精神科Q&A

【1870】統合失調症だった、今は亡き母へ


Q: 私は30代女性です。先生の本、統合失調症 患者・家族を支えた実例集 を偶然見つけて読ませていただきました。 
私の母は、もう現在は他界しておりますが、重い統合失調症でした。私が小学生の頃から症状が悪化して、入退院を繰り返しておりました。父の話ですと、私が産まれてすぐ発症したとの事でした。 当時、私は子ども心に訳がわからなくて、学校から帰ると玄関のドアの前に「精神病出てけ!」と張り紙がしてあったり、幻聴が聞こえて夜中に裸で出て行った母が朝方警察に連れて来られて帰ってくる。毎日が不安でいっぱいの日々でした。
 何故こんなにも自分の母は他のお母さんと違うのか?思春期になった頃には恥ずかしいという感情が生まれ心の何処かで母を恨み私はずっと母の病気と向き合う事が出来ずに大人になりました。
 7年前に母は病院で亡くなりました。最後に会ったのは、亡くなる3日前外泊で戻ってきた実家で顔は薬の副作用で表情もなく、背中も丸くなりトイレさえも自分で行けないような母の姿でした。 
 現在私は子ども2人に恵まれて普通の家庭を持つ事が出来ました。そして子育てが落ち着いてきて自分自身とゆっくり向き合う時間が出来るようになってきました。そうなると母への後悔の想いが私の中で大きくなり、ずっと逃げてきた母の病気と向き合ってみたいという気持ちになりました。 もう母は亡くなりましたが、同じ病気の方で苦しんでいる家族の方の何か力になりたいと願っています。 でも実際何から始めていいのかわからず、ボランティアなど少しずつでも何か出来る事はないのか? 教えて頂きたく先生にご相談メールをしました。


林: このような深く、重く、そして美しいメールをいただき、感謝の言葉もありません。私には到底あなたにアドバイスできるだけの見識はありませんが、それでもひとつだけ言わせていただくとすれば、何をなさるかをお決めになるにあたっては、統合失調症について、その現実の正しい姿を直視することが最も大切だと私は考えます。現実の正しい姿とは、明るい面も暗い面も、さらには本人、ご家族、周囲の様々な立場の方々の目に映る姿のすべてを含んでいます。精神科Q&Aの統合失調症の実例、中でも特に今回(2010.10.5.)の実例(【1805】から【1870】)が、統合失調症の現実の正しい姿を知るために、ごくわずかでもご参考になれば嬉しく思います。あなたとあなたのご家族、そしてあなたがかかわる方々のこれからの人生が有意義で幸福であることを願っています。



今回の更新(2010.10.5.)について


(2010.10.5.)


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