精神科Q&A

【1795】アメリカの大学に留学中ですが、うつ病で悩んでいます


Q: 僕は26歳のアメリカに留学中の男です。今はサンフランシスコに近いいわゆる名門大学にて勉強しています。

今年の夏は2ヶ月インターンシップでワシントンDCにいったのですが、そこで自分の能力が通用しないという挫折感と不遇な状況への不満からか引きこもりました。

その直後にロサンゼルスの近くの短大から今の名門大学に転入しました。

新しい大学に来た当初から、知り合いがいないことなど、常に不安でしたが、時間が解決してくれるだろうと思いました。

しかし日に日に状態は悪くなり、新しい家で一人暮らしをはじめたのですが、そこの家主がかなり騒がしい人で落ち着けなく、早朝目が覚めては、生きた心地がしない絶望感におそわれました。

授業が難しいため、必須科目を取れなかったり、より将来への不安が強まり、周囲の人々は普通に勉強しているのに自分だけ取り組めなくなり、焦りは募る一方でした。

高い学費を払っているという罪悪感と、学校を辞めたいけどもやめた後が怖い。休学すべきだ、けどももうすぐ学期も終わるし、負担の少ない授業を選んでいるため、この学期はのりこえられるんじゃないかという思い。今の家を出て行き違う家に住もうとしているのですが、どれがいいか自分では決断できない。

あまりの心労に学校の付属のカウンセラーと話しましたが、その方は日本人でまだ研修とのことで慣れていない印象を受けました。何故なら「頑張って」とうつ病患者にはかけてはいけない言葉をかけるからです。

僕は8年ほど前にもプレッシャーのかかった状況で現実から逃げるために学校を変えた経験がありました。自信を喪失しましたが、後に英語を勉強しアメリカの大学を卒業して仕事につくことでその自信を取り戻していこうとしていた矢先に、大学の難しさ、その街なみや人々への嫌悪、そして以前いた場所の近くの大学を選ばなかったことへの後悔などを考えなかなか前に進めません。

本当は休学すべきなんでしょうが、なんとか薬(プロザック系と眠剤)を処方してもらっているので。それで乗り越えられないかと思っています。


林: 記載内容から判断する限り、この【1795】はうつ病ではなく、留学先の環境に適応できないことによる落ち込みであると思われます。その背景には、本人の能力不足があることは否めないでしょう。本人のおっしゃるところの「名門大学」の勉強についていくだけの能力がなかったと見るのが自然だと思います。

あまりの心労に学校の付属のカウンセラーと話しましたが、その方は日本人でまだ研修とのことで慣れていない印象を受けました。何故なら「頑張って」とうつ病患者にはかけてはいけない言葉をかけるからです。

「頑張れ」「努力せよ」と言われると、その相手は病気を理解していないと不信感を持つ。時には憤慨する。実際にはうつ病ではないのに、自分がうつ病だと信じている人によくあることで、擬態うつ病のケースの中に、類似の事例はたくさんあります。

新天地を求めて米国に留学したのにもかかわらず、物事が思うように運ばず、悩む気持ちはよくわかります。しかしそのことと、うつ病という病気は別です。抗うつ薬はうつ病の薬であって、人生の悩みを解決するためのものではありません。自分の能力を含め、現実を直視することで、より適切な生き方を選ぶべきだと思います。

なお、

僕は8年ほど前にもプレッシャーのかかった状況で現実から逃げるために学校を変えた経験がありました。

という経緯からは、留学そのものが単なる現実逃避であったという考え方もできます。最近の海外への留学生の中にはそういう人も多いものです。しかしこの【1795】がそれにあたるかどうかまでは読み取れません。



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