精神科Q&A
【1679】人間関係の構築・維持が困難ないしはほぼ不可能な私は発達障害でしょうか
Q: 40代前半の男です。
私の抱える問題は、人間関係の構築・維持が困難ないしはほぼ不可能というものです。何らかの人格障害か発達障害を疑っています。
私に自覚はないのですが、幼少期から現在に至るまで「常識がない」「気が利かない」「協調性がない」「チームワークが取れない」「感覚(思考)がずれている」「どこかおかしい」「理解できない」などと言われ続けてきました。
協調性については、幼稚園の頃から言われていたようです。「友達が外にいる時は一人で中で遊び、皆が中に入る時には一人で外で遊んでいた」と、母から聞かされています。また小学校の頃から通知表には「協調性に問題がある」の旨が、毎年毎学期記入されていたと記憶しています。
私としては修正する努力をしてきたつもりですが、考えて行動したことの多くは裏目になり、考えずに行動しても相手の望む形から外れるという、無駄な努力ばかりです。「書かれていない・言われていない内容を読み取る」という聞く所による『世間一般の常識』な行為が、私の経験不足と努力不足もあるのかもしれませんが、私にはどうやってもできません。そのような超能力まがいの行為が、本当に常識なのでしょうか?
この思考のずれからでしょうか、幼少期から現在に至るまで、親友と呼べる友好関係を築けたことはありません。兄弟は小中高時代からの友人らと未だ交流があるのに、私にはそういう友人は一人もいません。小中学校の頃は友人を作れないことで悩みもしましたが、現在では対人関係への関心を求められないので、友人がいない事は気にせずにいます。
ただし職場ではそういう訳にもいきません。対人関係の問題から、何度か職場を変わっています。どれも2〜3年で上司が私との付き合いに疲れ果て、退職勧告を出すという流れです。今の職場も3年目(ただし現在の上司との付き合いは1年・・)ですし、5月には「懲戒解雇だ」のメールを上司から送りつけられているので、遠からず退職勧告が出されるものと予想しています。
今の上司によると、私が上司をバカにしているとの事でした。表向きは神妙にしていても、腹の奥では舌を出していると考えているようです。
私にそのような他意はありませんし、そう器用に感情と顔を作る事は私にはできません。私が誤解を解こうと説明しても、『言い訳』と『その場で思いついた嘘』としか思ってもらえず、この職場も長くいられないと考える一因となっています。
近い将来この職場を離れなくてはならないのは非常に残念ですし、この年代では再就職も非常に厳しいですが、残るにせよ転職するにせよ、このままではいつもと同じ流れになるのは予想できます。
私の対人能力の低さが、私の努力不足に起因しているのであれば、さらに努力すれば良いのですが、人格障害や発達障害があるのであれば、まずはそちらの治療から優先すべきと考えています。
長文で申し訳ございませんが、先生のご意見をお聞かせ願えますでしょうか。
林: 現在の状態、そして幼少期からの経緯をみますと、あなたは発達障害の可能性が高いと思います。
「書かれていない・言われていない内容を読み取る」という聞く所による『世間一般の常識』な行為が、私の経験不足と努力不足もあるのかもしれませんが、私にはどうやってもできません。
このように、いわゆる「行間を読む」ことが非常に苦手(ないしは不可能)であることは、アスペルガー障害などの発達障害の方に非常に特徴的です。そして、
そのような超能力まがいの行為が、本当に常識なのでしょうか?
このように、ご本人からすると、他の人は超能力を持っているように感じられることも少なくありません。
発達障害でない人にとっては、行間を読むとか、言外の意味を汲み取る、さらには場の空気を読むということは、特別な努力なしに自然にしていることであるため、特にそれらがある「能力」であるとは自覚されないのが普通ですが、いくら自然にしていることであっても、それは脳の機能であることは当然です。そして、どんな脳の機能も、それが後天的・先天的に障害されることがあり、そうした障害の存在に接してはじめて、今まで自然だと思っていた「能力」が、実は脳の機能の一つであったことがわかるものです。(発達障害とは無関係ですが、統合失調症の自我障害もその一つです。健康な人にとっては、自分が自分であって、意思にせよ感覚にせよ、他人のそれらとははっきりと一線を画したものであることは全く自明ですので、自我が脳の機能であるとは自覚されないものですが、その自我機能が障害される統合失調症という病気を目の当たりにすれば、やはりそれも脳の機能であるということに気づかざるを得ません)
私の対人能力の低さが、私の努力不足に起因しているのであれば、さらに努力すれば良いのですが、
努力不足ということではないと思います。
人格障害や発達障害があるのであれば、まずはそちらの治療から優先すべきと考えています。
発達障害の可能性はかなりありますので、精神科で診断を受けることをお勧めします。【1681】にもお書きしたことですが、40代になってからでも、発達障害の診断をはっきりさせることには十分な意義があります。