精神科Q&A

【1518】ホルモン療法中の母がうつ病のようになった


Q:  私は29歳の女です。
10ヶ月前より母がネフローゼ症候群で入院し、その後それが胸腺腫による合併症によるものと判明し、3ヶ月ほど入院をしていました。
実家は遠く離れているため、具体的な治療内容については、私もはっきり明記できず申し訳ないのですが、放射線治療、ホルモン療法(おそらくステロイドだと思います)は行ったようです。

結局胸腺腫は良性であったものの、心臓の動脈に浸潤しており、手術はせずできるところまで小さくし、あとはネフローゼの症状もよくなり、退院して経過観察を行うことになりました。入院していた病院は、実家から遠方だったのですが、退院にあたり、その病院出身の医者がいる実家の地元の総合病院(精神科はありません)に通院することになりました。

私は、退院ということで、一人で家の家事をこなし、仕事もしていた父の負担も軽減されるだろうととても喜びました。

ところが、退院の際に、薬の副作用(ステロイドの副作用や量の減らし方だと予想されます)や今後の治療について説明されてから、母がすっかりふさぎ込んでしまい、実家に帰った日はパニックを起こし、1日地元の病院に入院したと父から聞かされました。

結局1日で退院して、実家に戻ったものの、ふさぎ込みがひどく、何もせず泣いたり不安がったりすることが多いと聞きました。

心配になり、実家に電話をかけ本人にかわったところ、声も生気がなく会話の最中で会話が高ぶり泣いたりと、以前のユーモアのあった母とはまるっきり変わってしまっていました。

心配が高じて、先日実家に帰省したところ、私のみた母は、外見こそ変わらないものの、
ずいぶん変わってしまっていました。
普通に会話はできるのですが、基本として下記の状態が常にあります。

•退院してから自分は何もできず申し訳ない、情けないと自分を責めて泣く
•情けなくて近所の人にも会いたくない(実家は自営業です)
•夜眠れず、処方された薬で眠っているが5時間程度で目が覚めてしまう
•家事や掃除をしなくては、と焦る
•簡単な計算や、料理の手順を忘れてしまい、情けなくて自分を責めたくなる
•朝がくるのが嫌だ

これは、母自身が自分で、説明できる状態です(実際に近所の人や私に説明してくれました)。
これに加え、私が観察した感じだと、上記のことを誰かに説明したりする際、感情が高ぶって頭をかきむしったり、玄関にしゃがみ込んだり、死んだ方がましだと騒いだり、うなるような声を上げたりします。

おかしなことに、感情が昂らなければ会話は以前同様成立します。
食欲はあり、私あるいは父がご飯などを作ると、品数が少ないとか注文をつけたりもします。ただその注文によって、私や父が気分を害し、注意をすると興奮状態が始まってしまうのです。大体10分程度でしょうか。その後おとなしくなり、また通常の会話が可能となります。ただし、興奮しない時は、何もできないといって横になっています。私が掃除をしたりすると、手伝おうとしたり、やる気が全くないということではないようです。
このようなことが1日のうちになんどもあるのです。
また、自営業をしているものの、父が仕事で不在になり自分が一人になってしまうことが
わかると、異常にいやがり上記の興奮状態となります。

父の話をもとに私が調べた限りだと、ステロイドの副作用で、鬱などの精神障害はあるようです。実際に病院の先生からも精神的に不安定になることは、説明されたようです。
地元の病院にも、退院後きちんと通院していますが、特に精神科での診察等はすすめられていないようです。
先日見かねた近所の方が診察についていき、母の精神状態を説明し、抗うつ薬的なものを
処方されたようです。

以上を通じて、私が心配しているのは、下記のいくつかの点です。
(ちなみに退院してから現時点で20日以上経過しています)

●母の症状はうつ病なのか、それとも更年期のような、ホルモンに起因する感情のコントロールが 効かないだけなのか
●病気の副作用でいつかは消えるものとして、このまま精神科を受診する必要がないのか
●家族はどう接するべきか

今は私も東京に戻ってきてしまい、実家には母と父がいるばかりで、父が外出しなければならず母が1人の状況もしばしばあります。
もし病気がきっかけでうつ病を発症しているのならば、かける言葉や1人にしないなど、対応もかえなくてはならないでしょう。

私が接してわかりかねたのは、単純に興奮した時のコントロールが効かずわがままを言っているだけなのか、それも鬱病なのかという点でした。
というのも、私のやることなすことに、注文をつける時だけは正常なので、その時の私は
甘えていると思い、頭にきて興奮している母に結構ひどいことをいってしまったのです。

今は、母が本当にうつ病だったとしたら、あのとき言った言葉に傷ついて一人のときに思いあまって自殺などしないかなど、私自身不安にかられています。

経過や状況が複雑で、うまく説明できているか不安ですが、ひとまずこちらにて送らせて
いただきます。
個人的な思いでは、薬の副作用で感情がコントロールできないのだ、と思いたいのですが。。。

長くてわかりづらくすみません。よろしくお願いします。


林: うつ病とステロイドの副作用の両方が考えられます。どちらであるかを判断することは不可能とは言わないまでもきわめて困難です。それは、これがメールによる相談であるから困難という意味ではなく、ステロイド服用中にうつの症状が出た場合、それはそのときに偶然うつ病が発症したのか、ステロイドと因果関係があるのかを判別することは理論的に不可能だからです。したがってこの【1518】でも、両方の可能性を考えていくことが必要です。
ご質問の項目に関しては、

●母の症状はうつ病なのか、それとも更年期のような、ホルモンに起因する感情のコントロールが 効かないだけなのか

上記の通りです。

●病気の副作用でいつかは消えるものとして、このまま精神科を受診する必要がないのか

精神科の受診は当然必要です。
(「病気の副作用で・・・」の文章は意味不明です)

●家族はどう接するべきか

まず精神科を受診し、先生の指示に従うこと。それから、うつ病、ステロイドの副作用の両方を念頭におくこと、です。
なお、

個人的な思いでは、薬の副作用で感情がコントロールできないのだ、と思いたいのですが。。。

そのお気持ちはわかりますが、このような思いにこだわることは、ご家族の姿勢としては望ましくありません。薬を服用中に何らかの症状が出た場合、それを薬の副作用と思いたがるのは、ご本人・ご家族にも共通の心理ですが、副作用は可能性の一つにすぎないことを見つめなければなりません。言い換えれば、その症状が副作用であることは、願望にすぎません。願望と事実ははっきりと区別しなければなりません。


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る