ち直れないほどの精神的傷を負わされたという内容らしいのです。具体例を挙げると、外勤中の彼女から仕事についての問い合わせメールがあったため、それに答えるついでに「戻ってきたら○○を手伝ってほしい」と言ったことが「『疲れているのに殺す気か』と思った。」こととして上司に涙ながらに告げ口されていました。他にも、まったく悪意なく発した言葉に執着し悪意をねつ造して言いふらします。個人が悪い、上司が悪い、組織が悪い、行政が悪い・・・。彼女の攻撃はとどまることを知りません。それでも涙ながらに訴えるので話を聞いた人は彼女の正義感や純粋さに感動し、彼女が悪く言う人を同じように悪く思い出し、人間関係はずたずたになりました。彼女の夫も彼女の言った内容を信じているらしく、私のことは加害者扱いです。  休職中とはいえ彼女の影響力は大きく、戻ってきてからのことをどうしても心配してしまいます。配慮したことが悪意にすり替えられてしまうため、打つ手がありません。他人を好き勝手に責め、職場の動向に目を向け、批判対象を探し続けている彼女がうつ病とは思えません。私の他にも被害者は多く彼女の復帰を恐れています。が、同調者がいて情報を流されるため、また、彼女が被害者然としていて手を出せないため、彼女の話題はタブーです。うつ病ではない、と思いますが誰にも言い出せません。適切な治療を受けてほしいのですが、こういうことを言うと「どうせ復帰してほしくないからでしょう」と同調者に言われ、彼女に伝えられ、またトップの上司に泣きつかれます。私にできることはありますか?


林: この女性はうつ病ではないでしょう。

他人を好き勝手に責め、職場の動向に目を向け、批判対象を探し続けている彼女がうつ病とは思えません。

という質問者の見解は正しいといえます。したがって、

うつ病で休職中

ということになっているのだとすれば、これは擬態うつ病です。
けれども、この女性がうつ病だという情報を質問者はどこから得たのでしょうか。
メンタルの問題で休職すると、何でも「うつ病」ということに何となくされていることが現代の職場では多いものです。
うつ病でないものがうつ病とされている、すなわち擬態うつ病は、本物のうつ病に対する誤解や偏見を生みだすことが大きな問題です。この【1961】のケース、うつ病だという情報は実はどこにもないのに、職場内の噂でうつ病ということになっているのだとすれば、そこは慎重な姿勢を取っていただきたいところです。

それはそうと、冒頭にお答えした通り、この女性がうつ病でないことは確かと思われますが、では病気でなく性格の問題かというと、そういうことにはなりません。

持病として甲状腺の病気(バセドウ氏病)もある

とのこと、バセドウ病の精神症状として、すぐイライラしたり他人に対して攻撃的になったりといった「易刺激性」というものがしばしばあります。時には被害妄想的な症状が出ることもあります。
もちろんバセドウ病の人すべてにそういった症状が出るわけではありませんし、また、この女性がバセドウ病だからといって、このメールに書かれているような言動がどれもバセドウ病によると言うこともまたできません。けれども順序としては、

適切な治療を受けてほしいのですが、

その通りで、まずバセドウ病をきちんと治療していただくことが必要でしょう。

 

(2011.3.5)


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