精神科Q&A

「音に敏感になる」ことと、「幻聴」の関係について


統合失調症では、初期に音に敏感になり、次いで幻聴が表れることがよくあり、それがひとつの典型的な経過といえます。
 たとえば安永浩『分裂病の症状論』(1987年)には、以下のように記述されています。
(この本は入手しにくいと思われますので、やや長く引用します。なお、原文の「精神分裂病」を「統合失調症」に書き替えてあります)

統合失調症圏の幻聴は実際上あらゆるヴァリエーションがあって一言に述べがたいが、しかしその中核には一定の基本傾向をみることができる、とはいえる。
(a) 聞こえる内容 特に病初期においては、単なる”騒音”であることもある。街上の騒音、自動車の警笛、ざわざわした意味不明の人声など、実際の音響に対する聴覚過敏、という面から移行して区別しがたい時期がある。しかしこの時期でも、それらがまだ不明ながらも意味をはらんでいるように感じる傾向(何かの合図? 自分を責めている? など)の多いことは特徴的といいうる。主体は、表現しがたい一種の焦慮と困惑の状況にあることが多く、”音”の意味をつかもうとして苦慮することがある。
形式上、次の段階 (臨床上の経過とは必ずしも関係がない) といえるのは、断片的な単語の形で”聞こえる”人声である。単語はさらに”文章”の形に移行する。文章や単語の意味は、それ自体明瞭なこともあり、しかしそれが隠れた、二重、三重の意味を帯びて感じられることもあり、またときには文法にもあわず、支離滅裂でまったく意味がわからないものまでいろいろな場合がある。
(中略)
もっと多いのは主体への嘲弄、非難、あてこすり、といったニュアンスを帯びたものであり、・・


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