精神科Q&A

【1474】酒好きの母が、父の昔の浮気を責める


Q:  母のことで悩んでいます。21歳の大学生の娘です。母(50歳)は、昨年の夏ごろから、毎晩お酒を飲んでは、十数年前に父が浮気をしていたことを激しく責めるようになりました。
初めのころは
「こんなお父さんみたいな最低な男とは結婚しちゃだめよ」
「他の人と結婚していたら、もっと違った人生が送れていたかもね」
などと、冗談めかして話す程度だったのですが、2ヶ月ほど経ったころからでしょうか、
「あの日どこで何してたのよ!あたしはずっとあなたを待ってたのに!」
「あんな年増女のどこがいいのよ。顔も名前もちゃんと覚えてるわ」
などど、泣きじゃくりながら激しく父を責めるようになりました。
はじめは単なる夫婦喧嘩かと思っていたのですが、現在はそうは思えないほどの様子なのです。

もともとお酒は好きなほうだったと思います。二日に一度、晩酌に缶ビールを2〜3本夫婦で楽しく飲む といったかんじでした。
しかし、「飲まなければ眠れない」 と言って必ず毎晩飲むようになりました。
比較的お酒に強く、泥酔したり、お酒に飲まれる といった様子を目にしたことがありませんでしたが、最近は様子が違います。
缶チューハイを2本飲んだあたりから、目がとろ〜んとしてきて、半開きの状態になり目つきが変わります。
家族がそれ以上飲ませまいとすると「なんで飲ませないのよ!」と怒り、叫び、お酒を要求してきます。
3本目を飲み干すとトイレや脱衣所にこもり、一人でしくしくと泣き出します。
そしてだんだんと泣き声から、笑い声に変わります。何かをぶつぶつとつぶやきながらときどき静かに「ふふっ」と笑うのです。
注意深く聞いてみると、父の過去の浮気に対する何らかの抗議の言葉のようです。
ここで父が見かねて「大丈夫?」と声をかけ、肩をやさしくさすったりします。毎回このように対応しているようです。
すると母は、父に向かって激しく怒鳴り、主に浮気されたことに対して怒り、責め立てます。
また、母は義母との関係にも長年悩んでいて、そのことについても父を責めているようです。
毎日同じことを、何度も何度も言っているようです。
壁をける、リモコンを投げる、父を強く押す、叩く、など、最近では少し暴れるようにもなっています。
そんな状況になると、私は、別人のように泣き叫び、暴れ、手をつけられない母に驚き、悲しみ、ただ見ていることしかできません。
父は自分に負い目があるからか、時折弁解と謝罪の言葉を口にしながらも、いつも近くに寄り添っています。
そうして2〜3時間ほど言いたいことを言ってしまうと、やがて泣き疲れた子どものように、眠ってしまいます。

しかし翌朝になるとそれらのことはほとんど忘れ、まるで別人のように「おはよう」と機嫌よくあいさつし、起きてくるのです。
父に対する態度も普段とかわらないようすに戻ります。
しかし何かおかしかったということは覚えているようで、「何も覚えていないんだけど、お母さん何かしてた?」と聞いてきたりします。
こうだったよ と話すと、ばつの悪そうな顔をして、そう といいます。
「なんかあたしおかしくなっちゃった・・・」と悲しげにつぶやいたりして、飲酒後の行動を悔いている様子ではあるのですが、決して飲酒をやめようとはしません。「飲まないと眠れない、やってられない」の一点張りなのです。

また、最近では、テレビで芸能人が浮気した、不倫した、ドラマの中で主人公が浮気している、など、ほんの少しでも 浮気 に関する話題が出ると、目つきが変わり、お酒を飲んでいないのに、飲んだときのようにぶつぶつと文句を言い、にやりと笑ったりするようになっています。
更に気になることとして、人と会うのを極端に嫌うようになりました。近所に買い物に行くと知り合いに会うからといって、わざわざ遠くのスーパーに出向いたり、24時間営業のスーパーに真夜中(3時頃)に買い物に行ったりしているようなのです。こんなことは今まで一度もありませんでした。
しかし、父と離婚したいというわけでは全くなく、必ず手をつないで買い物に行き、また一緒に入浴したりするなど、傍目には仲良し夫婦です。

普段は、やさしくてユーモアあふれ冗談も言い、またとても責任感の強い人です。
その母がここ数ヶ月で、なぜこのようになってしまったのかわかりません。
そのうちふっと自殺してしまうのではないか と心配なのです。
弟が二人おり、下の弟はまだ高校生で実家で生活していますが、私と上の弟は大学生で、それぞれ県外と車で1時間半ほどのところに下宿しています。
母の状況が心配で兄弟3人でメールのやりとりなどしていますが、母が悩んでいることの内容からして、子どもである私たちにできることは何もないような絶望感を抱いてしまいます。

お正月に帰省した際、母と二人きりになったときに、思い切って「精神科に行ってみてはどうか」と切り出しました。
お酒を飲まないと眠れないなんて、つらいだろう。お医者さんにかかって、適切な治療等を受けるべきだ と。
しかし母は、自分がこころの病気だというふうに思われたくないようで、なかなか承諾しません。

なにか精神の病を患っているのでしょうか。
ひっぱってでも病院に連れて行くべきでしょうか。


林: お母さまはアルコール依存症です。

「飲まなければ眠れない」 と言って必ず毎晩飲むようになりました。

それまで大きな問題なく(実はそれは疑わしいのですが)楽しく酒を飲んでいた人が、このような形でアルコール依存症を発症することはよくあることです。この時点がお母さまはアルコール依存症の始まりといっていいでしょう。

お酒を飲まないと眠れないなんて、つらいだろう。お医者さんにかかって、適切な治療等を受けるべきだ と。
しかし母は、自分がこころの病気だというふうに思われたくないようで、なかなか承諾しません。


では十年以内に死ぬか、少なくとも通常の生活は送れなくなると予想されます。アルコールを完全にやめる以外に方法はありません。


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