精神科Q&A

【1736】認知症の父は、大量下血があり、亡くなりました(【1721】のその後)


Q【1721】認知症とせん妄と薬の使用について‏ にお 答え頂いた者です。 以下は質問ではありません。「その後の経過」というのにも当たるかどうかわかりかねますが、ご回答頂けた事に感謝の気持ちで、メールさせて頂きます。(もしも、サイトのお役に立てる部分があればお使い 頂く事は構いません。)

私の質問を取り上げて頂ける事はないかと思っていま したが、人に接する仕事をしていることから、心の病について 知っておきたいと、毎月、Q&Aを読ませて頂いていました。今月、見覚えのあるタイトル…と、読んでみて自分の 投稿であることに気がつきビックリしました。長々と書きました質問に対して、深いご理解のあるご回答をくださいまして、有難うございました。同じような不安を持っていらっしゃる方がお読みになり、私の投稿がお役に立てばと思います。
 父は、質問させて頂いた、大動脈解離による入院、退院から、ちょうど一年余り、母と自宅で生活した後、昨年五月に、突然大量の下血 があって救急車で入院し、一週間後に亡くなりました。今は、一年かけて、母や私たちなど周りの者達にゆっくりと心構えをさせてくれたのだと危機的状態から生還して、一年間過ごしてくれた父に感謝しています。 
 質問しました当時は、父の様子が倒れる以前とかなり 変わってしまった事への戸惑いもあり、この年齢で三途の川を戻って来たのだから仕方がない のかと考えながらも、回復させられる部分があるならできるだけ取り戻して、少しでも穏やかな状態で過ごしてほしいと、状態の変化の原因を、素人考えの範囲でアレコレと探っていました。特に夜中の行動には、介護の母の心労や疲労も心配でした。せん妄であるなら適切に対処すれば回復できるはず… と考えて、少し焦りも感じていました。 また、母は、お医者様に対する必要以上の遠慮のような感情があるようで、自分が抱いている不安や、父の症状などについて、診察の際にハッキリと話していない部分があるようだったので、医師にきちんと状況が伝わっていないのではないかと心配していました。そんな事もあって、林先生のサイトで自分のするべき事を確かめたいと質問させて頂いたものです。
 けれども、父は母と共に定期的に通院するうちに、担当医のお力でしょうが、精神科の先生とのコミュニケーションがだんだん円滑になって行ったようで、薬も細かく調整して頂けるようになり、夜の不眠と日中のウトウトは完全に解決はしなかったものの、当初に比べ、状態はかなり落ち着いたものになったようでした。 認知症の症状としては、少しずつ進行したようで、母、私たち子ども、孫達、と、自分の兄妹とを混同することがだんだん多くなり、夕方になると、自宅はここではない、ここへは少しの間遊びに来ただけで、自宅に自分の服など必要な物を置いたままなのでそろそろ帰宅したい…と言い張って母を困らせることがよくありました。(それは認知症に特有の症状ということを知り、受け入れるしかないと思いました。) そんな時は、母が私のところに電話してきて父に代わり、父は電話口で、母がおかしな事を言うので困っている…家を売ったなんて言うんだよ。。等と、それなりに出来上がっている理屈を、元気な頃と変わらない強い声とハッキリした口調で訴 えるので、私はなんとか父に話を合わせ、今はそこにいてくれないと、みんなが遊びに行くのに困るから、もう少しそっちにいてください、家の方は私が様子を見に行っておく…等々、父に負けないように話を作ってなんとか誤魔化し、来週何日に遊びに行くからね、ところで○○は・・・ と、父が楽しく感じそうな話題に変えて、切り抜けるようにしていました。 たまに、父の理屈に負けてしまい、うまく行かないこともありましたが、それでも電話で誰かと話をすると、どうにか落ち着くという事で、父が何かにこだわり始めて手がつけられなくなると母は、私や妹のところに電話をかけて来ました。 母は、お父さんは夜は寝ないし昼はトンチンカンでやんなっちゃう…と言いながらも、クヨクヨしてもしょうがない!と、トンチンカンは気にせず盛んに会話をして大体うまく相手をしていたようです。 訪ねて行って目の前で話をすると、忘れていることはたくさんあっても、通じる話には、しっかりとした受け答えがあって、一緒に食事をすれば「あーうまいねー。幸せだネー」 などと大きな声で言ったり、弱気や不安を口にする事はあっても、攻撃的な言葉は なかったようですし、徘徊や暴力などといったことはまったくなかったので、それでも母は大変だったと思いますが、振り返れば静かに穏やかな日常を過ごして、逝ってくれたと思っています。 サイトにカンケイナイ話を長々と書いてしまったよう です。スミマセン。 取り上げて頂いた過去の自分の質問を読んで、つい 色々な事を思い出してしまいました。この辺で失礼します。有難うございました。


林: 経過のご連絡をいただきありがとうございました。認知症の経過の一つとして、読者の方々には貴重な実例になることは間違いないと思います。ご家族は相当ご苦労されたこととは思いますが、その一方で、たとえばお母様の

母は、お父さんは夜は寝ないし昼はトンチンカンでやんなっちゃう…と言いながらも、クヨクヨしてもしょうがない!と、トンチンカンは気にせず盛んに会話をして大体うまく相手をしていたようです。

というご様子に代表されるように、現実を直視してその範囲での最も適切な対応を取っておられたことが読み取れます。お父様も、認知症にかかってしまったことは残念なことではありますが、幸福な人生の終わり方であったと思います。
あらためて、ご連絡いただいたことに感謝申し上げます。



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