精神科Q&A

【1669】80歳の伯母の妄想は薬の副作用でしょうか


Q: 伯母(80歳)は、もともと几帳面ですが、神経質というよりはおおらかで明るい性格でした。独身で、同居していた弟(叔父)が10年前に亡くなってからは独り暮らしをしています。市内に妹(私の母)が住んでいて、時々訪ねて来たら話をしたり、友達とも電話で話したりと、傍目には寂しい生活を送っている感じは受けませんでした。からだの方は、めまいがしたり、足がもつれて転んだりすることがあり、定期的に通院して薬はもらっていました。
半年くらい前にまた転んで腰を打ち、2〜3週間寝て過ごしました。回復後、電話で話していると、自分の人生は寂しい人生だとか、なんのために生きてきたのかと思う等と言い、やはり怪我で寝込んだりすると気弱になって、明るい伯母もそんなふうに思うようになるのかと、思ったりしていました。それからしばらくして、夜子供達が唱歌を合唱しているのが聞こえて眠れないと言い(普段は耳が悪く大きな声で話さないときこえないのに)、かかりつけの医者(内科)に話したそうですが、特に何も薬は出なかったそうです。
その後、少しずつおかしなことを言う回数が多くなり、1ヶ月前くらいからは、自分や家族の悪口が町内会のスピーカーでひっきりなしに放送されている、自分の行動が監視カメラで常に監視されている、近所の人が自分のことを噂している、夜中中カラオケで騒いでいる、殺人事件が近所で頻繁におこっている、自分も狙われている等と訴えるようになりました。この話をきいて、統合失調症の症状ではないかと思い、母と相談して、かかりつけの医者に紹介状をもらって、精神科の病院を受診しました。結果、特に病名は告げられず、症状がひどくなった頃にかかりつけの医者が出した薬に妄想の副作用の可能性があるので、まずはその薬をやめて様子を見ることになりました。(薬の名前は不明) その薬をやめてから、5日ほどになりますが、症状は落ち着くどころか、ひどくなる一方です。一度は近所の人に家の中に変なものがあるから確認して欲しいと夜中に訪ねて行ったそうです。そんなことがまたあると迷惑になるので、今は母が泊まりでついています。薬の副作用でそんなにひどい妄想が出たりするのでしょうか? 統合失調症ではないでしょうか? あるいは、認知症の症状なのでしょうか? 離れていて実際に会って確認できず、説明に不十分なところがあると思いますが、どうかお返事お願いいたします。


林: これは統合失調症にかなり典型的な妄想です。したがって、最も考えられる病名は統合失調症ということになりますが、80歳という年齢で統合失調症を発症することは稀なので、認知症や、他の器質性の脳疾患の可能性も低くありません。MRIなどの脳の検査が、診断のためには必要です。治療としては、診断が何であれ、抗精神病薬を用いることになるでしょう。
なお、以下の点ですが、

症状がひどくなった頃にかかりつけの医者が出した薬に妄想の副作用の可能性があるので、まずはその薬をやめて様子を見ることになりました。(薬の名前は不明)

副作用として「妄想」が記されている薬はたくさんありますが、実際にはどの薬も妄想が出る頻度は無視できるくらい低く、この【1669】の妄想は、統合失調症のような精神病にかなり典型的なものですので、飲んでいた薬が何であれ、副作用の可能性はきわめて低いと思います。


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