精神科Q&A

【1602】アルコール依存で複数の精神病を患う友人を救いたいが、家族に危機感がない


Q: 学生時代からの友人(女性・20代後半)についての相談です。友人は、学校を卒業後に仕事の悩みや恋愛関係のこじれから精神病(躁鬱、解離性人格障害等、複数の病気を持っていると本人は言っています)をわずらいました。 自宅療養後に自立のため一人暮らしを始めてから、精神病に加えてアルコール依存(本人は冗談半分に言いますが、毎日浴びるように飲み続け泥酔するという飲酒量・頻度・依存度からアルコール依存症であることは間違いないのではと思います)にかかり、今では仕事もほとんど出来ず、泥酔のため揉め事をおこし、数度にわたり警察を呼ばれたり保護されたりするようになっているようです。「ようです」というのは、私と友人とは学校卒業後に住むところが離れ、たまに私が地元に帰った際に遊ぶ程度の付き合いになっているためです。友人のそばにはもう一人の友人(A)がおり、Aを通じて状態を聞いたりして推察しているのが現状です。 数ヶ月前、自傷や泥酔、異性関係の乱れなどがあまりに酷くなったため、Aは友人のご両親に連絡をとり、友人を実家に帰しました。その際に、精神病院に入院させたほうがいいのでは、という旨を伝えたそうなのですが、友人の親御さんは「これでも会社を辞めたときよりは随分ましになったから大丈夫」とかなり楽観視している状態のようです。また、友人は以前より精神科医にはかかっており、そこで入院を勧められているものの、通院による薬物療法のみを受けているという状態のようです。 私は友人のご両親とは面識がなく、友人との付き合いも親友といえるほどのものではありません。ただ、長年の友人が自分を失っていくのを何も出来ずに見ているのは非常に苦しいと思っています。 先生に伺いたいことは以下の通りです。
・精神病の治療とアルコール依存症の治療は、並行して行えるのか。また、出来ない場合はどちらを優先して行うものなのか。
・本人が入院を拒否しているばあい、措置入院は可能なのか。
・危機感のない友人の家族に対して、友人の立場からなにか出来ることはないのか。 
今度、友人にとって身近で心を許せる友達のAが家庭の都合で遠方に引っ越すことになり、一層病状が悪化するのではないかということが、現在何よりも心配です。このままでは最悪の事態になってしまいそうで、Aと共に心を痛めています。ご回答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


林: 
・ 精神病の治療とアルコール依存症の治療は、並行して行えるのか。また、出来ない場合はどちらを優先して行うものなのか。

並行して行うべきです。しかし現在の日本では、アルコール依存症の治療を行える精神科医は少ないというのが現状です。

・ 本人が入院を拒否しているばあい、措置入院は可能なのか。

このご質問の意味はよくわかりかねます。措置入院は、本人が入院を拒否している場合に適用されるものですので、この質問文は意味がないというのが正確な答えになります。
 しかしおそらくこのご質問の意図は、この【1602】のケースではどうかということかと思います。それについては「わかりません」がお答えになります。措置入院は、対象となる精神障害者について、自傷他害のおそれがあると二人の精神保健指定医が一致して判断することが必要条件で、このケースがそれを満たすかどうかはメールに書かれている症状からは判断できません。

・ 危機感のない友人の家族に対して、友人の立場からなにか出来ることはないのか。

 このような方が治療を受けずにいた場合にたどる悲惨な経過をお伝えするのが、考えうる最善の方策ですが、友人の立場のあなたがそれをお伝えになっても、どこまで真剣に受け取っていただけるかは未知数です。
 だからこそ私は、医師という専門家が、病気の悲惨な経過をもっと社会にお伝えするべきであると常々考えています。医師の発信する病気の情報の多くは、明るい面ばかりが強調されすぎていると思っています。私がこのサイトや著書に、治療しなかった場合や手遅れになった場合の悲惨な結末を積極的にご紹介している理由はそこにあります。
 

 


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