精神科Q&A

【1688】中途失聴者である私の精神科での体験をお伝えしたく思います


Q: 30代女性です。以前より、林先生のホームページを興味深く拝見し、著書も拝読しておりました者です。最近になりまして、【0188】のご質問を偶然拝見し、当方の経験が何かのお役に立てばと思い、メールを書くことにしました。 私は中途失聴者で、聴力が低下し始めたのは約1年前のことです。 精神科医院には、8年ほど前からうつ状態との診断で通っていました。精神科での治療を始めた1年後に、ある耳の病気で手術を受け、聴力低下を止めることができました。ところが、1年前になり、突然、聴力の悪化を指摘され、耳の治療を再開しました。おそらく、身内に要介護者が2人いたために、私自身の仕事と介護に追われて過労気味となり、耳の病気が悪化したものと思われます。 自分の不注意・体調管理の不行き届きで聴力を失いつつあるという事実を、精神科の先生にお伝えするときには「あれほど、気にかけてくださったのに、申し訳ない」という気持ちで一杯でした。半年前より、精神科の院長先生が多忙であることから、若い先生(私より2歳年上)が、着任されました。院長先生が「着任された先生は、まだ患者さんの数も多くないので、時間的余裕があります。そしてあなたは、精神科的にはほとんど治癒していて、誰が診ても問題はないレベルです。今後、耳の問題を乗り越えて、コミュニケーションをとれるようになるためにも、若い先生に診てもらうようにしませんか?」とおっしゃって、私は若い先生に、診察を引き継いでいただくことになりました。とはいっても小さなクリニックのことですから、隣の診察室には、いつも院長先生がいらっしゃるという安心感がありました。投薬内容も、現在はリスミー、ハルシオン、デパス(頓服)のみです。 私は発話・発声に問題はありませんが、将来のことも考えて、手話を勉強しています。周りの人に聴こえづらいこと、中途失聴について理解していただくためには、自分から様々なコミュニケーション法を勉強して、周囲の人に負担をかけないようにしたい、という思いがありました。とはいえ、30歳を過ぎてからおぼえ始めた手話を、いきなり人前で披露するのは気恥ずかしく、なかなか使えませんでした。 ある日、精神科で若い先生と面接をして、投薬の相談をしていたとき、本当に自然に、口で話す言葉に合わせて、手話を使い始めることができました。気負いも意気込みもなく、自然に手話を使っていました。先生は手話を見ても特別、驚きはしませんでしたが、筆談用のノートに「あなたが前向きに努力されている姿がすばらしい」と書いてくださいました。 このメールを書くために、自分の筆談用のノートをめくってみたのですが、精神科の先生、そして身体科の先生方が、私のために、どれほどたくさんの言葉を尽くし、絵や写真を使って、相互理解を図ろうとしてくださったのか、改めてよく分かります。まだまだ未熟な手話ですが、少なくともお医者様の前では、使っていけそうに思います。 林先生はお忙しいのに、このような「質問」とは違うメールをして申し訳ございません。ただ、聴覚障害者の側から、コミュニケーションをとることを諦めなければ、答えてくださる先生が必ずいらっしゃることを、【0188】のようなお悩みをお持ちの方に、お伝えしたく思い、メールしました。長文をお読みいただき、ありがとうございました。


林: 貴重な体験をご報告いただきありがとうございました。【0188】の回答から7年が過ぎていますので、【0188】の質問者がはたして今もこのサイトを訪れていらっしゃるかどうかはわかりませんが、その方に限らず、聴覚障害者の方々にとって、【1688】のご報告はとても心強いものだと思います。ありがとうございました。

その後の経過(2010.9.5.)


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