精神科Q&A

【1919】いじめにあっていた私も双子の姉も、解離性障害です


Q: 27歳、女性です。2年前、恐怖で家から出ることが出来なくなったことがきっかけで精神科へ通院を始めました。3回ほど病院を変えているのですが、その際診断を受けたのが解離性障害でした。カウンセリングでは、私は幼少時から社会的環境といじめから解離の兆候があったようだと指摘されました。しかし、私自身自覚がなく、自分の中に別人格が存在するというコトはだれにでもあるのだと思っていました。なぜそう思えたかというと、傍にもう一人私と同じ症状を抱える一卵性双生児の姉がいたからです。
 私と双子の姉は、小・中学校いじめにあっており、とくに小学校のころはいじめが酷くて姉は自殺未遂をしたことがあるほどです。そのためからか、私と姉には小・中学校の頃の記憶がほとんどありません。
 私の中には私の他に3人の人格がいました。簡単に言うと、一人目は酷く暴力的で全てを拒絶する男性嫌いな人格、二人目は一人目の言動や行動を抑えてくれる人格、三人目は傍観していて時に私自身がパニックなどに陥ったときに冷静に対処してくれる人格です。私の中でその3人はうまくバランスを保っていたのですが、ある日突然(いつから消えたのか記憶にまったくないのです)二人目の人格が私の中から消えてしまったのです。部屋は残っているのに、中に人が住んでいないのです。心のバランスを崩した私は一人目の人格を押さえるのに疲れてしまい、だんだんおかしくなりはじめました。会社で突然髪をばっさり切り落としたり、部屋の隅っこで身体を抱え込み丸くなって一人目の人格を押さえつけたりしていました。やがて人が恐怖の対象になり、外に出ることが出来なくなって、入院を何度も勧められたほどに重度のうつ病になり、パニック障害に現れる発作が起き、絶望を感じ何度も死を描きました。また、私の場合は特殊なのかはわかりませんが、人に触れることによって交代人格が現れることが多いです。逆にいうと、人に接することなく過ごしていると他の人格はほぼおとなしいのです。しかし、このまま人に接しない、触れない生活が出来るはずもありません。今は、うつ病に対する薬と不眠症の薬を飲み続けています。朝・昼・夜にアモキサン25mg、レキソタン2mg、ドグマチール100mg夜にジェイゾロフト25mg就寝前にヒルナミン5mg、ブロチゾラム0.25mg2錠、ハルシオン0.25mgです。うつ病のほうは自分ではもう良くなっていると思うのですが現状維持というお医者様の診察どおり、そのままの量を服用しています。これから生活しなければならないし、仕事に復帰したいです。以前のように、交代人格とバランスを保ちながら生活ができないものか考えています。けれど、現在は消えてしまった人格の埋め合わせを私がしている状態で正直、苦痛です。人に触れるのが怖いのです。どうすれば前の自分を取り戻せるのでしょうか?


林: あなたはうつ病でもなく、パニック障害でもないと思います。解離性障害という診断は適切です。さらにその解離性障害の背景には、境界性パーソナリティ障害か、それに近いパーソナリティ障害の偏りがある可能性はかなり高いです。そしてその原因には、幼少時のいじめが関連している可能性があります。

あなたはうつ病ではありませんが、うつ状態ではあり、それに対しては今までの抗うつ薬などの治療の効果が上がっています。したがって、今までの治療は基本的にそのまま続けるべきです。けれどもそれだけでは不十分です。さらなる回復のためには、解離性障害、さらにはその背景にあるパーソナリティの問題へのアプローチが必要です。そのためには、今の主治医の先生の治療を根気よく続けるか、パーソナリティ障害を専門とする先生の治療(精神療法が中心になるでしょう)を受けるかのどちらかです。どちらが適切かは、何ともいえません。パーソナリティ障害の治療を専門とする適切な先生の治療を受けられる環境にあるかどうか(つまり、地域的にそのようなクリニックに通院できる環境にあるかどうか)にもよります。



◇ ◇ ◇

【1901】から【1948】までの回答は一連の流れになっています。【1901】、【1902】・・・【1948】という順にお読みください。

先にお書きしたように、解離性障害はパーソナリティ障害と密接な関係があり、それにこの【1919】は現に境界性パーソナリティ障害の色彩ある症状が認められますので、境界性パーソナリティ障害かその近縁の状態であるといえるでしょう。
そして、双子の姉も同様の状態にあります。
すると【1918】の回答の最後にご説明した論理からすれば、「境界性パーソナリティ障害の形成への遺伝因子の関与は小さくない」という結論になります。

けれども、どんな病気についてもそうですが、たった一例だけで結論を出すことはできません。その一例は例外かもしれないし、偶然の関与かあるかもしれないからです。
ではこの【1919】のようなケースを多数検討すれば結論に近づけることになりますが、「一卵性双生児で、幼少時にトラウマあり」というケースがそう多数例あるわけではありませんので、結局はやはり結論までには達することができないということになります。


(2011.1.5.)


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