精神科Q&A

【1733】交通事故後、極度のビビリ症になった


Q: 31歳女性、会社員です。
いつもHP拝見しております。なかなか同じ病名でも皆さん類似していないので 色々と難しいものだな。と思う今日この頃です。
ですので、他の方の内容と比べたらきっと軽症ではあるかと思いますが、私の場合を投稿させて頂きます。

 私は一年8ヶ月前に交通事故にあいました。
 原付での帰宅途中の交差点で、直進の私に対向車の右折車両が接触。この時夕方の小雨でしたが視界もよく、信号は共に青。交通量も少なく十分な目視可能(死角なし)。 事故の怪我も頚椎捻挫等の診断で入院もなく、軽くて良かったと当初は思った程でした。
 しかし、結果的には 症状固定後に自主検査をしたら、低髄液圧症候群や胸郭出口症候群が発見され、自腹での治療になりました。
 事故後2ヶ月経過した頃から、原付や車の運転を再開したのですが、極度のびびり症になりました。
あの車はちゃんと一時停止するかな? 信号がそろそろ変わるけど、突っ込んでこないかか? あの自転車はこっちの存在をわかってるかな? など考えてしまい、特に交差点の通過やコンビニの前の通過などのとき、心拍数の上昇が多くなりました。
葉っぱが落ちたのが視界に入ってドキ!っとして、震えてしまった事もありました。 涙が出たりもしましたが、たいていはしばらくすると落ち着いて、どうにかなっていたのですが、事故から1年半後くらいにガードマンがトラックの誘導のために道路に出てきたときにはびっくりしていまい、原付だったのですが心拍数がいっきに上昇し路肩によせるやいなや、号泣してしまいました。その日を境にビビリ症は悪化してしまい、原付も車も運転が出来なくなりました。車の助手席などに乗るときは症状が出やすくなっていたので、極力周りを見ないようにしていました。
 心療内科に行き、今はデプロメールを夜2錠飲んでいます。原付の運転も出来るようにはなりました。
交通事故の話は自分から出来たのですが、ガードマンの件や車に乗れない・・・という話は、話しているうちに感情が高ぶり涙が出てきます。
 今回の交通事故の過失割合は交差点内ゆえに90対10と言われています。私は道路交通法を守っていたのに、原付に乗っていたからだということで私の過失は10になったのです。私には基本的に過失はないと今でも自信をもっているだけに、やるせない回答に憤慨し、こちらが守っても相手が守らなければ事故になるから、怖い。っと思ってしまっています。
 PTSDの原因が交通事故との断定は出来ないけど誘発のきっかけにはなっているとの診断ですが、あの事故で?っと周りの人間には驚かれています。 
 自分自身でも、こんなにナイーブな内面があったんだ。っという驚きがあります。
人間だから、暗いダークな面も持ってはいるのですが、もともとは大勢の人の前に出る仕事もしていたし、基本的にはおしゃべり好きで、事故の状況や怪我の治療状況の実況検分をしてしまうタイプですので、自分がPTSDという事実にショック(?)を受けています。
 好きだった運動も制限付きになってしまう体です。2重のショックのなか、自分の内なる思いをはくところが無く、こういった支離滅裂なメールを出させていただくことを、お許し願いたいと思います。
 どうやったら、自分との折り合いが見出せるのかが今の私の課題なのかな?と思っているのですが、合っていますでしょうか?


林: 交通事故の後に発生した症状。文面からは、医師からPTSDという診断名を告げられたことが読み取れます。そして抗うつ薬で治療を受けている。ご自分では自分との折り合いの見出し方を課題だと認識しておられる。
 ここまで、今の症状への対策として、特に問題はないと思います。このままの治療と考え方で進めていけば、症状は改善に向かうでしょう。
ただし、この【1733】の方の診断名は、正確にはPTSDとはいえません。PTSDというからには、その原因としてのトラウマは、診断基準にある、

実際にまたは危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、その人が体験し、目撃し、または直面した。

という条件を満たす必要があるからです。
それに対しこの【1733】のケースは、ご自身も、また周囲の方も、あの程度の事故でまさか、と思うくらいの出来事がきっかけですので、PTSDとはいえません。これはあまりに四角四面の診断という感じがしますが、PTSDとは、そもそもが賠償を受けられるようにという目的で人工的に作られた病名ですので、トラウマの性質が厳密に規定されるのはやむをえないといいますか、当然のことです。
 けれどももうひとつ当然のことは、PTSDという診断がつく・つかないということと、症状形成のメカニズムがとうかということは別の話だということです。つまり、この【1733】のケースは、診断はPTSDとはいえませんが、PTSDと同様の治療の適用になるということです。
 というわけで、今の治療と考え方で問題ないという冒頭の答えになります。主治医の先生もおそらく、厳密にはPTSDとはいえないことはご承知のうえで、説明としてはPTSDがわかりやすいのでそのようにされたのだと思います。



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