精神科Q&A

【1690】急に腕などに力が入り動かなくなる、これはチックでしょうか


Q: 私は20代半ばの女性です。今回は、私と20代前半の弟に出てくるチックのような症状についてご相談したくメールをさせていただきました。 チックのような、という症状・状況ですが。私に出始めたのは中学2年生頃に、部活のランニングをしていると、左手が体にひきつけられるように腕に力が入ってしまい腕を自分の意志で振ることができずに走れなくなってしまうということから始まりました。
 意識はあり、呼吸も正常なのですが、腕の力みからはじまってだんだんと肩や首、足や顔の表情にも力みが起こり体の中心に引き付けられるような状態になります。そのままでは歩けなくなり、その場でその状態で数秒待っていると、自然と体の力が抜けて自分で体を動かせるようになります。 その後、10年ほど経った今でも同じ状態が多いときは日に数回、調子の良いときは2か月〜3か月は起こらない、という波のある状況が続いております。 心理学を大学で勉強していた時に、子どもが緊張した際に起こるチックという症状があることを知りました。そのため、この症状もチックのようなもので、緊張に弱い自分の精神的未熟さ故かと考えておりましたし、年齢を重ねてある程度自分の成長と一緒に消えていくかもしれないと考えていました。しかし、この状態になるとやはり姿勢が異様でしょうし、顔の筋肉も動かせなくなるので変な顔つきになってしまい、そのあとに周りにどうごまかしていくか、説明していくのかということやいつ出るかわからない状況に悩まされていました。
この症状が出そうになる体の中の感覚として足や手に特有の変なくすぐったさというか、軽い力みがはいることが段々とわかってきたので、症状が出そうなこの感覚になったときは手をブラブラさせたり足踏みをしたり、少し手足を動かすと症状が出にくくなるということでその前兆が解消されることも自分でわかってきて、そのように対応することで日常生活を過ごしてきました。ただ、緊張していない状況、たとえば一人で部屋にいる時でも起こるのでただ単に緊張した状況に弱いということでもないようでそのあたりは自分でもよくわからないというのが正直なところです。 この症状が出ないようにしたい、と考えていましたが精神科の薬などでよくなる種類のものなのかわからず通院まではしていませんでした。また、高校生くらいの時に軽い交通事故にあったのでその際にMRIをとる機会があったので、その時に脳外科の先生に少し相談してみたところ脳に異常はないのでその症状についてはよくわからないということで終わってしまいました。
そして、最近になって知ったのですが4歳年下の弟も私の上記の症状とほぼ同じ状態が高校1年生頃からはじまって今もでてくるということでした。話し合ってみて、私と弟の違う点は弟は中学校くらいは筋肉の違和感(くすぐったさ)だけがあり、本格的に自分の意思で体を動かせなくなったのは高校生になってからということでした。弟もこれを気にして2年ほど前(20歳くらい)に心療内科に行ってみようとしたそうなのですが「検査を受けてきてからではないと診られない」と電話予約の際に言われその後、他の病院で検査(MRI)を受けてみたところその検査をした病院で異常が見当たらないと言われたので心療内科では対応してもらえないだろうと考え通うことは諦めた、とのことでした。 弟も同じ状態であるということを聞いて遺伝性の何かなのかも、と思い父と母と3歳上の姉に、同じような症状がないか初めて聞いてみたところ父母姉はそのような症状はなく、祖父母や親類にも聞いたことがないということでした。ただ、私も弟も周囲に話したりせず、ごまかして生活してこれていたのでこの父母からの情報で親類に同じような人がいないということが確定したわけではないとも思います。
まとまらずに、しかも上手く説明できず申し訳ないのですが。先生にお聞きしたいのは、 1、この症状は精神科で対応してもらえるものなのでしょうか。2、もし精神科でなければ何科が該当するものなのでしょうか。 精神科Q&Aの主旨にはずれていなければよいのですが。お返事いただければ幸いです。


林: これはチックではありません。最も考えられるのは、周期性四肢麻痺(しゅうきせいししまひ)という病気です。「周期性」といっても、一定の周期はなく、不規則な間隔で筋肉(骨格筋)が麻痺する病気の総称で、いくつもの原因がありますが、おそらくこの【1690】のケースは、「低カリウム性周期性四肢麻痺」という遺伝性の疾患だと思われます。筋肉が麻痺する発作時に、血清のカリウムが低下していることからこの名があります。この疾患は20歳以下で発症し、発作の頻度は毎日から数ヶ月に一度までとさまざまです。ただ、麻痺の形は典型的には弛緩性と呼ばれるもので、動きにくい・または動けなくなるという形を取りますので、この点では【1690】には一致しません。【1690】のようにひきつれるような形の麻痺はパラミオトニーといって、むしろ高カリウム性周期性四肢麻痺の特徴です。そのほかにも低カリウム性と高カリウム性の違いはいくつかあるのですが、たとえば空腹時に発作が起こるのは高カリウム性で、満腹時に起こるのは低カリウム性という傾向があります(逆の間違いではないかと思われるかもしれませんが、この通りで合っています)。【1690】の方はこの点は如何でしょうか。
 治療薬はあります。けれども、必ずしも薬を飲まなくても、発作が起きやすい状況を回避することで、事実上は問題を解決することができる場合があります。
 いずれにせよ、まず診断を確定することが必要です。MRIでは診断できません。発作時の血清カリウム値を知ることが重要ですが、発作の頻度が低い場合なかなかその機会はなく、発作を誘発する試験もあることはありますが、危険性もあり、行なうべきかどうかは一概にはいえません。また、筋肉そのものの検査という方法や、遺伝子検査もあります。それから、甲状腺機能亢進症が原因のこともありますので、ホルモン検査(血液検査)も必要です。
 周期性四肢麻痺は、心療内科や精神科では、治療はできなくても診断はできるべきと私は考えますが、多くの場合できないのが現状です。この病気の診断・治療を専門に行なうのは、神経内科です。


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