精神科Q&A

【1798】看護師から見た『それは、「うつ病」ではありません!』


Q: 40歳女性、看護師をしています。私は5年ほど前にうつ病と診断され、今は内服を続けながらですが夜勤も含め、正社員として、働いています。先生のお書きになったそれは「うつ病」ではありません!を拝読させていただきました。常々思っていたことに思い当たり、メールさせていただきました。病院勤務をしていて、よく抗うつ薬を出されている患者さんをみます。でも、そのうちの果たして何割が本当にその薬を必要としているのか疑問に思うことがよくあります。よくみられるのが不定愁訴の患者さんです。きっと何割かはうつ病からの訴えであり、抗うつ薬が必要なのでしょう。ですが、患者さんを見ている限りでは、不定愁訴の背景には独居の老人の寂しさであったり、同居している息子の嫁との不仲があったり、また、性格上訴えの多い人と言うのも確かに存在します。また、これらの患者さんの中には、相手にしてほしい、薬がほしくてたまらないという方も多くみられます。その患者さんたち全て(言いすぎですが)に抗うつ薬を処方してしまうのは、先生方がうつ病と確信しているからでしょうか? それとも、うつ状態とみなして一応対症的に処方しているのでしょうか? それとも先生がお書きになっているように、諸事情によりうつ病ということになり、それでは抗うつ薬を、ということなのでしょうか? また、本来なら専門家であるはずの看護師の間にも誤解があるように思えます。不定愁訴の患者さんに抗うつ薬が処方されているのを見て、「この人プシ(psy)だから」 訴えの多い患者さんをみると「プシかかったほうがいいんじゃない」等・・・。(もちろん、全員がそうとは言いません。が、そういう人がいるのも事実です)私は職場に自分のうつ病のことを言っていません。もちろん、今はそれで支障なく働ける状態になっているのですが、実はうつになってから今の職場に来るまでに、病名を伏せながら就職し、結局つぶれてしまったというのを5回繰り返しました。私に限らず、ほかにも、うつ病と職場に言えず、薬を飲みながら頑張っている方々はたくさんいらっしゃると思います。最近マスコミでよくうつ病のことが取り上げられ、正しい理解を促す上では喜ばしいと思う一方、本当はうつ病ではないのに都合上抗うつ薬を処方された方が増える中で、本当にうつ病としての支援が必要な方が誤解されることがあるのではないかと懸念しています。少なくとも私は今の職場で、「私もうつ病で抗うつ薬を飲んでいます」とは言えません。この本を一人でも多くの方に読んでいただき、正しいうつ病の知識を得ていただけるよう、心より願っています。 ※それにしても、メンヘラという言葉は初めて聞きました。ちょっと衝撃的でした。


林: 私の著書を高くご評価いただきありがとうございました。ご指摘の内容は、私がこの本を書いた時ももちろん強く感じていたことですが、

1 最近マスコミでよくうつ病のことが取り上げられ、正しい理解を促す上では喜ばしいと思う

2 本当はうつ病ではないのに都合上抗うつ薬を処方された方が増える中で、本当にうつ病としての支援が必要な方が誤解されることがあるのではないか

上の1、2を考えると、2の問題のほうがどんどん大きくなっていることが実感され、それをうつ病に限らず心の病と精神医療全体にかかわる問題としてとらえ、一冊にまとめたのがサイコバブル社会です。
この【1798】の方も看護師という医療の専門家ですが、どうもどちらの本もどちらかというと専門家にはとても受けている傾向が見られるようで、それは喜ばしい反面、専門家の見解を代弁するだけでは本としては半分しか成功していないとも言えますので、書き方をもっと吟味する必要があると考えています。




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