精神科Q&A

【1907】今の症状はただ気分が変わりやすいというだけでしょうか


Q: 31歳女性です。私は結婚して2年になりますが、結婚前から色々な症状があったものの金銭的に余裕がなく今まで通院したことはありません。なので自分が今思うとおかしいと思う所を書きます。小学生の頃いじめや家族内の喧嘩や、父親が厳しいというか、些細な事で怒り木刀や拳で叩かれることがあったり、母親がいなかったので病弱な祖母の代わりに夕飯の買い物や夕飯を作るなどをしていたのですが、当時周りと違うことや、学校帰ってきてから色々やることに疲れてしまったのだと思いますが、死にたい欲求にかられたことがきっかけで祖母が飲んでいたハルシオンを溜めて一度に飲んだことがありました。それからは自分の左腕の脈の場所を探してそこだけ重点的に切ったりを繰り返していました。

それから高校生になり姉と2人暮らしをしてアルバイトしながら学校へ行っていたのですが徐々にかはわかりませんが@空腹感がなかったので食事をしなかったら1ヶ月に25キロ減ったのですが体力的には異常はなく、むしろ元気でした。A人とあまり話すのは得意じゃないのにバイトの接客が楽しくて仕方がなく色々な人とフレンドリーに接する(でも些細なミスが多く落ち着いてとよく言われていましたが落ち着いてやっているつもりでした)B長時間電話をするようになりました(話が尽きない感じでした)C色々な人と肉体関係を持ってしまうDあまり睡眠を取らなくても学校、バイト、遊びが両立できていたなどがあったのですが、今度はいつのまにか逆になってしまいE体がだるいF朝起きられないG物事が決められないH人の話が理解できないI丸1日寝てしまうJ自分が嫌になり死にたくなったり不安になったりなどとなってしまい、周りからはつまらなくなったと言われるようになりました。今になってもE〜Jのような感じと、外出や他人と会話をすると決まって次の日に寝込むのが多いというのが続いており、@〜Dのような感じは長いと数年置き、たまに時間単位で軽くそういう感じに取れることがあります。市販のセントジョーンズとかいうサプリも飲んでみたのですが、少し体は楽になり動くのですが、時間が経つと涙がこぼれて不安になることがあったので飲んでいません。ただ単に気分が変わりやすいだけなのかわかりませんが、@〜Dの状態が最近はひどくなっていますので、前の自分に戻りたいのですが、ひどくなったきっかけがわからず考えるととても疲れます。主人は薬漬けになるだけだからやめろと言い病院に通うことは賛成していません。


林: 
小学生の頃いじめや家族内の喧嘩や、父親が厳しいというか、些細な事で怒り木刀や拳で叩かれることがあったり、

この虐待体験と、@からJまでの現在の状態は、【1901】からの一連のケースと同様、関連ありの可能性があります。@からJまでのうち特に、@は摂食障害(拒食症)にかなり典型的な症状ですし、AからJは、境界性パーソナリティ障害の特徴に一致しています。また、摂食障害は境界性パーソナリティ障害の人にしばしば見られるものです。
これら特徴が稀に見られる程度であれば大きな問題はありませんが、

今になってもE〜Jのような感じと、外出や他人と会話をすると決まって次の日に寝込むのが多いというのが続いており

という状況であれば、精神科を受診すべきです。

市販のセントジョーンズワートとかいうサプリも飲んでみたのですが、少し体は楽になり動くのですが、時間が経つと涙がこぼれて不安になることがあったので飲んでいません。

【1907】の質問者には、薬に期待することは勧められません。うつ病ではありませんから、そもそも効果が期待できませんし、境界性パーソナリティ障害の人は薬に依存しやすいという問題もあります。

主人は薬漬けになるだけだからやめろと言い病院に通うことは賛成していません。

これは不条理な反対理由で、境界性パーソナリティ障害だとすれば、治療の中心は薬にはなりません。


◇ ◇ ◇

【1901】から【1948】までの回答は一連の流れになっています。【1901】、【1902】・・・【1948】という順にお読みください。

【1906】までと同様、この【1907】も虐待との関連の可能性が考えられるケースです。
けれどもここで注意すべきことがあります。それは、【1901】から【1906】までの流れで考えると、この【1907】もいかにも虐待と関連がありそうに見えますが、このケースの虐待に関する情報は、

小学生の頃いじめや家族内の喧嘩や、父親が厳しいというか、些細な事で怒り木刀や拳で叩かれることがあったり、

これだけにすぎないことです。このうち、

小学生の頃いじめや家族内の喧嘩

この程度のことは、どんな家庭にもある・・とまでは言わないまでも、これだけでは特殊な家庭環境であるとは言えません。また

父親が厳しいというか、些細な事で怒り木刀や拳で叩かれることがあったり、

これについても、「木刀や拳で叩かれる」 のは確かに暴力ですが、叩かれるといってもどのくらいの強さなのか、また、「ことがあったり」というのは具体的にはどのくらいの頻度かによって、虐待と言い切れるかどうかの判断は違ってきます。

このように、過去の虐待の有無を本人の口からの情報に基づいて判断する限り(多くの場合、虐待の有無の判断はそれに基づく以外にありません)、安易に「虐待があった」と結論するのは危険で、そして、現在の精神症状と関連づけるのはさらに慎重を要するといえます。

(2011.1.5.)


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