精神科Q&A

【1563】私の頭の中の声たち


Q:  20代女性です。私は現在通院中で、主治医からはじめは解離性障害、強迫性障害と診断されましたが今は症状があまりにも多くわからないと言われました。 現在の症状は、うつ、パニック発作、強迫的な行為や思考、激しい物忘れ、解離、幻聴(声や音楽)、幻視、対人恐怖、離人症などです。昔は自傷行為や難聴(2週間くらい続いた)がありました。 
 声たちは、それぞれ好みや考え方、性格、性別などが違います。声たちはアドバイスをしてくれたりします。私が疑問に思っているのは、私の頭の中で聞こえる声は人格として出ているのではないかということです。 声たちにはそれぞれ得手不得手があるらしく、接客が得意な声は実際に私の体を使って接客をしているようなのです。私は接客は苦手で、うまくできません。このときは自分を近くで見ているような感じになりました。 ほかにも、自分がしゃべろうと思っても口が動かなかったり、逆にしゃべろうと思ってもいないのに口が動いて会話していたりします。(話している相手の声が聞こえませんでした。)また、私は文章が昔から苦手なので、文章が得意な声は、文章を考えて書いてくれたりします。このようなときは、自分の体のはずなのに、自分で何かしたといった感じがしません。 さっきまで泣くほどつらかったことなのに、いつのまにか忘れてしまって思い出そうと思っても思い出せないことがあります。思い出そうと思っても思い出せないことを突然思い出したりします。 時々、今までどうやって生きてきたのかわからなくなるときがあります。これらのことは主治医には話していません。 
 私は、小学校より前の記憶がとてもあいまいかもしくは忘れていたりします。祖母のことはほとんど思い出せません。写真を見ても誰だか分りませんでした。祖母のことを思い出そうとしたり、考えたりすると頭が痛くなります。また、考えれば考えるほど祖母はいなかったのではないかと思ってしまいます。なぜなら、祖母がいたとしたら、一緒に住んでいた記憶と辻褄が合わないからです。とても重要な記憶が抜け落ちているような気がするのですが。でも、私にとって祖母はそんなに重要な人物だとは思えないのです。  症状のほうには書きませんでしたが、頭がぼけてしまったようなのですが、薬を半年以上続けても治りません。ぼけたのが治るのは時間がかかるのでしょうか。あと、声(人格?)の詳しいことはあまり主治医に話してはいないのですが話すべきでしょうか。長くなり、大変申し訳ありませんがよろしくお願いします。  



林: あなたはおそらく解離性障害だと思います。

現在の症状は、うつ、パニック発作、強迫的な行為や思考、激しい物忘れ、解離、幻聴(声や音楽)、幻視、対人恐怖、離人症などです。

症状については、具体的な内容を書いていただければ、よりはっきりした回答ができたと思います。このように、単に医学用語にある症状名を書き並べられても、その内容についての情報がなければ、診断の役にはほとんどたちません。そもそも、その症状が本当にあるのか否かもわかりません。(たとえば「パニック発作」と書かれていても、それが実際はにパニック発作とはいえないものであることはよくあります。「強迫的な行為や思考」についても、正常範囲のものもあれば、強迫性障害の症状もあれば、統合失調症の色彩のあるものもありますので、具体的な内容がなければ何も言えません)

また、

私の頭の中で聞こえる声は人格として出ているのではないかということです。

この文章の意味がつかみかねますが、そのあとの記載からみて、「それぞれの声がそれぞれある人格を代表している」というような意味かと思われます。そしてその「声」の内容と、

小学校より前の記憶がとてもあいまいかもしくは忘れていたりします。

などから、冒頭の解離性障害という診断が推定されます。
この【1563】のケースで最も考えられるストーリーは、小学校より前の何らかのトラウマ的な出来事、おそらくは虐待が関係して、現在の解離性障害の症状が表れているということです。

祖母のことはほとんど思い出せません。写真を見ても誰だか分りませんでした。祖母のことを思い出そうとしたり、考えたりすると頭が痛くなります。

この記載から、お祖母様とあなたの間にあった出来事が、全体のキーを握っていることが強く推測できます。

でも、私にとって祖母はそんなに重要な人物だとは思えないのです。

いいえ、事実はそれとは正反対でしょう。

しかし、その事実を明らかにすることがはたしていいことかどうかはわかりません。お祖母様のことがあなたの記憶にないのは、選択的健忘と呼ばれる、解離性健忘の一種で、お祖母様のことを記憶から削除することであなたの精神状態は一定範囲の安定が保たれていると考えられるからです。その記憶を取り戻すことは、精神のバランスを大きく崩すことになりかねません。このあたりの事情については、解離性障害の実例、特に【1160】【1307】などをご参照ください。

あと、声(人格?)の詳しいことはあまり主治医に話してはいないのですが話すべきでしょうか。

それを主治医に伝えなければ、真の治療にはなりません。ぜひお話ししてください。
ただし、主治医は「声」のことを知っても、あえてそれに関することを治療の中に組み込まないという方針も充分に考えられます。しかし、そうすべきかどうかは、「声」のことをあなたがお話しし、主治医に判断していただくことです。


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